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お子さんの発達や成長について、「専門的なサポートを受けさせたい」と考え、児童発達支援や放課後等デイサービス(放デイ)の利用を検討している保護者の方も多いのではないでしょうか。しかし、同時に「療育サービスの費用は高額なのでは…」という不安を感じることもあるかもしれません。
ご安心ください。日本には「障害児通所支援」という公的な制度があり、これを利用することで、サービス費用の9割が公費で賄われます。さらに、ご家庭の所得に応じて自己負担額の上限が定められているため、月額0円から専門的な療育サービスを受けることが可能です。この記事では、障害児通所支援の費用負担の仕組み、対象となるお子さんの条件、申請から利用開始までの具体的な流れを、誰にでも分かりやすく徹底解説します。
障害児通所支援とは?お子さんの成長を支える公的サービス
制度の目的と概要
障害児通所支援は、障害のあるお子さんや、発達に気がかりな点があるお子さんが、お住まいの地域で必要な発達支援を受けられるようにするための制度です。これは特定の「助成金」や「補助金」とは少し異なり、サービス利用にかかる費用の大部分(9割)を国と自治体が負担してくれる、福祉サービスそのものを指します。この制度のおかげで、保護者の方は経済的な負担を大幅に軽減しながら、お子さんに質の高い療育を受けさせることができます。
主なサービスの種類
障害児通所支援には、お子さんの年齢や状況に応じていくつかの種類があります。
- 児童発達支援:主に未就学のお子さんが対象。日常生活における基本的な動作の指導や、集団生活に適応するための訓練など、一人ひとりの発達段階に合わせた療育を提供します。
- 放課後等デイサービス(放デイ):小学生から高校生までの就学児が対象。学校の授業終了後や夏休みなどの長期休暇中に、生活能力の向上のための訓練や社会との交流を促進する活動を行います。
- 保育所等訪問支援:専門の支援員が保育所や幼稚園、学校などを訪問し、お子さんが集団生活にスムーズに適応できるよう、専門的な支援や環境調整の助言を行います。
- 居宅訪問型児童発達支援:重度の障害などで外出が著しく困難なお子さんを対象に、支援員がご自宅を訪問して発達支援を提供します。
気になる費用は?利用者負担額の仕組みを徹底解説
自己負担は原則1割!でも上限があるから安心
障害児通所支援を利用した際の自己負担額は、原則としてサービスにかかった費用の1割です。例えば、1回の利用で10,000円のサービス費用がかかった場合、自己負担は1,000円となります。残りの9,000円は公費で負担されます。
しかし、「1割負担でも、たくさん利用したら高額になるのでは?」と心配されるかもしれません。その点も配慮されており、世帯の所得に応じて1ヶ月あたりの負担上限額が定められています。月に何回サービスを利用しても、この上限額を超えて請求されることはありません。
【重要】所得区分ごとの利用者負担上限月額
ご家庭の負担上限月額は、世帯の所得(市町村民税所得割額)によって以下の通り区分されています。
| 区分 | 世帯の所得状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割28万円未満) | 4,600円 |
| 一般2 | 上記以外(所得割28万円以上) | 37,200円 |
ポイント:世帯年収がおおむね890万円未満のご家庭の場合、負担上限月額は4,600円となります。そのため、多くの方が月額0円または4,600円の負担でサービスを利用しています。
【未就学児は無償化!】就学前障害児の発達支援の無償化について
さらに、2019年10月から「就学前障害児の発達支援の無償化」がスタートしました。これにより、児童発達支援などを利用する3歳から5歳までのお子さんについては、利用者負担額が無料になります。
- 対象期間:満3歳になって初めての4月1日から小学校入学までの3年間
- 内容:利用者負担上限月額にかかわらず、自己負担が0円になります。
- 注意点:おやつ代や教材費などの実費負担は無償化の対象外です。
誰が対象?制度を利用できる条件
対象となるお子さん
この制度は、以下のような状況にある18歳未満のお子さんが対象となります。
- 身体に障害のある児童
- 知的に障害のある児童
- 精神に障害のある児童(発達障害を含む)
- 難病を有する児童
重要ポイント:この制度の利用にあたり、必ずしも障害者手帳(療育手帳など)は必要ありません。医師の診断書や意見書、心理検査の結果など、専門家が「療育の必要性がある」と判断した書類があれば申請が可能です。
必須条件:「通所受給者証」の取得
障害児通所支援サービスを利用するためには、お住まいの市区町村が発行する「障害児通所受給者証」が絶対に必要です。この受給者証に、利用できるサービスの種類、1ヶ月に利用できる日数(支給量)、利用者負担上限月額などが記載されます。事業所と契約する際に、この受給者証を提示する必要があります。
申請から利用開始までの6ステップ
受給者証を取得し、サービス利用を開始するまでの一般的な流れは以下の通りです。自治体によって細部が異なる場合があるため、まずはお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
- ステップ1:相談
市区町村の担当窓口(障害福祉課、こども家庭支援課など)や、障害児相談支援事業所にサービスの利用について相談します。 - ステップ2:事業所の見学・検討
利用したいと思う児童発達支援事業所や放課後等デイサービスをいくつか見学します。お子さんに合うか、雰囲気や療育内容、空き状況などを確認しましょう。 - ステップ3:申請書類の提出
市区町村の窓口に「障害児通所給付費支給申請書」などの必要書類を提出します。この際、「障害児支援利用計画案」も一緒に提出する必要があります。 - ステップ4:面接調査(ヒアリング)
市区町村の担当者が、お子さんの心身の状況や生活環境、サービスの利用意向などについて保護者から直接お話を伺います。 - ステップ5:「通所受給者証」の交付
審査の結果、支給が決定されると、自宅に受給者証が郵送されます。通常、申請から交付まで2週間~1ヶ月程度かかります。 - ステップ6:事業者との契約・利用開始
利用したい事業所に受給者証を提示して契約を結びます。その後、個別支援計画の説明を受け、サービスの利用がスタートします。
受給者証をスムーズに取得するためのポイント
療育の必要性を客観的に示す
申請の際には、なぜお子さんに専門的な療育が必要なのかを客観的に示す資料があると、手続きがスムーズに進みます。かかりつけ医からの診断書や意見書、発達検査などの心理検査の結果、保育園や学校の先生からの情報提供書などが有効です。
障害児相談支援事業所を活用する
申請に必要な「障害児支援利用計画案」の作成は、専門知識がないと難しいと感じるかもしれません。その際は、「障害児相談支援事業所」に作成を依頼することができます。相談支援専門員が面談を通してお子さんに合った計画案を作成してくれ、費用は無料です。市区町村の窓口で事業所リストをもらえますので、ぜひ活用しましょう。
お子さんの状況を具体的に伝える
市区町村との面接では、日常生活や集団生活での困りごと、得意なこと、苦手なことなどを具体的に伝えることが大切です。「言葉の遅れが心配」「お友達とのトラブルが多い」「こだわりが強くて集団行動が難しい」など、具体的なエピソードを交えて話せるよう、事前にメモを準備しておくと良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
- Q1: 障害者手帳がないと利用できませんか?
- A1: いいえ、必ずしも必要ありません。医師の診断書や意見書など、専門家が療育の必要性を認める書類があれば申請できます。まずはお住まいの市区町村の窓口にご相談ください。
- Q2: 費用は本当に上限額以上かからないのですか?
- A2: はい、サービスの利用料については、受給者証に記載された上限額以上の負担は発生しません。ただし、事業所によっては、おやつ代、教材費、イベント参加費などが別途「実費」として必要になる場合があります。これらの費用は上限額管理の対象外ですので、見学や契約の際にご確認ください。
- Q3: 複数の事業所をかけもちで利用することはできますか?
- A3: はい、可能です。例えば「平日はA事業所の児童発達支援、土曜日はB事業所の児童発達支援」といった利用ができます。ただし、1ヶ月の合計利用日数が、受給者証に記載された支給量(利用上限日数)の範囲内である必要があります。また、複数の事業所を利用する場合、利用者負担上限額の管理を一つの事業所に依頼する手続きが必要です。
- Q4: 申請してから受給者証が届くまでどのくらいかかりますか?
- A4: 自治体や申請時期にもよりますが、一般的には約2週間から1ヶ月程度かかります。新年度前や長期休み前は混み合う傾向があるため、利用開始希望時期が決まっている場合は、2~3ヶ月前から早めに手続きを始めることをお勧めします。
- Q5: 「障害児支援利用計画案」は自分で作らないといけませんか?
- A5: 保護者の方がご自身で作成する「セルフプラン」も可能ですが、多くの方は「障害児相談支援事業所」に依頼しています。専門家が無料で作成をサポートしてくれるため、負担が少なく、お子さんにとってより適切な計画を立てることができます。
まとめ:まずは専門家への相談から始めよう
障害児通所支援は、お子さんの健やかな成長を経済的な面から力強くサポートしてくれる、非常に重要な制度です。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 利用者負担は原則1割ですが、所得に応じた月額上限(0円、4,600円など)が設定されています。
- 3歳から5歳の未就学児は、利用者負担が無償化されます。
- 制度利用には、市区町村が発行する「通所受給者証」が必須です。
- 障害者手帳がなくても、医師の意見書などで申請が可能です。
費用面の不安が解消されたら、次の一歩は「相談」です。まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当課や、障害児相談支援事業所に連絡を取ってみましょう。専門家が親身に相談に乗り、お子さんに最適なサポートへの道筋を一緒に考えてくれます。利用できる制度を最大限に活用し、お子さんの可能性を広げていきましょう。