この記事のポイント

  • 国が実施する戦没者遺族等への援護制度(特別弔慰金・特別給付金など)を網羅的に解説。
  • 第十二回特別弔慰金令和10年3月31日まで申請受付中。
  • 戦没者の妻や父母等を対象とした各種特別給付金の対象者や支給内容を詳しく紹介。
  • 申請窓口は原則としてお住まいの市区町村の援護担当課
  • ご自身やご家族が対象かもしれない方は、この記事で制度の概要を確認し、お早めに窓口へご相談ください。

国が実施する戦没者遺族等への援護制度とは?

先の大戦で国のために殉じられた戦没者や、公務により傷病にかかった戦傷病者、そしてそのご遺族に対し、国は国家補償の精神に基づき様々な援護制度を設けています。これらの制度は、戦没者等の尊い犠牲に報い、ご遺族の精神的な痛苦を慰藉し、生活を支えることを目的としています。

厚生労働省が中心となり、主に以下の法律に基づいて援護が行われています。

  • 戦傷病者戦没者遺族等援護法:障害年金や遺族年金などを支給
  • 戦傷病者特別援護法:療養の給付や補装具の支給など
  • 各種特別給付金支給法・特別弔慰金支給法:特別な機会に弔慰の意を表すための給付

この記事では、特に現在申請が可能な「特別弔慰金」や「特別給付金」を中心に、各制度の対象者、支給内容、申請方法などを分かりやすく解説します。

【令和10年3月31日まで】第十二回特別弔慰金

現在、「第十二回特別弔慰金」の請求受付が行われています。これは、戦後80年という節目の機会に、国として改めて弔慰の意を表すために支給されるものです。

支給対象者(誰がもらえる?)

戦没者等の死亡当時のご遺族で、令和7年4月1日(基準日)において、公務扶助料や遺族年金などを受ける権利を持つ方(戦没者の妻や父母等)がいない場合に、以下の順番で最先順位のご遺族お一人に支給されます。

  1. 弔慰金の受給権を取得した方
  2. 戦没者等の子
  3. 戦没者等の ①父母 → ②孫 → ③祖父母 → ④兄弟姉妹
  4. ※生計関係等の要件により順位が変動する場合があります。

  5. 上記以外の三親等内の親族(甥、姪など)
  6. ※戦没者の死亡時まで1年以上生計関係があった方に限ります。

支給内容と金額

支給は現金ではなく、国債で行われます。

  • 額面27.5万円、5年償還の記名国債

申請期間と注意点

請求期間は令和7年4月1日から令和10年3月31日までの3年間です。

この期間を過ぎると時効により権利が消滅し、受給できなくなりますので、対象となる可能性のある方は絶対にお忘れなく手続きを行ってください。

戦没者等の妻・父母等への特別給付金

特別弔慰金とは別に、戦没者等の妻や父母などが抱えてこられた精神的痛苦を慰藉するために、各種の特別給付金が支給されています。これらは過去の受給歴などによって対象となる給付金が異なります。

戦没者等の妻に対する特別給付金

一心同体である夫を失った精神的痛苦と、その後の経済的困難に対して国が慰藉を行うものです。現在、主に以下の給付金の請求が受け付けられています。

給付金名称 支給内容 請求期間
第三十回特別給付金 い号 額面110万円 (5年償還) 令和8年3月31日まで
第三十回特別給付金 ろ号 額面110万円 (5年償還) 令和9年3月31日まで
第三十回特別給付金 は号 額面110万円 (5年償還) 令和10年3月31日まで
第二十七回特別給付金 ち号 等 額面200万円 (10年償還) 令和7年9月30日まで

※対象者は、各基準日において公務扶助料や遺族年金等を受給している妻の方で、過去の給付金受給歴によって対象となる号数が異なります。詳しくは窓口でご確認ください。

戦傷病者等の妻に対する特別給付金

公務上の傷病により障害を持つ夫の看護や家庭維持のために払ってきた精神的痛苦を慰藉するために支給されます。基準日において障害年金等を受けている戦傷病者の妻が対象です。

戦没者の父母等に対する特別給付金

子や孫を亡くし、子孫が絶えてしまった父母等に対して、国が慰藉するために支給されるものです。こちらも受給には詳細な要件があります。

その他の援護制度(年金・療養給付など)

上記の弔慰金・給付金のほかにも、恒久的な援護として以下のような制度があります。

  • 障害年金・障害一時金:軍人軍属等であった本人が公務上の傷病により障害の状態になった場合に支給。
  • 遺族年金・遺族給与金:軍人軍属等が公務上の傷病で死亡した場合に、生計を共にしていた遺族に支給。
  • 弔慰金:公務上の傷病で死亡した者の遺族(三親等以内)に支給される5万円の記名国債。
  • 療養の給付・療養手当:戦傷病者手帳の交付を受けた方が、指定医療機関で治療を受けたり、長期入院したりする場合の給付・手当。

申請手続きの共通事項

申請窓口はどこ?

これらの援護制度に関する請求は、原則としてお住まいの市区町村の援護担当課(福祉課、社会福祉課など名称は自治体により異なります)が窓口となります。

必要書類の基本

制度によって異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。

  • 請求書(窓口で配布)
  • 請求者の戸籍抄本(基準日以降に発行されたもの)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、介護保険被保険者証など)
  • 印鑑(制度により不要な場合もあり)

請求者の状況(戦没者との続柄など)によって追加で書類が必要になるケースが多いため、必ず事前に電話などで市区町村の担当課に問い合わせ、必要なものを確認してから窓口に行くことをお勧めします。

よくある質問(Q&A)

Q1. 自分が対象者かどうかわかりません。どこに相談すればよいですか?

A1. まずは、お住まいの市区町村の援護担当課にご相談ください。ご親族の状況などを伝えることで、対象となる制度があるか確認してもらえます。

Q2. 申請期間を過ぎてしまいました。もう申請できませんか?

A2. 特別弔慰金や特別給付金は、請求期間を過ぎると時効によって権利が消滅してしまいます。残念ながら、期間後の申請はできません。そのため、期間内の手続きが非常に重要です。

Q3. 給付金や弔慰金は現金で受け取れますか?

A3. いいえ、これらの給付は「記名国債」という形で支給されます。国債は、請求時に指定した郵便局などで、定められた償還日以降に現金化することができます。口座への自動振込みも可能です。

まとめ

戦没者遺族等への援護制度は、対象となる方々の長年のご苦労に報いるための重要な制度です。しかし、その内容は複雑で、ご自身が対象であることに気づいていないケースも少なくありません。

特に「第十二回特別弔慰金」は令和10年3月31日が申請期限と迫っています。この記事を読んで「もしかしたら?」と思われた方は、決して諦めずに、まずはお住まいの市区町村役場の援護担当課へお問い合わせください。ご自身やご家族が正当な権利を行使できるよう、早めの行動を心がけましょう。