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「仕事を辞めて収入が減り、今の家賃が払えない」「もっと家賃の安いところに引っ越したいけれど、初期費用がなくて動けない」そんな悩みを抱えていませんか?
この記事では、そんな経済的に困窮している方々の新しいスタートを支援する公的な制度「住居確保給付金(転居費用補助)」について、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。この制度は、生活困窮者自立支援法に基づき、家計の立て直しのために転居が必要な方へ、引越しの初期費用や運搬費などを補助するものです。どのような人が対象で、いくら受け取れて、どうやって申請すればいいのか、この記事を読めば全てわかります。あなたの生活再建に向けた大切な一歩を、この制度が力強く後押ししてくれるかもしれません。
この記事のポイント
- 住居確保給付金(転居費用補助)の目的と概要がわかる
- 対象となる人の具体的な収入・資産要件がわかる
- 補助される費用(礼金・仲介手数料など)と上限額がわかる
- 相談から申請、支給までの具体的な流れがわかる
- 申請をスムーズに進めるためのコツと注意点がわかる
① 住居確保給付金(転居費用補助)の概要
まずは、この制度がどのようなものなのか、基本的な情報から確認していきましょう。従来の「家賃補助」とは異なる、新しい支援の形です。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 生活困窮者住居確保給付金(転居費用補助)
- 根拠法: 生活困窮者自立支援法
- 所管: 厚生労働省
- 実施主体・相談窓口: 全国の各市区町村(自立相談支援機関)
制度の目的・背景
この制度は、離職や収入の著しい減少により経済的に困窮し、住まいを失うおそれがある方々を対象としています。単にお金を支給するだけでなく、専門の相談員による「家計改善支援」とセットになっているのが大きな特徴です。家計全体を見直し、より家賃の安い住居へ転居することが家計の改善に繋がると判断された場合に、その転居費用を補助することで、安定した生活への再スタートを支援することを目的としています。
【重要】家賃補助との違い
従来の住居確保給付金は、主に「家賃」そのものを補助する制度でした。今回の「転居費用補助」は、それとは別に、引越しにかかる礼金や仲介手数料、運搬費などの初期費用を補助するものです。目的や対象経費が異なる点を理解しておきましょう。
② 支給額・上限額
実際にどれくらいの金額が支給されるのかは、最も気になるところでしょう。支給額は、実際にかかった費用のうち、対象となる経費の実費が支払われますが、上限額が設定されています。
支給上限額の決まり方
支給上限額は、世帯の人数と転居先の市区町村が定める生活保護の「住宅扶助基準額」に基づいて決まります。そのため、全国一律ではなく、地域によって金額が異なります。一般的には、都市部の方が上限額は高くなる傾向にあります。
支給上限額の例(自治体により異なります)
あくまで一例ですが、いくつかの自治体の公表データを参考に、目安となる金額を見てみましょう。ご自身の転居予定地の正確な金額は、必ず相談窓口で確認してください。
| 世帯人数 | 支給上限額(例:千葉県鎌ケ谷市) | 支給上限額(例:東京都中野区) |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 159,000円 | 279,200円 |
| 2人世帯 | 171,000円 | 300,000円 |
| 3人世帯 | 186,000円 | 324,000円 |
※上記はあくまで参考例です。最新の情報やご自身の地域の正確な上限額は、必ず自治体の相談窓口にご確認ください。
③ 対象者・条件
この給付金を受けるためには、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。特に収入と資産の基準は重要ですので、詳しく見ていきましょう。
主な支給要件リスト
- 離職・廃業の日から2年以内である、または個人の責任や都合によらない休業等で収入が著しく減少している。
- 離職等の前に、世帯の生計を主として維持していた(主たる生計維持者である)。
- 申請月の世帯全員の収入合計額が、「収入基準額」以下である。
- 申請日の世帯全員の金融資産(預貯金・現金)の合計額が、「資産基準額」以下である。
- 自立相談支援機関の「家計改善支援」を受け、転居することが家計の改善に必要であると認められる。
- 国や自治体から、類似の転居費用に関する給付を受けていない。
- 申請者および世帯員が暴力団員ではない。
収入・資産要件の目安
収入と資産の基準額も、お住まいの自治体によって異なります。ここでは、神奈川県座間市の例を参考に、基準額のイメージを掴んでみましょう。
| 世帯人数 | 収入基準額(月額上限) | 金融資産上限額 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 125,000円 | 504,000円 |
| 2人世帯 | 179,000円 | 780,000円 |
| 3人世帯 | 225,000円 | 1,000,000円 |
※収入基準額は「基準額+家賃額(上限あり)」で計算されます。収入には年金や失業手当なども含まれます。
※資産には株式や投資信託は含まれず、預貯金と現金の合計額です。負債があっても相殺はされません。
④ 補助対象経費
引越しには様々な費用がかかりますが、この給付金で補助される経費と、残念ながら対象外となる経費があります。事前にしっかり確認しておきましょう。
支給対象となる経費
- ✅ 礼金、仲介手数料
- ✅ 家賃債務保証料、住宅保険料などの初期費用
- ✅ 転居先への家財の運搬費用(引越し業者代)
- ✅ 鍵交換費用
- ✅ ハウスクリーニングなどの原状回復費用(転居前の住宅も含む)
支給対象とならない経費
- ❌ 敷金(退去時に返還される可能性があるため)
- ❌ 契約時に支払う家賃(前家賃)
- ❌ 家財や設備(エアコン、照明など)の購入費
⑤ 申請方法・手順
この給付金は、いきなり市役所に行って書類を出せばもらえるものではありません。事前の相談と支援が必須となります。正しいステップを理解して、スムーズに手続きを進めましょう。
【最重要】まずは「自立相談支援機関」へ電話予約!
申請の第一歩は、お住まいの市区町村にある「自立相談支援機関」に連絡し、相談の予約をすることです。生活の困りごと全般の相談に乗ってくれる公的な窓口です。どこにあるかわからない場合は、「(お住まいの市区町村名) 自立相談支援機関」で検索するか、市役所・区役所の福祉担当課に問い合わせてみましょう。
相談から支給までの5ステップ
- ステップ1:自立相談支援機関へ相談
現在の生活状況、収入、家計の悩みなどを専門の相談員に話します。ここで、転居費用補助の利用可能性があるかどうかが判断されます。 - ステップ2:家計改善支援を受ける
相談員と一緒に、家計の収支を見直し、今後の生活再建に向けたプランを作成します。このプロセスの中で、「転居することが家計全体の改善に必要不可欠である」と判断されることが要件となります。 - ステップ3:必要書類の準備と物件探し
支援プランに基づき、申請に必要な書類を集めます。同時に、不動産会社を訪れて新しい住まいを探し、見積もりなどを取得します。 - ステップ4:申請書類の提出
すべての書類が揃ったら、自立相談支援機関の窓口に提出します。不動産業者に記入してもらう書類もあるため、注意が必要です。 - ステップ5:審査・支給決定・支払い
自治体による審査が行われ、支給が決定されると通知が届きます。給付金は、原則として自治体から不動産業者や引越し業者などの口座へ直接振り込まれます(代理納付)。
必要書類の完全リスト
- □ 住居確保給付金支給申請書、申請時確認書(窓口で配布)
- □ 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- □ 離職や収入減少がわかる書類(離職票、給与明細、申立書など)
- □ 世帯全員の収入がわかる書類(直近3ヶ月の給与明細、年金通知書など)
- □ 世帯全員の金融資産がわかる書類(すべての預貯金通帳の写し)
- □ 住居確保給付金要転居証明書(家計改善支援員が発行)
- □ 入居予定住宅に関する状況通知書(不動産業者に記入を依頼)
- □ 転居費用の見積書(引越し業者、不動産業者など)
- □ 現在の住まいの賃貸借契約書(住居を失うおそれのある方)
※自治体や個人の状況によって必要書類が追加される場合があります。必ず窓口で確認してください。
⑥ 採択のポイント(審査を通過するコツ)
この給付金は、要件を満たせば支給される可能性が高い制度ですが、いくつかの重要なポイントがあります。これらを押さえることで、手続きがよりスムーズに進みます。
ポイント1:家計改善の必要性を客観的に示す
最も重要なのは、「なぜ転居が必要なのか」を明確にすることです。相談員との面談では、現在の家計状況を正直に伝え、「今の家賃では生活が立ち行かない」「転居することで毎月の支出がこれだけ減り、生活を立て直せる」という点を具体的に説明しましょう。家計簿などを持参すると、より説得力が増します。
ポイント2:誠実な態度で相談に臨む
この制度は、生活再建への意欲がある方を支援するものです。相談員との面談では、今後の就職活動や生活改善に対する前向きな姿勢を示すことが大切です。隠し事をせず、誠実な態度で協力関係を築くことが、円滑な支援に繋がります。
よくある不支給の理由
- 収入や資産が基準額を超えている。
- 家計改善支援のプロセスで、転居の必要性が低いと判断された。
- 提出書類に不備や虚偽の記載があった。
- 生活再建への意欲が見られないと判断された。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 現在無職ですが、申請できますか?
A1. はい、申請できます。離職後2年以内であることが要件の一つですので、無職の方こそが対象の中心です。ただし、家賃補助の住居確保給付金と同様に、ハローワークでの求職活動などが求められる場合があります。
Q2. 申請から振り込みまで、どのくらいの期間がかかりますか?
A2. 自治体によりますが、最初の相談から支給決定まで1ヶ月〜2ヶ月程度、申請書類をすべて提出してから実際の振り込みまでさらに1ヶ月程度かかる場合があります。時間に余裕を持って、できるだけ早く相談を開始することが重要です。
Q3. 敷金や前家賃が払えないのですが、対象になりますか?
A3. 残念ながら、敷金と前家賃は支給対象外です。これらの費用は別途用意する必要があります。ただし、自治体によっては社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」など、他の制度を案内してもらえる場合がありますので、併せて相談してみましょう。
Q4. 転居先の家賃が今より高くなる場合でも対象になりますか?
A4. 原則として家賃が安くなることが求められますが、例外もあります。例えば、転居によって職場や病院に近くなり、交通費などの他の支出が大幅に削減され、家計全体として改善が見込まれる場合は、対象となる可能性があります。これも相談員との話し合いで判断されます。
Q5. 一度受給したら、もう二度と受けられませんか?
A5. 再支給の制度があります。受給後に再び本人の責任によらない離職などで収入が著しく減少し、かつ前回の支給終了から1年以上経過している場合など、一定の要件を満たせば再度申請できる可能性があります。詳しくは相談窓口でご確認ください。
⑧ まとめ・次の一歩
今回は、生活の立て直しを目指す方のための強力なサポート制度「住居確保給付金(転居費用補助)」について解説しました。
重要ポイントの再確認
- 離職や収入減で困窮し、引越しが必要な方の初期費用(礼金・仲介手数料など)を補助する制度。
- 利用するには収入・資産要件を満たす必要がある。
- 申請の前に、必ず「自立相談支援機関」での相談と家計改善支援を受けることが必須。
- 支給額には上限があり、自治体によって異なる。敷金・前家賃は対象外。
- 相談から支給まで時間がかかるため、早めの行動が鍵。
もしあなたが「自分も対象かもしれない」と感じたら、どうか一人で悩まず、勇気を出して第一歩を踏み出してください。
あなたの次の一歩は、お住まいの市区町村の「自立相談支援機関」に電話をかけることです。専門の相談員が、あなたの状況を親身に聞き、最適な解決策を一緒に考えてくれます。この制度が、あなたの新しい生活への扉を開くきっかけになることを心から願っています。