東京都では、災害時でも住民が安心して在宅避難生活を送れるよう、マンションの防災力向上を支援する「東京とどまるマンション」制度を推進しています。この記事では、その中核となる2つの補助金「非常用電源・太陽光発電・V2X設備導入促進事業」と「浸水対策設備導入促進事業」について、対象者、補助額、申請方法まで専門家が分かりやすく解説します。
「東京とどまるマンション」補助金制度の概要
本制度は、災害による停電や浸水リスクに備え、マンションのレジリエンス(強靭性)を高めることを目的としています。「東京とどまるマンション」に登録済みのマンションを対象に、以下の2つの事業で設備導入を支援します。
- 非常用電源、太陽光発電設備及びV2X設備導入促進事業:災害時の電力確保を目的とします。
- 浸水対策設備導入促進事業:水害から非常用電源等を守ることを目的とします。
重要ポイント:まずは「東京とどまるマンション」への登録から
これらの補助金を申請するには、事前に「東京とどまるマンション」への登録が必須です。未登録の場合は、まず登録手続きを行いましょう。
2つの補助金事業を徹底比較
それぞれの事業内容、補助額、対象経費を詳しく見ていきましょう。
1. 非常用電源・太陽光発電・V2X設備導入促進事業
災害時の停電に備え、給水ポンプやエレベーターを稼働させるための電力を確保する設備導入を支援します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象設備 |
|
| 補助率・上限額 |
|
| 対象経費 | 機器購入費、設置に係る材料費、運搬費、工事費、設置検討費用(システム設計費等) ※消費税除く |
注意点
- 太陽光発電設備及びV2X設備は、蓄電池を設置する場合に限り対象となります。
- 原則として、太陽光発電設備とV2X設備の両方を設置する必要があります。
- 蓄電池と発電機を重複して申請することはできません。
2. 浸水対策設備導入促進事業
洪水や内水氾濫などによる水害から、非常用電源や関連設備を守るための調査や改修工事を支援します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象事業 |
|
| 補助率・上限額 | 補助率 1/2、上限 75万円(調査・企画と改修の合計) |
| 対象経費 | 【調査・企画】調査・企画の経費 【改修】製品購入費、原材料費、運搬費、工事費 ※消費税除く |
注意点
- 申請対象は、ハザードマップ等で浸水被害が想定される区域に存在するマンションに限られます。
- 調査・企画と改修を同時に申請することはできません。
- (例)調査・企画で20万円の補助を受けた場合、改修での補助上限額は55万円となります。
申請手続きの流れとスケジュール
申請から補助金受領までの大まかな流れは以下の通りです。契約は必ず交付決定後に行う必要があります。
- 1交付申請
必要書類を揃えて申請します。(期限:各年度 翌年1月15日) - 2交付決定
審査後、交付決定通知書が届きます。(申請から約1.5ヶ月) - 3契約・事業実施
交付決定後に事業者と契約し、設備の設置や工事を行います。 - 4実績報告
事業完了後、実績報告書を提出します。(期限:各年度 3月15日) - 5額の確定
報告内容の審査後、補助金額確定通知書が届きます。 - 6補助金の請求・受領
請求書を提出し、指定口座に補助金が振り込まれます。
申請に必要な書類
申請時には多くの書類が必要です。事前にチェックリストを作成し、漏れなく準備しましょう。
交付申請時の主な必要書類
- 補助金交付申請書(第1号共通様式)
- 建物の登記事項証明書の写し(6ヶ月以内取得)
- 補助金申請の意思決定が確認できる書類(総会議事録など)
- 補助対象経費の見積書(社印のあるもの)
- 設備の仕様が確認できる書類(カタログの写しなど)
- 設置場所や接続が確認できる図面(電気系統図、平面図など)
- 確認書(第6号共通様式)
- 【浸水対策の場合】浸水想定区域等に含まれることが分かる資料(ハザードマップ等)
- 【手続き代行者を立てる場合】委任状、印鑑証明
実績報告時の主な必要書類
- 補助事業実績報告書(第19号共通様式)
- 契約を確認できる書類(契約書の写し)
- 支払が確認できる書類(領収書の写し)
- 未使用品であることを確認できる書類(保証書の写し)
- 設置状況が確認できる写真(全景、設置後、型番など)
- 防災マニュアル(災害時の設備使用方法を記載したもの)
よくある質問(Q&A)
- Q1. 申請から交付決定までどのくらいかかりますか?
- A1. 概ね1.5ヶ月程度が目安です。ただし、書類に不備がある場合や申請が集中した場合はさらに時間を要することがあります。見積書の有効期限には十分注意してください。
- Q2. リースで設備を導入する場合も対象になりますか?
- A2. いいえ、リースでの導入は補助対象外です。購入・設置が対象となります。
- Q3. 防災マニュアルには何を書けばよいですか?
- A3. 災害時にマンションの居住者が補助対象設備をスムーズに使えるよう、起動方法や使い方を写真や図を用いて分かりやすく記載してください。日常のメンテナンス方法や注意点なども盛り込むと良いでしょう。
まとめ:計画的な準備でマンションの防災力を高めよう
「東京とどまるマンション」補助金は、マンションの防災力を飛躍的に向上させるための強力な支援制度です。補助額が大きい一方で、申請には管理組合での合意形成や多くの書類準備が必要となります。
申請のご相談・お問い合わせはこちら
東京とどまるマンション 補助金受付事務局
(公益財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり推進課)
電話: 03-5989-1547
(受付時間:午前9時~午後5時 ※土日祝、年末年始を除く)
対象者・対象事業
「東京とどまるマンション」に登録している分譲マンションの管理組合、新規に建設する共同住宅の建築主、または賃貸マンションの所有者(国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構、東京都住宅供給公社を除く)
必要書類(詳細)
【交付申請時】補助金交付申請書、建物の登記事項証明書、意思決定が確認できる書類(議事録等)、補助対象経費の見積書、設備の仕様が確認できる書類(カタログ等)、接続・設置場所が確認できる書類(系統図、平面図等)、確認書、委任状・印鑑証明(代行者委任時)、浸水想定区域図(浸水対策申請時)など。
【実績報告時】補助事業実績報告書、契約書・領収書の写し、保証書の写し、設置写真、防災マニュアルなど。
対象経費(詳細)
【非常用電源・PV・V2X】機器購入費、設置に係る材料費、運搬費、工事費、設置の検討に要する費用(レイアウト検討費、システム設計費等)。
【浸水対策】調査・企画の経費、製品購入費又は原材料費、運搬費、工事費。
※いずれも消費税及び地方消費税は対象外。
対象者・対象事業
「東京とどまるマンション」に登録している分譲マンションの管理組合、新規に建設する共同住宅の建築主、または賃貸マンションの所有者(国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構、東京都住宅供給公社を除く)