詳細情報
東京都江東区で事業承継を控えている、あるいは事業承継を終えたばかりの経営者の皆様へ朗報です。事業承継を大きなチャンスと捉え、新たな設備投資で事業の飛躍を目指す企業を力強く支援する「江東区 事業承継設備補助金」が令和7年度も実施されます。この制度を活用すれば、製造業で最大200万円、その他の業種でも最大100万円の補助を受けることが可能です。しかし、申請には事前の経営相談や事業承継計画書の作成など、いくつかの重要なステップがあります。本記事では、補助金の概要から対象者、申請の具体的な手順、そして採択されるための重要なポイントまで、専門家が徹底的に解説します。この機会を最大限に活用し、円滑な事業承継と事業の成長を実現させましょう。
この記事のポイント
- 江東区の事業承継設備補助金の概要と目的がわかる
- 補助金額(最大200万円)、補助率(1/2)の詳細がわかる
- 対象者の具体的な要件と対象外ケースがわかる
- 申請から補助金交付までの8つのステップがわかる
- 採択率を高めるための重要なコツがわかる
江東区「事業承継設備補助金」とは?
制度の目的と概要
江東区 事業承継設備補助金は、区内の中小企業者が事業承継を契機として行う設備投資を支援する制度です。事業承継という大きな節目に、老朽化した設備の更新や、競争力強化・生産性向上のための新たな設備導入を後押しすることで、企業の持続的な成長と地域経済の活性化を図ることを目的としています。
親族内承継や従業員承継などを対象としており、事業を引き継いだ後継者が新たな挑戦をしやすくなるよう、設備投資の初期負担を軽減します。ただし、M&A(第三者承継)は原則として対象外となる点に注意が必要です。
実施組織と申請期間
- 実施組織: 江東区 地域振興部経済課 産業振興係
- 令和7年度 申請受付期間: 令和7年4月1日(火)から令和8年1月30日(金)まで
【重要】申請は先着順ではありませんが、予算の上限に達し次第、受付は終了となります。設備投資の計画がある方は、早めに準備を進め、申請することをおすすめします。
補助金額と補助率について
補助率と上限額
補助率は、補助対象となる経費の2分の1です(1,000円未満は切り捨て)。補助金の上限額は、営む事業の業種によって異なります。
| 業種 | 補助上限額 |
|---|---|
| 製造業(中小企業基本法第2条第1項第1号) | 200万円 |
| その他(卸売業、小売業、サービス業など) | 100万円 |
具体的な計算例
実際にどのくらいの補助金が受けられるのか、例を見てみましょう。
- ケース1:区内の製造業が500万円の最新工作機械を導入する場合
補助対象経費:500万円
計算式:500万円 × 1/2 = 250万円
補助上限額(製造業)が200万円のため、補助金額は200万円となります。 - ケース2:区内の飲食店が150万円の業務用厨房機器を導入する場合
補助対象経費:150万円
計算式:150万円 × 1/2 = 75万円
補助上限額(その他)が100万円のため、補助金額は75万円となります。
補助対象者と申請の必須条件
対象となる中小企業者の要件
この補助金を申請するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 江東区内に本店(個人事業主は主たる事業所)及び補助対象事業を行う事業所があること。
- 直近の法人住民税・法人事業税(個人は住民税・個人事業税)を滞納していないこと。
- 5年以内に事業承継を予定している、又は事業承継後5年を経過していないこと。
- 江東区内で引き続き1年以上事業を営んでいる者、又はその者から事業を承継した者であること。
- 事業承継後も引き続き区内で事業を営む意向と具体的な事業計画があり、江東区経営相談員の診断を受け適当と認められていること。
- 国、東京都、その他団体が実施する同種の補助金を受けていないこと。
対象外となるケース
以下のいずれかに該当する場合は、補助の対象外となりますのでご注意ください。
- みなし大企業(親会社等が中小企業者である場合を除く)
- フランチャイズチェーンの加盟店として事業を営む場合
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定される事業を営む場合
- 過去にこの補助金の交付を受けている場合
補助の対象となる経費
対象となる事業と設備
補助の対象となるのは、事業承継に伴って行う以下の事業です。
- 競争力の強化又は生産性の向上のための設備導入
- 老朽化による設備の更新(入れ替え)
対象となる設備は、事業の用に供する資産で区内事業所に備え付ける「機械及び装置」や「工具、器具及び備品」です。
具体的な対象経費リスト
- 設備の購入または賃借費用: 事業承継後に必要となる設備の費用です。中古品も対象ですが、中古品販売事業者からの購入に限ります。
- 運搬・設置費用: 設備の運搬、設置、初期設定にかかる費用。
- 既存設備の廃棄費用: 設備更新に伴う古い設備の廃棄にかかる費用。
対象外となる経費
以下の経費は補助対象外です。特に注意してください。
- 交付決定前に支払った経費
- パソコン、スマートフォン、タブレット等、汎用的に使用できる事務機器及び通信機器
- M&A資金(企業買収費用など)
- 区外事業所に設置する設備
申請から交付までの全8ステップを徹底解説
申請手続きは複数のステップに分かれており、2回の現地調査が必須です。流れをしっかり理解して、計画的に進めましょう。
STEP1: 【最重要】事前準備(経営相談と事業承継計画書作成)
補助金申請の大前提として、江東区経営相談員(中小企業診断士)による事業承継計画書の審査・確認が必要です。まずは江東区のウェブサイトから経営相談を予約しましょう。備考欄に「補助金申請に係る事業承継計画書の作成を希望」と記載するのを忘れないでください。計画書の完成には複数回の相談が必要になる場合もあるため、時間に余裕を持って始めましょう。
STEP2: 交付申請
経営相談員の確認が完了した事業承継計画書と、以下の書類を揃えて、江東区経済課産業振興係へ郵送または窓口で提出します。
- 江東区事業承継設備補助金交付申請書
- 設備導入計画書
- 事業承継計画書(経営相談員の確認済みのもの)
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)または住民票の写し(個人の場合)
- 開業届出書の控え等(個人の場合)
- 納税証明書
- 見積書等
- 設備のカタログ、パンフレット等
STEP3: 計画審査・現地調査(1回目)
提出された書類が審査され、要件を満たしている場合、区が委託する調査員(中小企業診断士)による現地調査が必須で行われます。事業所の状況や計画内容の確認が行われます。
STEP4: 交付決定
現地調査の結果、適当と認められると「交付決定通知書」が郵送されます。この通知を受け取ってから、設備の導入・更新を開始できます。
STEP5: 設備導入・更新
計画書に基づき、設備の導入や更新、支払いを完了させます。必ず交付決定通知日以降に支払いを行ってください。
STEP6: 実績報告
設備導入が完了したら、速やかに実績報告書と領収書のコピーなどの支払いを証明する書類を提出します。提出期限は申請年度の2月末日です。
STEP7: 報告審査・現地調査(2回目)
実績報告書提出後、再度必須の現地調査が行われます。導入された設備が計画通りか、適切に設置・稼働しているかなどが確認されます。
STEP8: 補助金額確定・交付
2回目の現地調査で問題がなければ、補助金額が正式に確定し、「交付額確定通知書」が届きます。同封の請求書類を提出後、指定の口座に補助金が振り込まれます。
採択率を高めるための3つの重要ポイント
ポイント1: 事業承継計画書の質を最大限に高める
この補助金の審査の核となるのが「事業承継計画書」です。江東区経営相談員と密に連携し、専門的な助言を受けながら、具体的で説得力のある計画書を作成しましょう。「事業承継を機に、この設備を導入することで、売上が〇%向上する」「生産性が向上し、コストが〇円削減できる」といった、定量的で具体的な目標を盛り込むことが重要です。
ポイント2: 設備導入の必要性と効果を明確にする
「設備導入計画書」では、なぜその設備が必要なのか、導入によってどのような経営課題が解決されるのかを明確に説明する必要があります。単に「古いから買い替える」のではなく、「新設備導入により、これまで外注していた工程を内製化し、納期短縮と品質向上を実現する」など、事業承継後の成長戦略と設備投資を結びつけて説明しましょう。
ポイント3: 2回の現地調査に万全の準備で臨む
この補助金では、申請時と実績報告後の2回、現地調査が行われます。調査員は提出書類と実際の状況に相違がないかを確認します。申請内容について経営者自身がしっかりと説明できるように、事前に書類を再確認し、想定される質問への回答を準備しておきましょう。誠実で協力的な姿勢が、スムーズな審査につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1: M&Aによる事業承継は対象になりますか?
A1: いいえ、M&A資金(企業合併・買収等の第三者による承継)は原則として対象外です。親族内承継や従業員承継が主な対象となります。
Q2: パソコンやタブレットの購入は対象ですか?
A2: いいえ、パソコン、スマートフォン、その他の電子計算機など、汎用的に使用できる事務機器及び通信機器は対象外です。
Q3: 交付決定前に発注した設備は対象になりますか?
A3: なりません。必ず交付決定通知書を受け取った後に、契約、発注、支払いを行ってください。交付決定前に支払った経費は一切対象となりません。
Q4: 中古の設備でも対象になりますか?
A4: はい、対象となります。ただし、中古品の販売事業者から購入し、その事業者との売買契約書の写しを提出できる場合に限ります。個人間売買などは対象外です。
Q5: 経営相談は必ず受けなければいけませんか?
A5: はい、必須です。事業承継計画書を作成し、江東区経営相談員の審査・確認を完了していることが申請の前提条件となります。これがこの補助金の最も重要なポイントです。
まとめ:まずは経営相談の予約から始めよう
江東区の事業承継設備補助金は、事業承継を成功させ、次のステージへと飛躍するための非常に強力な支援制度です。最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 補助額: 製造業は最大200万円、その他は最大100万円(補助率1/2)
- 最重要要件: 申請前に江東区経営相談員の審査・確認が完了した事業承継計画書が必要
- 対象経費: 事業承継後の設備投資(購入・賃借)、運搬設置費、廃棄費など
- 注意点: パソコン等の汎用品は対象外。交付決定前の支払いは対象外。
- 手続き: 申請時と実績報告後に計2回の現地調査が必須。
この補助金を活用するためには、計画的な準備が不可欠です。設備投資を検討している江東区の中小企業経営者の方は、今すぐ江東区のウェブサイトを確認し、経営相談の予約から第一歩を踏み出しましょう。
お問い合わせ先
江東区 地域振興部経済課 産業振興係
〒135-8383 東京都江東区東陽4丁目11番28号(区役所本庁舎4階29番窓口)
電話番号:03-3647-2332(計画変更等の相談)
公式サイト:江東区 事業承継設備補助金