2050年カーボンニュートラル実現に向け、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減、特にScope3排出量の削減が企業の重要課題となっています。この課題解決を強力に後押しするため、令和7年度から新たな補助金「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業」が開始されます。本事業は、最大15億円、補助率最大1/2という大規模な支援で、バリューチェーンを構成する企業間の連携による省CO2設備投資を促進します。この記事では、この注目の補助金の全貌をプロの視点から徹底解説します。
補助金の概要が一目でわかる早見表
項目 | 内容 |
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正式名称 | 令和7年度脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業) |
補助上限額 | 15億円(1事業者につき) |
補助率 | 中小企業: 1/2 中小企業以外: 1/3 (※特定条件で1/2) |
対象者 | バリューチェーンの脱炭素化を主導する「代表企業」と、その削減に貢献する「連携企業」(中小企業等が中心)による共同事業体 |
対象設備 | 現在の設備に対し30%以上の省CO2効果が見込める設備の導入(電化、燃料転換、高効率化、熱回収等) |
事業期間 | 最大3カ年 |
実施団体 | 一般社団法人地域循環共生社会連携協会 |
この補助金で実現できること
- サプライチェーン全体の競争力強化: 取引先の中小企業と共に脱炭素化を進め、バリューチェーン全体の付加価値を高めます。
- 大規模な設備投資の負担軽減: 最大15億円の支援により、これまで躊躇していた高額な省CO2設備への投資が可能になります。
- 企業の脱炭素経営を強力にアピール: 国のGX戦略に沿った先進的な取り組みとして、投資家や顧客からの評価向上に繋がります。
補助対象となる事業者と連携の要件
本補助金は、単独の企業ではなく、企業間の連携が必須要件です。対象となる事業者と、満たすべき連携要件を詳しく見ていきましょう。
対象となる事業者
補助金の交付を申請できるのは、以下の要件を満たす民間企業や団体です。
- 民間企業
- 独立行政法人
- 大学法人(国立・公立・学校法人)
- 社会福祉法人、医療法人
- 特別法の規定に基づく協同組合等
- 一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人
- 地方公共団体(民間企業等との共同申請の場合に限る)
最も重要な連携要件
申請にあたっては、以下の3つの連携要件をすべて満たす必要があります。
- CO2排出量削減の合意: 代表企業のScope3削減目標を踏まえ、代表企業と連携企業が、事業実施後の連携企業のCO2排出量について事前に合意していること。
- 複数企業との連携: 代表企業は、2者以上の連携企業と本事業の合意を締結すること。(少なくとも連携企業2者が設備導入を行うこと)
- GX率先実行宣言: 代表企業は、「GX率先実行宣言」を行っていること。
補助対象となる設備と経費
対象となる省CO2設備
補助対象となる設備は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 30%以上のCO2削減効果: 現在の設備構成と比較して、30%以上のCO2排出削減ができる設備の導入であること。
- 対象技術: 電化、燃料転換、高効率化、熱回収など。(※太陽光発電設備は対象外)
- 費用対効果: 事業者ごとの費用対効果が10万円/t-CO2以下であること。
- 投資回収年数: 事業者ごとの投資回収年数が3年以上であること。
補助対象経費の詳細
補助の対象となる経費は、事業を行うために直接必要な経費として幅広く認められています。
経費区分 | 内容 |
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工事費 | 本工事費(材料費、労務費、直接経費)、付帯工事費、機械器具費、測量及試験費など |
設備費 | 事業に必要な設備・機器の購入、運搬、据付け等に要する経費 |
業務費 | 機器やシステム等に係る調査、設計、製作、試験、検証に要する経費 |
事務費 | 事業に必要な事務に要する社会保険料、賃金、旅費、委託料、消耗品費など(上限あり) |
申請から交付までの流れ
本補助金の一般的な申請プロセスは以下の通りです。公募開始に向けて、早めの準備をお勧めします。
- 1公募開始・申請準備
公式サイトで公募要領を確認し、代表企業と連携企業間で事業計画を策定。必要書類を準備します。 - 2交付申請
原則として電子申請システムを利用し、交付申請書(様式第1)等を提出します。 - 3審査・交付決定
申請内容が審査され、採択されると交付決定通知書が送付されます。 - 4事業実施
交付決定後、計画に沿って設備の導入などの補助事業を開始します。 - 5実績報告
事業完了後、定められた期間内に完了実績報告書(様式第12)を提出します。 - 6額の確定・補助金交付
実績報告書が検査され、補助金額が確定。その後、請求に基づき補助金が支払われます。
まとめ:企業連携で脱炭素の未来を切り拓く
「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業」は、単なる設備投資支援に留まらず、サプライチェーン全体の脱炭素化と競争力強化を促す戦略的な補助金です。補助上限額が大きく、複数年度にわたる事業も可能なため、抜本的な変革を目指す企業にとって絶好の機会となります。
公募開始はこれからですが、連携企業の選定や事業計画の策定には時間がかかります。Scope3削減に課題を抱える企業様、取引先との連携強化を図りたい企業様は、今から準備を始めることを強くお勧めします。