詳細情報
訪問介護事業所の運営において、「深刻な人材不足」や「厳しい経営状況」に頭を悩ませていませんか?地域に不可欠なサービスでありながら、担い手の確保や経営の安定化は多くの事業所にとって喫緊の課題です。そんな課題解決を力強く後押しするのが、国が主導する「訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」です。この制度を活用すれば、研修体制の構築や採用活動、ヘルパーの常勤化、広報活動など、人材確保と経営改善に必要な経費に対して、最大200万円の補助が受けられます。この記事では、制度の全体像から対象経費、申請方法、採択のポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。あなたの事業所の未来を切り拓くための重要な情報を、ぜひ最後までご覧ください。
訪問介護等サービス提供体制確保支援事業とは?
制度の目的と背景
この事業は、人材不足が深刻化している訪問介護サービスの提供体制を維持・強化することを目的としています。具体的には、訪問介護事業所が「人材を確保し、安心して働き続けられる環境」を整備するための取組や、「事業所の経営を改善・安定化」させるための取組を支援します。地域の特性や事業所の規模に応じたきめ細やかな支援を通じて、在宅介護サービスの安定供給を目指す、非常に重要な補助金制度です。
実施組織
この事業の大元は厚生労働省ですが、実際の事業の実施主体は、原則として各都道府県となります。ただし、地域の実情に応じて市区町村が実施主体となる場合もあります。したがって、申請や問い合わせの窓口は、事業所が所在する都道府県または市区町村の介護保険担当課となります。
【重要】申請手続きや公募期間、補助対象となる事業の詳細は、各自治体によって異なります。必ず事業所所在地の都道府県・市区町村の公式ホームページで最新情報を確認してください。
補助金額・補助率の詳細
この補助金は、大きく分けて「人材確保体制構築支援」と「経営改善支援」の2つの柱から成り立っており、それぞれに複数の支援メニューが用意されています。補助額は、実支出額と補助基準額を比較して少ない方の額が交付されます。つまり、上限額の範囲内であれば、かかった経費がそのまま補助される(補助率10/10)非常にお得な制度です。
(1)人材確保体制構築支援事業
| 支援内容 | 補助基準額(上限) |
|---|---|
| 研修体制の構築の支援 | 1事業所あたり 10万円 |
| 中山間地域等・離島等地域における採用活動の支援 | 1事業所あたり 30万円 |
| 経験年数が短いホームヘルパー等への同行支援 | ・中山間地域等:30分未満 3,500円/回, 30分以上 5,000円/回 ・その他地域:30分未満 2,500円/回, 30分以上 4,000円/回 (※ヘルパー1人につき30回まで) |
(2)経営改善支援事業
| 支援内容 | 補助基準額(上限) |
|---|---|
| 経営改善の支援 | ・実施主体が専門家を派遣する場合:1事業所あたり 30万円 ・事業所が個別に実施する場合:1事業所あたり 40万円 |
| 登録ヘルパー等の常勤化の促進の支援 | 常勤化するヘルパー1人につき月額 10万円(3か月まで) |
| 小規模法人等の協働化・大規模化の取組の支援 | ・中山間地域等の法人を含む場合:1グループあたり 200万円 ・含まない場合:1グループあたり 150万円 |
| 介護人材・利用者確保のための広報活動に関する支援 | 1事業所あたり 30万円 |
対象者・条件
補助の対象となるのは、日本国内に所在する以下のサービスを提供する事業所です。
- 訪問介護事業所
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所
- 夜間対応型訪問介護事業所
地域による対象外のケースに注意!
都道府県が実施主体の場合、特定の市(政令指定都市・中核市など)が対象外となることがあります。例えば、北海道の事業では札幌市、旭川市、函館市に所在する事業所は対象外となり、各市が独自に同様の事業を実施しています。必ずご自身の事業所がある自治体の募集要項を確認してください。
補助対象となる経費の具体例
この補助金は、非常に幅広い経費をカバーしているのが特徴です。自社の課題に合わせて柔軟に活用できます。
人材確保体制構築支援の経費例
- 研修体制の構築: 研修カリキュラム作成の専門家への委託費、職員のスキルアップ研修の受講料、キャリアパス制度構築のコンサルティング費用など。
- 採用活動の支援(中山間地域等): 都市部で開催される就職フェアへの出展料や交通費、求職者のインターンシップ受け入れに伴う宿泊費など。
- 同行支援: 経験豊富なヘルパーが新人ヘルパーに同行指導する際の人件費(手当など)。
経営改善支援の経費例
- 経営改善の支援: 経営コンサルタントや社会保険労務士への相談・委託費用、業務効率化のための事務作業員(臨時)の雇用費など。
- 登録ヘルパーの常勤化: 登録ヘルパーを常勤職員として雇用する際の給与や社会保険料(法定福利費)の増加差額分。
- 協働化・大規模化: 複数法人での合同求人広告費、合同研修の講師謝礼、請求業務システムの共通化にかかる費用、ICTインフラ(PC、タブレット、Wi-Fi等)の整備費用など。
- 広報活動: 事業所の公式ホームページの新規作成やリニューアル費用、パンフレットやチラシのデザイン・印刷費用、Web広告の出稿費用など。
申請方法とスケジュール
申請手続きは自治体によって大きく異なります。ここでは一般的な流れと、北海道の例を参考に解説します。
申請のステップ
- 公募情報の確認: 事業所所在地の都道府県・市区町村のホームページで、公募要領、申請期間、提出書類などを確認します。
- 事業計画の策定: 補助金を活用してどのような課題を解決したいのか、具体的な事業計画を作成します。
- 必要書類の準備: 申請書、事業計画書、収支予算書、見積書など、指定された書類を準備します。
- 申請: 指定された方法(電子申請、郵送など)で、期限内に書類を提出します。
- 交付決定: 審査後、採択されると「交付決定通知書」が届きます。原則、この通知後に事業を開始します。
- 事業実施: 計画に沿って事業を実施します。経費の支払いを証明する領収書などは必ず保管してください。
- 実績報告: 事業完了後、期限内に実績報告書と経費の証拠書類を提出します。
- 補助金額の確定・支払い: 実績報告の審査後、補助金額が確定し、指定口座に振り込まれます。
申請期限の例(※必ずご自身の自治体で確認してください)
- 北海道の例: 令和7年(2025年)10月17日(金)必着
- 熊本県の例: 令和7年(2025年)10月10日(金曜日)
- 青森県の例: 令和7年9月30日(火)※受付終了
このように、自治体によって期限は様々です。公募開始後、早めに準備を始めることが重要です。
必要書類(一般的な例)
- 補助金交付申請書
- 事業計画書
- 所要額調書(経費の内訳)
- 収支予算書
- 見積書、カタログなど経費の根拠がわかる書類の写し
- (法人の場合)登記事項証明書
- 通帳の写し(振込先確認用)
採択されるための3つのポイント
申請すれば必ず採択されるわけではありません。予算には限りがあるため、審査で高い評価を得るためのポイントを押さえておきましょう。
1. 事業の目的との整合性
申請する取組が、この補助金の目的である「人材確保」や「経営改善」にどう貢献するのかを明確に説明することが最も重要です。「なぜこの取組が必要なのか」「実施することでどのような効果が期待できるのか」を、事業計画書で具体的に示しましょう。
2. 計画の具体性と実現可能性
「頑張ります」といった精神論ではなく、誰が、いつ、何をするのか、具体的なスケジュールや実施体制を計画書に盛り込みましょう。また、計上する経費がなぜその金額になるのか、見積書などを添付して客観的な根拠を示すことが不可欠です。現実離れした計画は評価されません。
3. 書類の不備をなくす
基本的なことですが、意外と多いのが書類の不備です。記入漏れ、押印忘れ、必要書類の添付漏れなどがあると、審査の対象にすらならない場合があります。提出前には、公募要領と照らし合わせながら、複数人でダブルチェックすることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 「人材確保」と「経営改善」の両方の事業を同時に申請できますか?
- A1. はい、可能です。国の実施要綱では両方の補助を受けることができるとされています。自社の課題に合わせて、複数のメニューを組み合わせて申請することを検討してください。
- Q2. 申請は事業所ごとに行うのですか?それとも法人単位ですか?
- A2. 自治体によりますが、法人単位で、同一自治体内に所在する複数の事業所分を取りまとめて申請するのが一般的です。例えば熊本県では法人単位での申請を求めています。
- Q3. 補助対象となる経費の期間はいつからですか?
- A3. これも自治体によって定められます。例えば北海道の例では、令和7年6月1日から令和8年3月31日までに要する経費が対象です。原則として交付決定日以降に発生した経費が対象となるため、注意が必要です。
- Q4. パソコンやタブレットの購入も対象になりますか?
- A4. 「小規模法人等の協働化・大規模化の取組の支援」の中で、協働化にあわせて行うICTインフラの整備として対象になる可能性があります。ただし、汎用性が高い物品の購入は対象外とされる場合もあるため、事前に自治体の担当窓口に確認することをお勧めします。
- Q5. 申請について相談したい場合、どこに連絡すればよいですか?
- A5. 事業所が所在する都道府県または市区町村の、介護保険や高齢福祉を担当する部署が窓口となります。各自治体の公募ページに問い合わせ先が記載されていますので、そちらにご連絡ください。
まとめ:まずは自治体の情報をチェックしよう
「訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」は、人材不足や経営課題に直面する訪問介護事業所にとって、非常に価値のある補助金です。ポイントをまとめます。
- 目的: 訪問介護サービスの人材確保と経営改善を支援。
- 補助額: 事業内容により10万円~最大200万円。
- 対象経費: 研修、採用、同行支援、コンサル、常勤化、広報など多岐にわたる。
- 最重要アクション: 実施主体は都道府県・市区町村のため、必ず所在地の自治体の公式情報を確認すること。
公募期間は限られています。この記事を参考に、まずは自社の課題を整理し、どの支援メニューが活用できそうか検討してみてください。そして、すぐにお住まいの自治体のホームページを確認し、具体的な準備を始めましょう。この機会を最大限に活用し、事業所の持続的な成長を実現してください。