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「重度の障がいがあるけれど、働きたい」「通勤や職場での介助が不安で、就労に踏み出せない」そんな悩みを抱えていませんか?重度障がい者等就業支援事業は、働く意欲と能力がありながら、障がいを理由に就労が困難な方を支援するための画期的な制度です。この制度を活用することで、通勤中や勤務時間中の日常生活に必要な介助をヘルパーに依頼でき、安心して働く環境を整えることができます。この記事では、重度障がい者等就業支援事業の詳しい内容から、対象者、申請方法、そして国の助成金との連携まで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。あなたの「働きたい」という想いを実現するための一歩を、この制度で踏み出しましょう。
この記事のポイント
- 重度障がい者等就業支援事業の目的と仕組みがわかる
- 対象となる人や支援内容の具体的な条件がわかる
- 国の助成金(JEED)との連携について理解できる
- 申請からサービス利用開始までの流れをステップごとに確認できる
- 利用者負担額やよくある質問で疑問を解消できる
① 重度障がい者等就業支援事業の概要
まずは、この事業がどのようなものなのか、全体像を掴みましょう。福祉と雇用の連携が大きな特徴です。
正式名称と実施組織
この制度の正式名称は「重度障がい者等就業支援事業」です。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に基づき、各市区町村が主体となって実施しています。そのため、お住まいの自治体(例:大阪市、堺市、東京都文京区など)によって、細かな要綱や申請手続きが異なる場合があります。
目的と背景
本事業の目的は、働く意欲と能力がありながらも、障がいが理由で働くことができない重度障がい者の方に対し、就業中にも日常生活の支援を行うことで、就労の機会を広げ、社会参加を促進することです。
大きな特徴は、福祉施策(市区町村)と雇用施策(国)が連携して支援を行う点です。特に民間企業で働く場合、国の「重度訪問介護サービス利用者等職場介助助成金」や「重度訪問介護サービス利用者等通勤援助助成金」とあわせて活用することが基本となります。
② 支援内容と利用者負担額
具体的にどのような支援が受けられ、費用はどのくらいかかるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
支援の対象となる内容
支援の対象となるのは、指定された事業所のヘルパー(従事者)が行う、就業中、通勤中、休憩時間中の「日常生活にかかる介助」です。具体的には以下のような支援が想定されます。
- 食事や水分補給の介助
- 排泄の介助
- 体位変換
- 喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケア
- 職場内での移動介助
- 書類をめくる、物を取るなどの身体介護を伴う補助
【重要】対象外となる支援
この事業は、あくまで日常生活の延長線上にある支援を対象としています。そのため、パソコンの入力代行、電話応対、専門的な判断を伴う業務など、従業者が主体的に行うべき「業務」そのものは支援の対象外です。
利用者負担額
原則として、サービス提供にかかった費用の1割が自己負担となります。ただし、家計の負担が重くなりすぎないよう、所得に応じて月々の負担上限額が定められています。これは通常の障害福祉サービスとは別の負担額となります。
負担上限月額は自治体によって若干異なりますが、概ね以下のようになっています。
| 所得区分 | 利用者負担上限月額(大阪市の例) | 利用者負担上限月額(堺市の例) |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯 | 3,000円 | 4,000円 |
③ 対象者・条件
この事業を利用できるのは、以下の要件を満たす方です。ご自身が当てはまるか確認してみましょう。
基本となる要件
- 事業を実施している市区町村に居住していること。
- 重度訪問介護、同行援護、行動援護のいずれかの支給決定を受けている、または同等の要件を満たすこと。
- 働く意思と能力があること。
働き方による要件
上記の基本要件に加え、働き方によって以下のいずれかに該当する必要があります。
- 民間企業に雇用される者
1週間の所定労働時間が10時間以上であること。ただし、年度末までに10時間以上になる見込みがある場合も対象となることがあります。 - 自営業者等
個人事業主として開業届を提出しているなど、自営業を営んでいることが確認でき、その事業に従事する時間が1週間のうち10時間以上であること。
【注意】対象外となるケース
・就労継続支援A型事業所の利用者は対象外です。
・公務員は対象外となる場合があります。
詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
④ 申請方法・手順
申請手続きは、民間企業に雇用される場合と自営業の場合で少し異なります。ここでは、一般的な流れをステップごとに解説します。
【パターン1】民間企業に雇用される場合
企業と連携して国の助成金(JEED)の手続きも並行して進める必要があります。
- Step 1: 関係者による協議と支援計画書の作成
本人、企業、市区町村の担当者、相談支援専門員などが集まり、必要な支援内容や時間数について協議し、「支援計画書」を作成します。 - Step 2: 企業からJEEDへの申請
企業が、作成した支援計画書を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に提出し、国の助成金の申請手続きを行います。 - Step 3: 本人から市区町村への利用申請
JEEDで支援計画書の確認を受けた後、本人がお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、本事業の利用申請を行います。 - Step 4: 支給決定と受給者証の交付
市区町村が申請内容を審査し、利用が決定すると「支給決定通知書」と「受給者証」が交付されます。 - Step 5: サービス利用開始
利用したい重度訪問介護事業所等に受給者証を提示し、契約を結ぶと、支援計画書に基づいたサービスの利用が開始されます。
【パターン2】自営業者の場合
自営業者は国の助成金の対象外のため、市区町村との手続きのみとなります。
- Step 1: 関係者による協議と支援計画書の作成
本人、市区町村の担当者、相談支援専門員などで協議し、「支援計画書」を作成します。 - Step 2: 本人から市区町村への利用申請
作成した支援計画書を添えて、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に利用申請を行います。 - Step 3: 支給決定と受給者証の交付
市区町村が申請内容を審査し、利用が決定すると「支給決定通知書」と「受給者証」が交付されます。 - Step 4: サービス利用開始
利用したい重度訪問介護事業所等に受給者証を提示し、契約を結び、サービスの利用を開始します。
主な必要書類
- 重度障がい者等就業支援費支給申請書(自治体指定の様式)
- 支援計画書
- 雇用契約書の写しなど、雇用されていることが確認できる書類(民間企業の場合)
- 開業届の写しなど、自営業を営んでいることが確認できる書類(自営業者の場合)
- 障がい福祉サービス受給者証の写し
- サービス等利用計画書の写し
- その他、市長が必要と認めるもの
⑤ スムーズな利用決定のためのポイント
この事業は要件を満たせば利用できる福祉サービスですが、スムーズに決定を受けるためにはいくつかのポイントがあります。
- 支援計画書の具体性: なぜその支援が必要なのか、どのくらいの時間が必要なのかを具体的に、客観的な事実に基づいて記載することが重要です。日々の生活や業務の流れを整理し、必要な介助を洗い出しましょう。
- 関係者との密な連携: 本人、企業、相談支援専門員、市区町村の担当者が同じ方向を向いて協力することが不可欠です。特に企業側には、国の助成金制度と本事業の役割分担を正しく理解してもらう必要があります。
- 早めの相談: 就職活動と並行して、または内定が出た段階で、早めに市区町村の窓口や相談支援専門員に相談を開始しましょう。手続きには一定の時間がかかります。
⑥ よくある質問(FAQ)
Q1. パートやアルバイトでも利用できますか?
A1. はい、利用できます。雇用形態は問いませんが、1週間の所定労働時間が10時間以上である必要があります。
Q2. 会社の業務を手伝ってもらうことはできますか?
A2. いいえ、できません。この事業の支援は、食事や排泄、移動介助といった「日常生活上の介助」に限られます。資料作成や電話応対といった業務そのものは対象外です。
Q3. 国の助成金(JEED)との違いは何ですか?
A3. 国の助成金は、企業(事業主)に対して支給され、主に「業務遂行に必要な支援」や「通勤支援」を対象とします。一方、市区町村の就業支援事業は、利用者本人に対して支給(代理受領)され、国の助成金でカバーしきれない「日常生活上の介助(体位変換や喀痰吸引など)」を対象とします。両方を組み合わせて利用することで、切れ目のない支援が可能になります。
Q4. 自分の住んでいる市町村で実施しているか、どうすればわかりますか?
A4. お住まいの市区町村のウェブサイトで「重度障がい者等就業支援事業」と検索するか、障害福祉担当の窓口に直接お問い合わせください。
Q5. 申請してから利用開始まで、どのくらいかかりますか?
A5. 自治体や申請内容によりますが、関係者との調整や審査に1〜2ヶ月程度かかる場合があります。就労開始時期が決まっている場合は、余裕をもって早めに手続きを開始することをおすすめします。
⑦ まとめ・次の一歩へ
重度障がい者等就業支援事業は、重度の障がいがある方の「働きたい」という想いを社会全体で支えるための、非常に重要な制度です。
- 対象者: 重度訪問介護などを利用し、週10時間以上働く(または自営する)方。
- 支援内容: 通勤・就業中の食事、排泄、移動などの日常生活上の介助。
- 費用: 原則1割負担。所得に応じた月額上限あり。
- ポイント: 市区町村の福祉施策と、国の雇用施策(JEED助成金)の連携が鍵。
- 手続き: 本人・企業・自治体等が連携して「支援計画書」を作成し申請。
この制度に興味を持たれたら、まずは第一歩として、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、日頃から相談している相談支援専門員の方に「重度障がい者等就業支援事業を利用して働きたい」と伝えてみてください。そこから、あなたに合った支援の形を一緒に見つけていくことができます。
【お問い合わせ先(例)】
大阪市の場合: 福祉局 障がい者施策部 障がい支援課 電話: 06-6208-8245
堺市の場合: 健康福祉局 障害福祉部 障害福祉サービス課 電話番号:072-228-7510
※実際のお問い合わせは、必ずご自身の住民票がある市区町村の担当窓口へお願いします。