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はじめに:被災された農業者の皆様へ
令和6年能登半島地震および奥能登豪雨により、甚大な被害を受けられた石川県志賀町の農業者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。地震や大雨で愛用のトラクターが壊れてしまった、大切な作物を育てるハウスが倒壊した、農機具を保管していた格納庫が使えなくなったなど、事業の継続が困難な状況に直面し、途方に暮れている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、どうか諦めないでください。皆様の営農再開を強力に後押しするため、国・石川県・志賀町が連携し、「農業機械再取得等支援事業」という手厚い支援制度を用意しています。この制度は、被災した農業機械や施設の修理・再取得にかかる費用の大部分を補助するものです。
この記事では、「農業機械再取得等支援事業」について、対象者や補助率、申請の具体的な手順、必要書類、そして採択されるためのポイントまで、どこよりも分かりやすく徹底的に解説します。この記事を最後まで読めば、ご自身が支援を受けられるかどうかが分かり、申請に向けた第一歩を踏み出すことができます。共に復興への道を歩んでいきましょう。
① 農業機械再取得等支援事業の概要
| 正式名称 | 農業機械再取得等支援事業 (国事業名:農地利用効率化等支援交付金(被災農業者支援タイプ)) |
| 実施組織 | 国(農林水産省)、石川県、志賀町 |
| 目的・背景 | 令和6年能登半島地震及び令和6年奥能登豪雨により被災した農業者に対し、農産物の生産や加工に必要な施設や機械等の復旧等を緊急的に支援し、一日も早い営農再開を後押しすることを目的としています。 |
| 対象者 | 上記の災害により農業被害を受けた、志賀町内に事業所を有する農業者(個人・法人) |
② 驚きの補助率!助成金額と補助率を詳解
本事業の最大の魅力は、その手厚い補助率にあります。復旧にかかる自己負担を大幅に軽減し、事業再開へのハードルを下げることができます。
補助対象と補助率
| 支援内容 | 補助率 | 内訳 |
|---|---|---|
| 農業用機械 (トラクター、コンバイン、田植機など)の修理・再取得 |
9/10 以内 | 国 5/10、県 2/10、市町 2/10 |
| 農業用施設 (農機具格納庫、農作業場、畜舎、ハウスなど)の修理・再整備・補強・撤去 |
7/10 以内 | 国 3/10、県 2/10、市町 2/10 |
計算例
例えば、被災したトラクターを500万円で再取得する場合、補助額は以下のようになります。
500万円(事業費) × 9/10(補助率) = 最大450万円
この場合、自己負担はわずか50万円で新しいトラクターを導入できる可能性があります。
【重要】補助率に関する注意点
- 本事業は原形復旧が基本です。被災前よりも性能を向上させる部分(グレードアップ分)の費用は自己負担となります。
- 園芸施設共済の加入対象施設(パイプハウス等)の場合、共済への加入状況によって補助率が変動する可能性があります。
- 助成対象外の経費(消費税など)が含まれている場合、上記の補助率どおりにならないことがあります。
③ あなたは対象?詳細な対象者と条件
この強力な支援を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。ご自身が該当するかどうか、しっかり確認しましょう。
主な対象要件
- 令和6年能登半島地震または令和6年奥能登豪雨によって、農業用の機械や施設に直接的な被害を受けたこと。
- 志賀町内に事業所(農地など)を有する農業者(個人事業主、農業法人など)であること。
- 農産物の販売実績があること。自家消費のみを目的とした家庭菜園などは対象外となります。
- 補助を受けて復旧した建物や機械について、保険や共済に加入すること。(再度の災害への備えが必須です)
機械や施設を借りている場合(貸借)の注意点
他人から機械や施設を借りて農業を営んでいる場合、誰が申請者になれるかが異なります。これは非常に重要なポイントです。
| 支援の種類 | 申請できる方 |
|---|---|
| 修繕・補強・撤去 | 所有者 または 利用者 |
| 再建・再取得 | 所有者 のみ |
【補足】再建・再取得の場合、所有者が申請者となりますが、その所有者が農業者でなくても、利用している方が農業者であれば申請可能な場合があります(ただし、所有者が以前その施設等を営農に利用していた場合に限るなどの条件があります)。複雑なケースは必ず事前に役場の窓口へ相談してください。
④ 何に使える?補助対象となる経費
具体的にどのような費用が補助の対象になるのか、一覧で確認しましょう。
対象となる経費の例
- 農業用機械関連:トラクター、コンバイン、田植機、乾燥機、選別機などの修理費用、または同等性能の機械の再取得(購入)費用。
- 農業用施設関連:農機具格納庫、農作業場、畜舎、堆肥舎、農業用ハウスなどの修理、補強、再建にかかる費用。
- 撤去費用:全壊・半壊した施設の解体・撤去費用も対象となる場合があります。
対象とならない経費の例
- 消費税及び地方消費税
- 土地の取得費用や造成費用
- 事務手数料、振込手数料など
- 被災前の性能を上回る機能を追加するための費用(原形復旧を超える部分)
- 汎用性が高く、農業用途以外にも使用できるもの(例:一般的なパソコン、乗用車など)
⑤ 申請方法と全体の流れ【完全ガイド】
補助金の申請は手続きが複雑に感じられるかもしれませんが、ステップごとに進めれば大丈夫です。ここでは全体の流れを分かりやすく解説します。
Step 1:事前相談【最重要】
まずは必ず志賀町役場 農林水産課へ電話等で相談してください。被害状況を伝え、事業の対象となるか、どのような書類が必要かを確認します。ここが全てのスタートです。
Step 2:要望申込書の提出
相談後、事業の利用を希望する場合、「農業機械再取得等支援事業要望申込書」を作成し、必要書類を添えて提出します。これはあくまで「要望」の段階で、正式な申請ではありません。
Step 3:見積書の取得
修理や購入を依頼する業者から見積書を取得します。原則として3社以上から見積もりを取る必要があります。価格の妥当性を示すための重要な書類です。
Step 4:補助金交付申請
見積書などが揃ったら、正式な「補助金等交付申請書」を提出します。ここから審査が始まります。
Step 5:交付決定
審査に通ると、町から「交付決定通知書」が届きます。この通知を受け取ってから、正式に業者へ発注・契約するのが原則です。
Step 6:事業の実施(発注・工事・購入)
交付決定の内容に従って、機械の購入や施設の工事を開始します。
Step 7:実績報告
事業が完了したら、期限内に「補助事業等実績報告書」を提出します。領収書や完成後の写真などが必要です。
Step 8:補助金額の確定・支払い
実績報告書の内容が審査され、補助金額が確定します。その後、指定の口座に補助金が振り込まれます(精算払い)。
申請期間
石川県の情報によると、今年度の事業申請は8月、10月、11月に予定されています。ただし、各回の申請締切は市町によって異なります。
申請件数を把握する必要があるため、再建の目途が立たない等で申請をためらっている方も、まずは8月中に一度窓口にご相談ください。早めの相談が非常に重要です。
主な必要書類リスト
申請には多くの書類が必要です。志賀町のホームページからダウンロードできるほか、役場窓口でも配布しています。チェックリストを活用して漏れなく準備しましょう。
- 農業機械再取得等支援事業要望申込書
- 要望申込書チェックリスト
- 経営状況の確認ができる書類の写し(確定申告書、決算書など)
- 被災証明書または罹災証明書
- 被災状況がわかる写真(被害の全体像、損壊箇所など複数枚)
- 被災物件の所有権が確認できる書類(固定資産税納税通知書、登記簿謄本など)
- 見積書(原則3社以上)
- 見積が3社未満の理由書(該当する場合)
- 図面(建物の場合)またはカタログ(機械の場合)
- 修繕が不可能なことの証明書(修理不能の場合)
- 被災施設及び機械の申立書(所有を証明する書類がない場合)
⑥ 採択されるための3つの重要ポイント
確実に補助金を受けるためには、申請書類をただ提出するだけでは不十分です。審査を通過するための重要なポイントを3つご紹介します。
ポイント1:被害状況の客観的な証明
「どれだけ大きな被害を受けたか」を審査員に明確に伝えることが重要です。罹災証明書はもちろんのこと、写真は最も強力な証拠となります。「建物の全景」「傾きや亀裂がわかる写真」「壊れた機械の型番がわかる写真」など、誰が見ても被害状況が一目でわかるように、複数の角度から撮影しておきましょう。
ポイント2:3社見積もりの徹底と価格の妥当性
原則として3社以上から見積もりを取得することが求められます。これは、購入する機械や工事の価格が適正であることを示すためです。もし3社から取得できない場合は、「特殊な機械で取り扱い業者が1社しかない」「地域に業者が少なく、対応を断られた」など、誰もが納得できる具体的な理由を「理由書」に記載する必要があります。安易に1社だけの見積もりで申請すると、不採択のリスクが高まります。
ポイント3:書類の完璧な準備と早めの相談
申請書類は非常に多岐にわたります。一つでも不備があると、審査が遅れたり、最悪の場合不採択となったりする可能性があります。公式のチェックリストを使い、提出前に何度も確認しましょう。また、少しでも疑問点があれば、自己判断せずに必ず役場の担当者に相談してください。担当者は採択に向けたパートナーです。早めに相談し、良好な関係を築くことがスムーズな手続きの鍵となります。
⑦ よくある質問(FAQ)
- Q1: 自家消費のみの家庭菜園でも対象になりますか?
- A1: いいえ、対象外です。本事業は、農産物を販売し生計を立てている農業者の事業継続を支援する制度のため、販売実績のない方は対象となりません。
- Q2: 中古の農業機械を購入する場合も対象ですか?
- A2: はい、中古機械も対象となる場合があります。ただし、法定耐用年数を満たしているかなど、一定の条件があります。高額な買い物になるため、購入前に必ず役場の窓口に相談し、対象となるかを確認してください。
- Q3: 補助金はいつもらえますか?
- A3: 原則として、事業が全て完了し、支払いを済ませた後に実績報告書を提出し、その内容が認められた後に支払われる「精算払い」です。一時的に資金の立て替えが必要になります。ただし、条件によっては事業の途中で一部を受け取れる「概算払い」が可能な場合もありますので、資金繰りに不安がある方はご相談ください。
- Q4: 交付決定前に機械を発注してしまいました。対象になりますか?
- A4: 令和6年1月1日の発災日以降の取り組みが対象となりますが、原則は交付決定後の事業着手です。しかし、緊急性が高い場合など、事前に「交付決定前着手届」を提出することで、交付決定前の発注や契約も補助対象となる場合があります。ただし、申請が不採択になった場合は全額自己負担となるリスクがありますので、必ず事前に役場へ相談した上で手続きを進めてください。
- Q5: 補助金で購入した施設や機械は、保険に入らないといけませんか?
- A5: はい、必須条件です。この補助金は、将来にわたって安定した営農を継続してもらうことを目的の一つとしています。そのため、再度の気象災害などによる被災に備え、補助対象となった施設や機械は、必ず保険や共済へ加入することが求められます。
⑧ まとめと次の一歩
今回は、令和6年能登半島地震・豪雨で被災された志賀町の農業者の皆様のための「農業機械再取得等支援事業」について詳しく解説しました。
重要ポイントの再確認
- 対象者:能登半島地震・豪雨で被災した志賀町の販売農家。
- 補助率:機械は最大9/10、施設は最大7/10と非常に手厚い。
- 手続き:まずは役場への「事前相談」から。自己判断は禁物。
- 注意点:原形復旧が基本。3社見積もりと被災写真が重要。
被害の大きさから、再建を諦めかけていた方もいるかもしれません。しかし、この制度を活用すれば、少ない自己負担で営農再開の道筋を立てることが可能です。申請書類の準備は大変ですが、それに見合うだけの大きな支援が受けられます。
あなたの次の一歩は、下記の問い合わせ先に電話をかけ、相談の予約をすることです。専門の職員が、あなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれます。一人で悩まず、まずは専門家の力を借りましょう。あなたの農業が、志賀町の地で再び力強く実を結ぶ日を心から応援しています。