詳細情報
「一人で外出するのが不安…」「もっと気軽に買い物やイベントに出かけたい」そんなお悩みをお持ちの障害のある方や、そのご家族の方へ。お住まいの市区町村が実施する「移動支援事業」をご存知でしょうか?この制度は、屋外での移動に困難がある障害者(児)が、ヘルパーの付き添いのもとで安心して外出できるようサポートする公的な福祉サービスです。社会生活に必要な手続きから、休日のレクリエーションまで、あなたの「行きたい」を力強く後押しします。この記事では、移動支援事業の詳しいサービス内容、対象となる方、利用者負担の仕組み、そして申請から利用開始までの流れを、誰にでも分かりやすく徹底的に解説します。この制度を活用して、あなたの行動範囲を広げ、より豊かな毎日を送るための一歩を踏み出しましょう。
この記事のポイント
- 移動支援事業は、障害者(児)の社会参加を目的とした外出支援サービスであること
- 対象者や利用できる外出の種類、利用者負担額がわかる
- 申請からサービス利用開始までの具体的なステップが理解できる
- 自治体によって内容が異なるため、お住まいの市区町村への確認が重要であること
① 移動支援事業の概要
制度の正式名称と実施組織
この制度の正式名称は「移動支援事業」です。障害者総合支援法に基づく「地域生活支援事業」の一つとして位置づけられており、事業の実施主体は、利用者がお住まいの市区町村となります。そのため、具体的なサービス内容や対象者の要件、利用者負担額などは、各市区町村によって異なる場合があります。
目的・背景
移動支援事業の主な目的は、屋外での移動に困難を抱える障害者(児)の外出を支援することにより、地域での自立した生活と積極的な社会参加を促進することです。一人では難しい外出も、ガイドヘルパーが同行することで安全・安心に移動でき、生活の質(QOL)の向上や活動範囲の拡大を図ります。これにより、障害のある方が地域社会から孤立することなく、主体的に社会と関わっていくことを目指しています。
② 利用者負担(料金)について
移動支援事業は、助成金のように現金が支給されるものではなく、サービスを利用した際に発生する費用の一部を負担する仕組みです。利用者負担額は、国が定める基準を基に、各市区町村が設定しています。
利用者負担の原則と上限額
原則として、サービスにかかった費用の1割が利用者負担となります。ただし、家計への負担が重くなりすぎないよう、世帯の所得(住民税の課税状況)に応じて、1ヶ月あたりの負担上限額が定められています。上限額を超えて支払う必要はありません。
重要:ヘルパーの交通費や、外出先での施設入場料、飲食代などは、原則として全額利用者負担となります。
利用者負担上限月額の例
以下は、一般的な利用者負担の上限月額の区分です。お住まいの市区町村によって金額が異なる場合がありますので、必ずご確認ください。
| 世帯の所得区分 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円(※) |
| 上記以外(所得割16万円以上) | 37,200円 |
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除きます。また、自治体によっては独自の軽減措置(例:中央区では4,600円)を設けている場合があります。
③ 対象者・条件
移動支援事業の対象となるのは、屋外での移動に著しい制限があり、社会生活上、外出時に支援が必要であると市区町村が認めた方です。具体的な対象者は自治体ごとに定められていますが、一般的には以下のような方が該当します。
- 視覚障害者(児)
- 知的障害者(児)
- 精神障害者(一人での外出に困難のある方)
- 全身性障害者(児)(例:身体障害者手帳1級で、両上下肢に機能障害のある方など)
- 高次脳機能障害者
- 難病患者等
- その他、市区町村が個別に必要と認めた方
注意点:重度訪問介護、行動援護、同行援護といった他の障害福祉サービスを受給している場合、移動支援事業の対象外となることがあります。どのサービスが最適か、窓口で相談しましょう。
④ 対象となるサービス内容(外出の種類)
移動支援事業で利用できる外出は、大きく分けて2つの種類があります。自治体によっては、1ヶ月あたりの利用時間の上限が種類ごとに定められている場合があります。
対象となる外出の例
- 社会生活上必要不可欠な外出
- 行政機関や金融機関での手続き
- 生活必需品の買い物
- 公的行事への参加
- 冠婚葬祭への出席
- 余暇活動等社会参加のための外出
- 映画鑑賞、コンサート、スポーツ観戦
- 外食、ショッピング
- 地域のイベントやサークル活動への参加
- 散歩や公園でのレクリエーション
対象外となる外出の例
一方で、以下の目的での外出は原則として移動支援の対象外となります。
- 通院(※通院等乗降介助など、他のサービスを利用します)
- 通勤、営業活動など経済活動にかかわる外出
- 通年かつ長期にわたる外出(定期的な習い事など)
- 通学・通所(※ただし、保護者の疾病など緊急的な理由で、自治体が特に認めた場合は一時的に利用できることがあります)
- 政治活動や宗教の布教活動
- 宿泊を伴う長時間の外出
⑤ 申請方法・利用までの手順
移動支援事業を利用するためには、お住まいの市区町村への申請が必要です。以下に一般的な利用開始までの流れを解説します。
- ステップ1:相談
まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業者に相談します。どのような外出に困っているか、どのくらいの頻度で利用したいかなどを伝えましょう。 - ステップ2:申請
窓口で「支給申請書」などの必要書類を受け取り、記入して提出します。申請時には障害者手帳や本人確認書類などが必要になることが多いです。 - ステップ3:聞き取り調査(アセスメント)
市の担当者が、ご本人やご家族から心身の状況や生活環境、サービスの利用希望などについて詳しくお話を伺います。 - ステップ4:支給決定・受給者証の交付
調査内容を基に審査が行われ、サービスの支給が適切と判断されると「支給決定通知書」と「受給者証」が交付されます。受給者証には、1ヶ月に利用できる時間数などが記載されています。 - ステップ5:サービス提供事業者との契約
市区町村から提供される事業者一覧を参考に、利用したいサービス提供事業者を選びます。受給者証を提示して事業者と契約を結びます。 - ステップ6:サービス利用開始
事業者と具体的な利用日時などを調整し、サービスの利用を開始します。
必要書類の例
- 地域生活支援事業支給申請書(窓口で配布)
- 障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 印鑑
- その他、市区町村が必要と認める書類(例:保護者の就労証明書、通学状況がわかる書類など)
⑥ 支給決定のポイント
移動支援事業は、申請すれば誰でも無制限に利用できるわけではありません。申請後の聞き取り調査で、サービスの必要性をきちんと伝えることが重要です。
- 具体的な困りごとを伝える:「一人で外出するのが不安」というだけでなく、「信号の色が判別しづらい」「人混みでパニックになってしまう」「段差のある場所で移動ができない」など、具体的にどのような場面で、どのような支援が必要かを伝えましょう。
- 利用目的を明確にする:「社会参加のために地域のイベントに行きたい」「生活必需品の買い物を自分でしたい」など、サービスを利用して何を実現したいのかを明確にすることが、必要性の判断につながります。
- 正直に状況を話す:現在の生活状況や、家族の支援体制なども含めて、ありのままの状況を伝えることが大切です。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 病院への通院に利用できますか?
A1. 原則として、通院には利用できません。通院時の介助が必要な場合は、障害福祉サービスの「居宅介護(通院等介助)」や、自治体独自の福祉タクシー券などの利用をご検討ください。どのサービスが利用できるか、窓口で相談してみましょう。
Q2. ヘルパーさんに自家用車で送迎してもらうことはできますか?
A2. ヘルパーが運転する自家用車での移動(いわゆる「福祉有償運送」)は、道路運送法に基づく許可を受けた事業者でなければ行えません。移動支援のサービス提供事業者がこの許可を得ているかによります。原則は、徒歩または公共交通機関を利用した移動の支援となります。
Q3. 支給決定された時間数を使い切れませんでした。翌月に繰り越せますか?
A3. いいえ、繰り越しはできません。支給時間は月単位で管理されており、その月の末日でリセットされます。
Q4. 急な外出でも利用できますか?
A4. 利用にはサービス提供事業者との契約と、ヘルパーのスケジュール調整が必要です。そのため、基本的には事前の予約が必要となります。事業所によっては緊急対応が可能な場合もありますが、まずは契約している事業所に相談してみてください。
Q5. どの事業者を選べばいいかわかりません。
A5. 市区町村の窓口で、移動支援事業の登録事業者一覧をもらうことができます。また、相談支援事業所の相談支援専門員に相談すれば、ご自身の希望や状況に合った事業所探しを手伝ってもらえます。
⑧ まとめと次のアクション
今回は、障害のある方の外出をサポートする「移動支援事業」について詳しく解説しました。
本記事の重要ポイント
- 移動支援は、市区町村が実施する障害者(児)向けの外出サポートサービス。
- 買い物や手続きなどの必要な外出から、レジャーなどの社会参加のための外出まで幅広く利用可能。
- 利用者負担は原則1割で、所得に応じた月額上限がある(非課税世帯は0円)。
- 利用するには市区町村への申請と支給決定が必要。
- サービス内容は自治体ごとに異なるため、必ずお住まいの地域の窓口への確認が不可欠。
もし、あなたがこの制度の対象になるかもしれない、あるいは利用を検討してみたいと思われたなら、最初の一歩として、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に電話で問い合わせてみましょう。「移動支援事業について知りたいのですが」と伝えるだけで大丈夫です。専門の職員が、あなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれます。
この制度を活用し、これまで諦めていた場所へ出かけたり、新しい活動にチャレンジしたりすることで、あなたの世界はもっと広がります。ぜひ、積極的に情報を集め、利用を検討してみてください。