詳細情報
先の大戦で亡くなられたご家族の眠る地を訪れ、慰霊の誠を捧げたいと願う戦没者のご遺族様へ。国がその想いを支援する「慰霊巡拝事業」をご存知でしょうか。この事業は、厚生労働省や日本遺族会が主催し、旧主要戦域となった海外地域や硫黄島などへの慰霊の旅を企画・実施するものです。最大の特長は、参加費用の一部(経費の約3分の1)を国が補助してくれる点です。これにより、個人で渡航するよりも費用負担を大幅に軽減できます。この記事では、2025年度(令和7年度)に実施される慰霊巡拝事業について、対象となるご遺族の条件、補助内容、訪問地域、そして具体的な申込方法まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。大切な方への追悼の旅を実現するための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 国が費用を補助する「慰霊巡拝事業」の全体像
 - 参加できるご遺族の具体的な条件(対象範囲)
 - 補助される金額と自己負担額の目安
 - 2025年度の訪問対象地域とスケジュール
 - 申し込みから参加までの詳しい手順と必要書類
 - 政府主催と日本遺族会主催の違い
 
慰霊巡拝事業の概要
慰霊巡拝事業は、戦没者を慰霊するため、国がご遺族の現地訪問を支援する大切な取り組みです。主に「政府(厚生労働省)主催」のものと、「日本遺族会主催」のものの2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
1. 政府主催 慰霊巡拝
- 実施組織: 厚生労働省(申込窓口は各都道府県・市町村)
 - 目的: 旧主要戦域や遺骨収集の望めない海上等で戦没された方、または旧ソ連・モンゴル地域で抑留中に死亡された方を慰霊するため、ご遺族の現地訪問を支援します。
 - 対象者: 戦没者の配偶者、子、兄弟姉妹、孫、甥、姪など、幅広い範囲のご遺族が対象です。
 - 特徴: 参加者は「全戦没者の遺族代表」という立場で参加し、団体で行動します。個人行動は制限されます。
 
2. 日本遺族会主催 戦没者遺児による慰霊友好親善事業
- 実施組織: 一般財団法人日本遺族会(政府補助事業)
 - 目的: 亡き父等の戦没地を訪れ慰霊追悼を行うとともに、現地の小学校や医療施設等を訪問し、国際親善を深めることを目的としています。
 - 対象者: 主に戦没者の「遺児」が対象です。
 - 特徴: 慰霊だけでなく、現地との友好親善も重視されています。また、戦争の悲惨さや平和の尊さを語り継ぐため、付添者として参加する孫、ひ孫、甥、姪にも費用補助があります。なお、この事業は令和7年度で最後の実施となる予定です。
 
補助金額と自己負担額の目安
この事業の大きな魅力は、国からの費用補助です。参加するご遺族には、国から経費の3分の1程度が補助されます。これにより、ご自身の負担は残りの3分の2程度となります。
【重要】介助者として同行される方は、原則として国の補助対象外となり、全額自己負担となりますのでご注意ください。
自己負担額の目安
補助金を差し引いた後の、参加者ご本人の自己負担額の目安は以下の通りです。最終的な参加費は、ルートや参加人数によって変動し、出発の約10日前に確定します。
| 事業の種類 | 対象地域 | 自己負担額(目安) | 
|---|---|---|
| 政府主催 慰霊巡拝 | 海外地域(フィリピン、ミャンマー等) | 約250,000円 ~ 470,000円 | 
| 硫黄島(羽田空港発着) | 約20,000円 | |
| 日本遺族会主催 事業 | 海外地域(フィリピン、ミャンマー) | 参加費 100,000円 | 
※上記金額には、集合場所(東京など)までの国内交通費や、渡航手続き手数料、個人的な費用は含まれません。
参加資格(対象者)と条件
慰霊巡拝に参加するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。ご自身が対象となるか、よくご確認ください。
主な参加資格
- ご遺族であること: 慰霊巡拝を行う戦域における戦没者のご遺族であることが第一条件です。対象となる続柄は以下の通りです。
- 配偶者(再婚した方を除く)
 - 父母
 - 子
 - 兄弟姉妹
 - 孫
 - 参加する子・兄弟姉妹の配偶者
 - 甥・姪
 
 - 健康状態が良好であること: 航空機での長距離移動や、気候・風土の異なる地域での団体行動に支障がないことが求められます。申込後に提出する健康チェック票や、内定後に提出する医師の証明書で判断されます。
 - 初参加者が優先: 当該地域の慰霊巡拝や遺骨収集に過去参加したことがない方、および当該戦域を一度も訪問したことのない方が優先されます。過去に参加した方は、定員に空きがある場合にのみ参加可能です。
 
年齢制限について
参加に明確な年齢制限はありません。参加の可否は、提出書類から判断される健康状態や現地の状況を考慮し、個別に判断されます。ただし、お一人での参加が難しいと判断された場合は、介助者の同行をお願いされることがあります。
2025年度(令和7年度)実施計画と申込締切
令和7年度の政府主催慰霊巡拝の実施計画(予定)です。多くの地域は既に募集を締め切っていますが、まだ募集中の地域もあります。締切が近い場合でも、まずは諦めずにお住まいの自治体へお問い合わせください。申し込みは先着順ではありません。
| 実施予定地域 | 実施予定時期 | 申込締切日(東京都の場合) | 
|---|---|---|
| 中国東北地方 | R7.8/19~8/29 | 募集締切 | 
| カザフスタン共和国 | R7.9/2~9/10 | 募集締切 | 
| ウズベキスタン共和国 | R7.9/25~10/3 | 募集締切 | 
| インドネシア | R7.9/3~9/12 | 募集締切 | 
| 東部ニューギニア | R7.9/17~9/25 | 募集締切 | 
| トラック諸島 | R7.10/8~10/16 | 募集締切 | 
| パラオ諸島 | R8.1/22~1/29 | 募集締切 | 
| フィリピン | R8.2/4~2/13 | 募集締切 | 
| 硫黄島(第1次) | R7.11/11~11/12 | 募集締切 | 
| 硫黄島(第2次) | R8.2/25~2/26 | 令和7年9月26日(金) | 
| ミャンマー | R8.3/2~3/7 | 令和7年10月17日(金) | 
※上記は東京都の締切日です。お住まいの道府県によって締切日は異なりますので、必ず管轄の窓口にご確認ください。
※実施時期や期間は、相手国の都合や現地の情勢等により変更・中止となる場合があります。
申請方法・手順(政府主催事業の場合)
申し込みは、お住まいの都道府県や市町村の援護担当部署が窓口となります。ここでは東京都の例を基に、一般的な流れを解説します。
ステップ1:仮受付(問い合わせ)
まずは、お住まいの自治体の援護担当部署へ電話またはインターネットで連絡し、「国主催の慰霊巡拝に参加したい」旨を伝えて仮受付をしてください。申し込みを迷っている段階でも、早めに問い合わせることをお勧めします。
ステップ2:案内書類の受領
仮受付をすると、自治体から申込に必要な書類一式(内申書様式、日程案、申込要領など)が郵送で送られてきます。
ステップ3:必要書類の準備と提出
送られてきた案内に従い、下記の必要書類を準備します。書類が揃ったら、指定された申込締切日までに必着するように、援護担当部署へ郵送で提出します。
主な必要書類リスト
- 参加遺族代表者内申書: 自治体から送付される用紙に記入します。
 - 参加希望者の現在の戸籍謄本又は抄本(原本): 申込前180日以内に発行されたものが必要です。
 - 戦没者との関係がわかる戸籍謄本(コピー可): 戦没者の死亡場所・死亡日、参加者との続柄がわかるもの。発行年月日は問いません。
 - 質問票(健康チェック票): 自治体から送付される用紙に記入します。一部、ご家族等によるチェックも必要です。
 - (介助が必要な方のみ)介助者内申書、障害者手帳等の写し
 
ステップ4:内定と追加書類の提出
書類審査後、参加が内定した方には直接連絡があります。その後、指示に従い「医師の証明書」や「パスポートの写し(海外地域の場合)」などを提出します。
よくある質問(FAQ)
慰霊巡拝事業に関して、よく寄せられる質問をまとめました。
Q1. 参加に年齢制限はありますか?
A1. 明確な年齢制限はありません。ただし、長時間の移動や団体行動に耐えられる健康状態であることが条件となります。提出された健康チェック票や医師の証明書を基に、個別に判断されます。
Q2. 介助者を連れて行くことはできますか?費用はどうなりますか?
A2. はい、必要であれば介助者の同行が認められます。ただし、介助者の方の参加費用は国の補助対象外となり、全額自己負担となりますのでご注意ください。
Q3. 必ず肉親が亡くなった場所(戦没地点)で慰霊できますか?
A3. 最終的な日程は、参加希望者のゆかりの地を可能な限り考慮して決められます。しかし、日程や現地の治安、交通事情などの制約により、必ずしもご肉親の戦没地点や埋葬地で慰霊が行えるとは限りません。あらかじめご了承ください。
Q4. 申し込みは先着順ですか?
A4. いいえ、先着順ではありません。申込締切後に、健康状態や過去の参加歴などを考慮して参加者が選考されます。ただし、締切までの日数が短い地域もあるため、検討されている方は早めのお問い合わせをお勧めします。
Q5. 東京都以外に住んでいますが、どこに申し込めばいいですか?
A5. お住まいの道府県、または市町村の援護担当部署が窓口となります。「〇〇県 援護恩給」や「〇〇市 戦没者遺族 援護」などのキーワードで検索するか、県庁や市役所の代表電話にお問い合わせください。
まとめ:慰霊の旅への第一歩を
今回は、国が費用の一部を補助する「慰霊巡拝事業」について詳しく解説しました。
重要ポイントの再確認
- 国の補助あり: 参加費用の約3分の1が国から補助され、自己負担が軽減されます。
 - 幅広い遺族が対象: 配偶者や子だけでなく、孫、甥、姪まで幅広いご遺族が対象です。
 - 窓口は自治体: 申し込みや問い合わせは、お住まいの都道府県・市町村の援護担当部署です。
 - まずは問い合わせから: 参加を少しでもお考えなら、まずは管轄の窓口へ電話などで相談してみましょう。
 
戦後長い年月が経過し、ご遺族の皆様もご高齢になられていることと存じます。この事業は、長年胸に抱いてきた想いを遂げるための貴重な機会です。健康面での不安などもあるかと存じますが、看護師が同行するなどの配慮もなされています。まずは勇気を出して、お住まいの自治体の窓口に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。この記事が、皆様の慰霊の旅を実現する一助となれば幸いです。