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令和7年4月から、新たな雇用関係助成金「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」がスタートしました。これは、就職氷河期世代を含む35歳以上60歳未満の中高年層の正規雇用を後押しする制度です。この記事では、対象者や支給額、申請方法まで、事業主が知りたい情報を網羅的に解説します。
特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)とは?
「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」は、2025年(令和7年)4月1日に新設された制度です。従来の「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の対象を拡充し、より多くの中高年層の安定雇用を促進することを目的としています。
具体的には、就職の機会を逃したことなどにより十分なキャリア形成ができず、正規雇用での就職が困難な35歳以上60歳未満の方を、ハローワーク等の紹介を通じて正規雇用労働者として雇い入れた事業主に対して助成金が支給されます。人材不足に悩む企業にとって、採用コストを抑えつつ意欲のある人材を確保できる大きなチャンスです。
旧「就職氷河期世代安定雇用実現コース」との違い
主な変更点は対象者の年齢です。旧コースが特定の生年月日で区切られていたのに対し、新コースでは「雇入れ日時点で35歳以上60歳未満」と、より幅広い層が対象となりました。これにより、就職氷河期世代だけでなく、様々な理由でキャリアにブランクがある中高年層の雇用促進が期待されます。
助成金の支給要件
この助成金を受給するためには、「対象となる労働者」と「対象となる事業主」の両方が、それぞれ定められた要件を満たす必要があります。
対象となる労働者の主な要件
雇い入れる労働者が、以下のすべての要件に該当する必要があります。
- 年齢:雇入れ日時点で35歳以上60歳未満であること。
- 正規雇用経験(過去5年):雇入れ日の前日から過去5年間に、正規雇用労働者として雇用された期間が通算1年以下であること。
- 正規雇用経験(過去1年):雇入れ日の前日から過去1年間に、正規雇用労働者として雇用されたことがないこと。(※事業主都合の解雇等による離職の場合は対象となる場合があります)
- 現在の状況:ハローワーク等の紹介時点で安定した職業に就いておらず、かつ個別支援等の就労支援を受けていること。
- 本人の希望:正規雇用労働者として雇用されることを希望していること。
※正規雇用労働者とは:期間の定めのない労働契約で、週の所定労働時間が30時間以上あり、賞与や退職金などの待遇が正社員と同様である労働者を指します。
対象となる事業主の主な要件
事業主側も、以下の共通要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業主であること。
- 対象労働者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること。
- 対象労働者の雇入れ日の前後6ヶ月間に、事業主都合による従業員の解雇をしていないこと。
- 出勤簿や賃金台帳などの労働関係帳簿を整備・保管していること。
- 対象労働者が事業主や取締役の3親等以内の親族でないこと。
この他にも雇用関係助成金に共通する要件がありますので、詳細はパンフレットや管轄の労働局で必ず確認してください。
支給額はいくら?
助成金は、対象労働者1人あたり、企業規模に応じて以下の金額が支給されます。支給は6ヶ月ごとの2期に分けて行われます。
| 企業規模 | 第1期(6ヶ月) | 第2期(6ヶ月) | 支給総額(1年間) |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 30万円 | 30万円 | 60万円 |
| 大企業 | 25万円 | 25万円 | 50万円 |
※各期の支給額は、対象労働者に支払った賃金額が上限となります。
申請手続きの流れと申請期間
助成金を受給するための大まかな流れは以下の通りです。
- 求人の申込み:ハローワークや許可・届出のある民間職業紹介事業者に求人を申し込みます。
- 対象者の紹介・採用:ハローワーク等から対象要件を満たす求職者の紹介を受け、選考を経て正規雇用労働者として雇い入れます。
- 第1期 支給申請:雇入れ日から6ヶ月経過後、その翌日から2ヶ月以内に管轄の労働局へ第1期分の支給申請を行います。
- 第2期 支給申請:第1期支給対象期間の終了後、さらに6ヶ月経過後、その翌日から2ヶ月以内に第2期分の支給申請を行います。
申請期間は厳守です。1日でも過ぎると受理されないため、スケジュール管理には十分注意してください。
申請に必要な主な書類
申請には以下の書類が必要です。様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
- 特定求職者雇用開発助成金 支給申請書
- 支給要件確認申立書
- 対象労働者雇用状況等申立書
- 対象労働者の賃金台帳、出勤簿(またはタイムカード)の写し
- 雇用契約書(または労働条件通知書)の写し
- 対象者の年齢等が確認できる書類(運転免許証の写しなど)
この他にも、状況に応じて追加の書類が必要になる場合があります。
申請窓口と電子申請
申請書の提出先は、事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークです。郵送や持参のほか、電子申請(e-Gov)も利用可能で、手続きの効率化が図れます。
まとめ
「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」は、経験や意欲がありながらも正規雇用の機会に恵まれなかった中高年層の採用を強力に後押しする制度です。中小企業であれば最大60万円の助成が受けられ、採用コストの負担を大幅に軽減できます。
深刻化する人材不足への対策として、また、多様な人材が活躍できる職場づくりの一環として、本助成金の活用をぜひご検討ください。まずは、管轄の労働局やハローワークに相談してみましょう。