パート・アルバイトの「年収の壁」が原因で、繁忙期に人手が足りなかったり、優秀な従業員が就業調整をしたりしていませんか?東京都では、こうした課題を解決するため、最大50万円を支給する「年収の壁突破」総合対策促進奨励金を実施しています。本記事では、2つのコースの要件やメリット、申請スケジュールまで、専門家が分かりやすく解説します。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金とは?
東京都が実施する、働く意欲のある方が「年収の壁」を意識せず能力を発揮できる環境を整備するための奨励金です。都内の中小企業が、①社会保険に加入した非正規雇用者向けの手当を新設したり、②「年収の壁」の原因となる配偶者手当を見直したりする取組を支援します。人材確保や従業員の定着率向上にも繋がる注目の制度です。
奨励金の概要(早見表)
奨励金額 | 1コース実施: 30万円 2コース同時実施: 50万円 |
対象事業者 | 都内で事業を営む中小企業等 |
申請期間 | 令和7年5月15日(木) ~ 令和8年2月27日(金) ※全10回の事前エントリー期間あり |
実施団体 | 公益財団法人東京しごと財団 |
申請方法 | 郵送 または 電子申請(jGrants) ※申請には事前エントリー(抽選)が必須 |
選べる2つの支援コース
本奨励金には、企業の状況に合わせて選択できる2つのコースがあります。両方のコースに同時に取り組むことで、奨励金額が30万円から50万円に増額されます。
💡 重要ポイント
2コースへの取組を希望する場合は、必ず最初から2コースでエントリーする必要があります。途中からのコース追加や変更はできませんのでご注意ください。
1. 社会保険加入促進コース(30万円)
新たに社会保険に加入する非正規雇用者の負担を軽減するため、社会保険料に関する手当等を新設する事業者を支援します。従業員が手取りの減少を気にせず、安心して社会保険に加入できる環境を整えることができます。
対象事業者
- 都内で事業を営んでいること
- 都内に勤務する常時雇用労働者を1名以上(うち1名は6か月以上継続)雇用していること
- 就業規則を労働基準監督署に届出ていること
- 就業規則に、非正規雇用者の社会保険料に関する手当等の規定がないこと
- 新たに社会保険の加入対象となる可能性のある非正規雇用者がいること
奨励対象となる取組
交付決定日から3か月以内に、以下のすべてを実施する必要があります。
- 非正規雇用者が負担する社会保険料に関する手当を新設する。
- 社会保険未加入の非正規雇用者1名以上が、新たに社会保険に加入し、上記手当の受給対象となる計画を作成する。
- 労使協定を締結後、就業規則を改正し、労働基準監督署に届け出る。(※必ずこの順番で実施)
- 社内周知および関連する社内研修を行う。
- 専門家による個別相談窓口を合計2回利用する。
2. 配偶者手当見直しコース(30万円)
「配偶者の年収が103万円未満」といった収入要件のある配偶者手当を見直す事業者を支援します。実質的な「年収の壁」となっている制度を改めることで、女性の就業調整を解消し、誰もが能力を発揮できる職場環境を目指します。
対象事業者
- 都内で事業を営んでいること
- 都内に勤務する常時雇用労働者を1名以上(うち1名は6か月以上継続)雇用していること
- 就業規則を労働基準監督署に届出ていること
- 就業規則に、「配偶者の収入要件がある配偶者手当」の規定があること
- 過去5年以内に当該手当の支給実績があること
奨励対象となる取組
交付決定日から3か月以内に、以下のいずれかの見直しと、それに伴う取組をすべて実施する必要があります。
【見直しの内容(いずれか1つを選択)】
- 配偶者手当の収入要件を撤廃する。
- 配偶者手当を廃止し、他の手当(例:子ども手当など)に振り替える。
- 配偶者手当を廃止し、基本給に繰り入れる。
【必須の取組】
- 上記の見直し内容について労使協定を締結する。
- 労使協定締結後、就業規則を改正し、労働基準監督署に届け出る。(※必ずこの順番で実施)
- 社内周知および関連する社内研修を行う。
- 専門家による個別相談窓口を合計2回利用する。
奨励金を活用する5つのメリット
この奨励金は、資金的な支援だけでなく、企業の成長につながる多くのメリットをもたらします。
1. 人手不足の解消と定着率向上
従業員の働き控えがなくなり、繁忙期でも安定した労働力を確保できます。また、手厚い福利厚生は従業員満足度を高め、離職率の低下に繋がります。
2. 優秀な人材の採用力強化
働きやすさを重視する求職者に対し、「従業員思いの企業」としてアピールできます。採用競争において大きなアドバンテージとなります。
3. 企業イメージの向上
女性活躍や働き方改革に積極的な企業として、取引先や顧客からの信頼が高まります。SDGsへの貢献もアピールできます。
4. 専門家による無料相談
社会保険労務士による個別相談を2回無料で受けられます。制度設計や就業規則の改定など、専門的なアドバイスでスムーズな導入が可能です。
5. 東京都の制度融資で優遇
奨励金の交付決定を受けると、東京都中小企業制度融資「女性活躍推進融資」の対象となり、信用保証料の補助や利率優遇を受けられます。
申請から受給までの流れ
申請は事前エントリー制(抽選)となっています。全体の流れをしっかり把握しておきましょう。
-
1
事前エントリー
特設サイトからエントリーします(1事業主1回限り)。 -
2
抽選・当選通知
受付期間終了後、抽選結果がメールで通知されます。 -
3
交付申請
当選メール受信日から1か月以内に、必要書類を提出します。 -
4
取組実施(交付決定から3か月以内)
就業規則改定や専門家相談など、計画した取組をすべて完了させます。 -
5
実績報告
取組完了後、交付決定日から4か月以内に実績報告書を提出します。 -
6
奨励金受給
審査完了後、指定の口座に奨励金が振り込まれます。
令和7年度 事前エントリー受付期間
令和7年度は全10回に分けて事前エントリーを受け付けます。各回で予定社数に達し次第、抽選となります。
募集回 | 予定社数 | 事前エントリー受付期間 |
---|---|---|
第1回 | 130社 | 令和7年5月15日(木)~5月30日(金) |
第2回 | 130社 | 令和7年6月2日(月)~6月30日(月) |
第3回 | 130社 | 令和7年7月1日(火)~7月31日(木) |
第4回 | 130社 | 令和7年8月1日(金)~8月29日(金) |
第5回 | 130社 | 令和7年9月1日(月)~9月30日(火) |
第6回 | 130社 | 令和7年10月1日(水)~10月31日(金) |
第7回 | 130社 | 令和7年11月4日(火)~11月28日(金) |
第8回 | 130社 | 令和7年12月1日(月)~12月26日(金) |
第9回 | 130社 | 令和8年1月5日(月)~1月30日(金) |
第10回 | 130社 | 令和8年2月2日(月)~2月27日(金) |
まとめ
東京都の「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、人手不足に悩む中小企業にとって、資金援助だけでなく、人材確保、定着率向上、企業価値向上といった多角的なメリットをもたらす強力な支援策です。この機会に制度を見直し、従業員がより一層活躍できる職場環境を構築してみてはいかがでしょうか。
まずは、自社がどちらのコースに該当するかを確認し、計画的に事前エントリーの準備を進めましょう。詳細は必ず公式サイトの募集要項をご確認ください。
お問い合わせ先
【奨励事業・取組内容・奨励金全般に関するお問い合わせ】
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金事務局
電話番号:03-5211-2315
受付時間:平日午前9時~午後5時(正午~午後1時・土日祝日・年末年始は除く)
【事前エントリー・抽選や当選に関するお問い合わせ】
事前エントリー窓口
電話番号:050-4560-7554
受付時間:平日午前9時~午後5時(土日祝日・年末年始は除く)