栃木県で農業を営む皆様、そして地域の農地や水路の維持管理に携わっている皆様へ。農村の美しい景観や豊かな自然は、日々の地道な共同活動によって支えられています。その大切な活動を金銭的に支援するのが「多面的機能支払交付金」です。この記事では、栃木県でこの制度を活用するためのポイントを、専門家が分かりやすく解説します。
多面的機能支払交付金とは?
多面的機能支払交付金は、農業・農村が持つ国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成といった多面的な機能を維持・発揮するために、地域の共同活動を支援する国の制度です。具体的には、農地や水路、農道などの維持管理活動に対して交付金が支払われます。
この制度の3つの柱
- 農地維持支払交付金: 農地、水路、農道等の基本的な保全管理活動を支援します。
- 資源向上支払交付金(共同活動): 水路の軽微な補修、植栽による景観形成、農村環境の保全活動など、質的向上を図る共同活動を支援します。
- 資源向上支払交付金(長寿命化): 老朽化が進む水路や農道等の施設の補修・更新を行い、施設の長寿命化を図る活動を支援します。
栃木県での対象者と活動内容
対象となる組織
この交付金の対象となるのは、単独の農家ではなく、地域で共同活動を行う組織です。具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 農業者などで構成される活動組織(集落や水利組合など)
- 複数の活動組織が連携した広域活動組織
対象となる活動の具体例
交付金の対象となる活動は多岐にわたります。以下に代表的な例を挙げます。
活動の種類 | 具体的な活動内容 |
---|---|
基礎的な保全活動 (農地維持支払) |
水路の泥上げ、農道の草刈り・砂利補充、農地法面の草刈りなど |
地域資源の質的向上 (資源向上支払) |
施設の軽微な補修、景観形成(花や樹木の植栽)、生態系保全活動、防災・減災活動(田んぼダムなど)、安全講習会の開催 |
施設の長寿命化 (資源向上支払) |
老朽化した水路の補修・更新、農道の舗装補修など |
交付単価の目安
交付額は、対象となる農地の面積や種類、活動内容に応じて定められた単価に基づいて算定されます。以下は国が定める標準的な単価です(地域の実情により異なる場合があります)。
交付金の種類 | 地目 | 単価(円/10a) |
---|---|---|
農地維持支払交付金 | 田 | 3,000円 |
畑 | 2,000円 | |
資源向上支払交付金 (共同活動) |
田 | 2,400円 |
畑 | 1,440円 |
※上記は一例です。傾斜地など条件によって単価は変動します。詳細は市町村にご確認ください。
申請から交付までの流れ【5ステップ】
制度を利用するための基本的な流れは以下の通りです。
- 1組織の設立: 地域で話し合い、活動組織を設立し、規約や役割分担を定めます。
- 2事業計画の作成: 5年間の活動計画(事業計画)を作成します。どのような活動を、どこで、いつ行うかを具体的に計画します。
- 3市町村へ申請: 作成した事業計画などを市町村に提出し、認定を受けます。
- 4活動の実施と記録: 計画に沿って共同活動を実施します。活動日、参加者、内容などを写真や日報でしっかり記録しておくことが重要です。
- 5実績報告と交付: 年度末に活動実績を市町村に報告し、審査を経て交付金が支払われます。
⚠️ 申請の重要ポイント
この制度を円滑に活用するためには、地域内での十分な話し合いと合意形成が不可欠です。また、交付金は活動経費を支援するものであるため、活動の記録(写真、作業日誌など)を確実に保管することが、後の実績報告で非常に重要になります。
まとめ
多面的機能支払交付金は、地域の共同活動を財政的に支え、農村環境を次世代に引き継ぐための強力なツールです。この制度を活用することで、個々の農家の負担を軽減し、地域コミュニティの活性化にも繋がります。
まずは、ご自身の地域でこの制度を活用できないか、集落の会合などで話し合ってみてはいかがでしょうか。不明な点があれば、お近くの市町村の農政担当課が相談窓口となります。
お問い合わせ先
ご相談・申請は、お住まいの市町村の農政担当課までお問い合わせください。
また、制度全般については以下の機関も参考になります。
栃木県農地水多面的機能保全推進協議会(栃木県土地改良事業団体連合会内)