詳細情報
「仕事を辞めて収入が減り、もっと家賃の安いところに引っ越したいけど、初期費用が払えない…」「病気で離職し、家計を立て直すために転居が必要だけど、費用をどうしよう…」そんな悩みを抱えていませんか?
この記事で解説する「住居確保給付金(転居費用補助)」は、まさにそのような状況にある方々を支援するための公的な制度です。この制度は、離職や収入減少により経済的に困窮し、家計改善のために転居が必要な方に対して、引越しの初期費用などを補助するものです。家賃補助とは別に、転居そのものにかかる費用をサポートしてくれる心強い味方です。この記事では、制度の対象者や条件、支給額、申請方法まで、あなたが今すぐ行動できるよう、わかりやすく徹底的に解説します。
この記事のポイント
✓ 住居確保給付金(転居費用補助)の全体像がわかる
✓ 自分が対象者かどうか、具体的な収入・資産要件がわかる
✓ 補助の対象となる費用、ならない費用が明確になる
✓ 相談から申請、支給までの具体的な流れをステップで理解できる
住居確保給付金(転居費用補助)の概要
まずは、この制度がどのようなものなのか、基本的な情報を確認しましょう。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金(転居費用補助)」
- 根拠法: 生活困窮者自立支援法
- 国の管轄: 厚生労働省
- 実施組織・相談窓口: 全国の各市区町村および、市区町村が設置する「自立相談支援機関」
制度の目的・背景
この制度は、離職や収入の減少によって経済的に困窮し、現在の住居の家賃負担が重くなっている方や、住まいを失った方が、より家賃の安い住居へ移るなどして家計を立て直すことを支援するのが目的です。単に引越し費用を出すだけでなく、専門の支援員による「家計改善支援」とセットになっているのが大きな特徴です。これにより、安定した生活基盤を再構築することを目指します。
支給額・補助率について
支給される金額は、転居に実際にかかった費用のうち、対象となる経費の実費です。ただし、無制限ではなく、世帯人数や転居先の自治体によって上限額が定められています。
支給上限額の考え方
支給上限額は、原則として「転居先の自治体の住宅扶助基準額 × 3」となっています。住宅扶助基準額は、生活保護制度で定められている家賃の上限額で、地域や世帯人数によって異なります。そのため、どこに引っ越すかによって上限額が変わる点に注意が必要です。
支給上限額の具体例
自治体によって上限額は異なります。ここでは、いくつかの自治体の例を見てみましょう。(※最新の情報は必ず各自治体にご確認ください)
| 世帯人数 | 千葉県鎌ケ谷市の例 | 東京都中野区の例 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 159,000円 | 279,200円 |
| 2人世帯 | 171,000円 | 300,000円 |
| 3人世帯 | 186,000円 | 324,000円 |
このように、地域によって上限額に大きな差があることがわかります。ご自身の転居予定先の自治体の上限額を事前に確認することが重要です。
対象者・支給要件
この給付金を受けるためには、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。特に収入と資産の要件は重要ですので、詳しく見ていきましょう。
主な支給要件リスト
- 離職・廃業の日から2年以内、または個人の責任や都合によらない休業等で収入が著しく減少していること。
- 申請月において、世帯の生計を主として維持していること。
- 申請月の世帯収入合計額が、自治体の定める「収入基準額」以下であること。
- 申請日の世帯の金融資産合計額が、自治体の定める「資産上限額」以下であること。
- 自立相談支援機関の「家計改善支援」を受け、転居が家計の改善に必要であると認められること。
- 国や自治体から、類似の転居費用に関する給付を受けていないこと。
- 申請者および世帯員が暴力団員でないこと。
最重要ポイント:家計改善支援が必須
この制度を利用するための最大の鍵は、自立相談支援機関で「家計改善支援」を受けることです。専門の支援員と一緒に家計の状況を見直し、その上で「転居することが家計全体の改善に繋がる」と判断される必要があります。単に「引越したい」というだけでは利用できない点に注意してください。
収入・資産要件の具体例(神奈川県座間市の例)
収入と資産の基準額は自治体によって異なります。ここでは神奈川県座間市の例をご紹介します。ご自身の地域の基準は、必ずお住まいの自治体の相談窓口にご確認ください。
【収入要件】
世帯の月収合計額が「基準額+家賃額(上限あり)」以下であること。
| 世帯人数 | 基準額(A) | 家賃上限額(B) | 収入基準額(A+B) |
|---|---|---|---|
| 単身世帯 | 84,000円 | 41,000円 | 125,000円 |
| 2人世帯 | 130,000円 | 49,000円 | 179,000円 |
| 3人世帯 | 172,000円 | 53,000円 | 225,000円 |
【資産要件】
世帯の預貯金・現金の合計額が以下の金額以下であること。
| 世帯人数 | 金融資産上限額 |
|---|---|
| 単身世帯 | 504,000円 |
| 2人世帯 | 780,000円 |
| 3人世帯以上 | 1,000,000円 |
補助対象となる経費・ならない経費
何にでも使えるわけではなく、補助の対象となる経費は決まっています。事前にしっかり確認し、計画を立てましょう。
支給対象となる経費
- 転居先の住宅の初期費用: 礼金、仲介手数料、家賃債務保証料、住宅保険料など
- 家財の運搬費用: 引越し業者に支払う費用
- 原状回復費用: ハウスクリーニング代など(転居前・転居後の両方を含む)
- 鍵交換費用
支給対象とならない経費
- 敷金: 退去時に返還される可能性があるため対象外です。
- 契約時に支払う家賃(前家賃): これは家賃そのものであり、転居費用とは見なされません。
- 家財や設備の購入費: エアコン、照明、カーテンなどの購入費用は対象外です。
申請方法・手順
申請は、いきなり書類を提出するのではなく、まず相談から始まります。時間に余裕をもって進めることが大切です。
注意:相談から支給まで数ヶ月かかることも
多くの自治体で、相談を開始してから家計改善支援、物件探し、申請、審査を経て、実際に給付金が振り込まれるまで1ヶ月~数ヶ月程度かかると案内されています。転居を急いでいる場合でも、まずは早めに相談窓口に連絡することが重要です。
Step 1: 自立相談支援機関への相談
まずはお住まいの地域の「自立相談支援機関」に電話などで連絡し、相談の予約をします。生活の困りごと全般について相談できる窓口です。
Step 2: 家計改善支援の開始
支援員と面談し、収入や支出の状況を共有します。支援計画(プラン)を作成し、家計の見直しを始めます。この過程で、転居が家計改善に有効かどうかを一緒に検討します。
Step 3: 転居が必要であることの証明
家計改善支援の結果、転居が必要だと判断されると、支援機関から「住居確保給付金要転居証明書」といった書類が発行されます。これが申請に必須となります。
Step 4: 転居先の物件探しと入居申し込み
支援員と相談しながら、家計に見合った物件を探します。入居したい物件が決まったら、不動産会社に申し込みます。
Step 5: 申請書類の準備と提出
必要書類を揃えて、自立相談支援機関に提出します。不動産会社に記入してもらう書類もあるため、早めに依頼しましょう。
Step 6: 審査と支給決定
自治体で書類の審査が行われ、支給が決定されると通知が届きます。
Step 7: 給付金の支給
原則として、自治体から不動産会社や引越し業者などの口座へ直接振り込まれます(代理納付)。
主な必要書類リスト
- 住居確保給付金支給申請書(窓口で受け取ります)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 離職や収入減少が確認できる書類(離職票、給与明細書など)
- 世帯全員の収入が確認できる書類(直近の給与明細書、年金通知書など)
- 世帯全員の金融資産が確認できる書類(すべての預貯金通帳の写しなど)
- 住居確保給付金要転居証明書(支援機関が発行)
- 入居予定住宅に関する状況通知書(不動産会社が記入)
- 転居費用の見積書(引越し業者など)
※自治体や個人の状況によって必要書類は異なります。必ず担当の支援員にご確認ください。
採択のポイントと注意点
審査で重視されること
この制度は、要件を満たせば基本的に支給されますが、審査の核となるのは「転居によって、本当に家計が改善し、生活の自立に繋がるか」という点です。支援員との面談では、現在の状況や今後の見通しについて誠実に伝えることが大切です。家計改善への意欲を示すことが、スムーズな支援に繋がります。
よくある不採択・注意すべき理由
- 収入・資産要件オーバー: 申請月の収入や申請日の資産が基準額をわずかでも超えていると対象外になります。
- 家計改善が見込めない: 転居しても家計全体の支出が減らない、あるいは改善の見込みが立たないと判断された場合。
- 書類の不備: 必要書類が揃っていなかったり、内容に矛盾があったりする場合。
- 相談機関との連携不足: 支援員との約束を守らない、連絡が取れないなど、支援関係が築けない場合。
よくある質問(FAQ)
Q1. 転居先の家賃が今より高くなっても対象になりますか?
A1. はい、可能性があります。例えば、職場や病院の近くに引っ越すことで交通費が大幅に削減されるなど、家賃は上がっても家計全体の支出が減ると認められれば対象になる場合があります。
Q2. どこに相談すればいいですか?
A2. お住まいの市区町村の「自立相談支援機関」が窓口です。場所がわからない場合は、市役所や区役所の福祉担当課に問い合わせるか、厚生労働省のウェブサイト「生活支援特設ホームページ」で全国の窓口一覧を確認できます。
Q3. 貯金が全くなくても申請できますか?
A3. はい、資産要件は上限額を定めているものなので、貯金がなくても問題ありません。むしろ、経済的に困窮している方が対象の制度です。
Q4. 過去に利用したことがあっても、再度申請できますか?
A4. はい、再支給の制度があります。前回の支給が終了してから1年以上経過しており、再び離職などにより収入が著しく減少した場合など、一定の要件を満たせば再度申請できる可能性があります。詳しくは相談窓口にご確認ください。
Q5. 支給方法は現金手渡しですか?
A5. いいえ、原則として自治体から不動産会社や引越し業者へ直接振り込まれます。申請者本人が現金を受け取ることは基本的にありません。
まとめ:まずは一歩、相談から始めよう
住居確保給付金(転居費用補助)は、経済的な困難から抜け出し、生活を再建するための重要なセーフティネットです。要件はいくつかありますが、一人で悩まずに専門家のサポートを受けられるのがこの制度の大きなメリットです。
重要ポイントの再確認
✓ 離職や収入減で困窮し、転居で家計改善が見込める方が対象
✓ 収入と資産に上限額がある(自治体により異なる)
✓ 礼金や仲介手数料、運搬費などが対象(敷金・前家賃は対象外)
✓ 申請の前に「自立相談支援機関」での家計改善支援が必須
もしあなたが「自分も対象かもしれない」と感じたら、ためらわずに、まずはお住まいの地域の自立相談支援機関に電話をしてみてください。専門の支援員が、あなたの状況に寄り添って、最適な解決策を一緒に考えてくれます。その一歩が、あなたの新しい生活の始まりになるかもしれません。