詳細情報
近年、企業の規模を問わずサイバー攻撃の脅威は増大しており、特にセキュリティ対策にリソースを割きにくい中小企業が標的となるケースが後を絶ちません。重要な顧客情報や技術情報が漏洩すれば、事業継続に深刻な影響を及ぼしかねません。そんな中、中小企業・小規模事業者の強力な味方となるのが「IT導入補助金2025 セキュリティ対策推進枠」です。この制度を活用すれば、専門的なサイバーセキュリティサービスの導入費用として最大150万円の補助を受けることが可能です。この記事では、制度の概要から申請方法、採択されるためのポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく徹底解説します。自社のセキュリティを強化し、安心して事業に集中できる環境を整えるため、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
- IT導入補助金セキュリティ対策推進枠の目的や概要がわかる
- 補助金額、補助率、対象経費の具体的な内容がわかる
- 申請から補助金交付までの具体的なステップがわかる
- 採択率を上げるための重要なポイントがわかる
IT導入補助金2025「セキュリティ対策推進枠」とは?制度の全体像を解説
まずは、この補助金がどのような制度なのか、基本的な情報から押さえていきましょう。
制度の目的と背景
IT導入補助金「セキュリティ対策推進枠」は、中小企業・小規模事業者がサイバー攻撃の脅威に対処し、事業を安定して継続できるように支援することを目的としています。ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)や不正アクセスといったサイバーインシデントは、企業の生産性を著しく低下させるだけでなく、サプライチェーン全体に影響を及ぼすリスクもはらんでいます。この補助金は、専門的なセキュリティサービスを導入する際の経済的負担を軽減し、日本全体のセキュリティレベル向上を目指すものです。
実施組織と公式サイト
この事業は、経済産業省・中小企業庁の監督のもと、独立行政法人中小企業基盤整備機構(SMRJ)が事務局を運営しています。最新の情報や公募要領は、必ず公式サイトで確認するようにしてください。
- 実施組織: 経済産業省 中小企業庁 / 独立行政法人中小企業基盤整備機構(SMRJ)
- 公式サイト: IT導入補助金2025 セキュリティ対策推進枠
補助金額はいくら?補助率と計算例をわかりやすく
最も気になる補助金額と補助率について、具体的に見ていきましょう。事業者の規模によって補助率が異なる点がポイントです。
補助率と補助額の上限・下限
補助率は、中小企業と小規模事業者で異なります。補助額は、5万円以上150万円以下の範囲で申請可能です。
| 事業者区分 | 補助率 |
|---|---|
| 中小企業 | 1/2以内 |
| 小規模事業者 | 2/3以内 |
具体的な計算例
実際にどのくらいの補助が受けられるのか、例を見てみましょう。
【例1】小規模事業者が年間60万円(2年で120万円)のセキュリティサービスを導入する場合
- 補助対象経費:120万円
- 補助率:2/3
- 計算:120万円 × 2/3 = 80万円
- 補助額:80万円(自己負担額:40万円)
【例2】中小企業が年間180万円(2年で360万円)のセキュリティサービスを導入する場合
- 補助対象経費:360万円
- 補助率:1/2
- 計算:360万円 × 1/2 = 180万円
- 補助額:150万円(上限額が適用。自己負担額:210万円)
あなたの会社は対象?申請できる事業者と条件をチェック
この補助金は、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者が対象です。自社が該当するか、以下の定義で確認しましょう。
中小企業・小規模事業者の定義
業種ごとに資本金または従業員数のどちらかを満たせば対象となります。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常勤の従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
| その他の業種(上記以外) | 3億円以下 | 300人以下 |
また、小規模事業者は常勤の従業員数が以下の基準を満たす事業者です。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
- 製造業その他:20人以下
何に使える?補助対象となるセキュリティサービスを徹底解説
この補助金では、どんなセキュリティ対策でも対象になるわけではありません。対象となるのは、特定のサービスリストに掲載されているものに限られます。
対象は「サイバーセキュリティお助け隊サービス」
補助の対象となるのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスの利用料(最大2年分)です。このリストに載っているサービスの中から、自社に合ったものを選ぶことになります。
サービスリストはIPAの公式サイトで確認できます。
サイバーセキュリティお助け隊サービスリストはこちら
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」とは?
これは、中小企業が安価で手軽に基本的なセキュリティ対策を導入できるよう、IPAが定めた基準を満たすサービス群です。一般的に、以下の機能がパッケージ化されています。
- 監視:ネットワーク機器やPCを監視し、サイバー攻撃の兆候を検知・通知します。
- 緊急時対応支援:インシデント発生時に、電話や駆けつけによる原因究明や復旧支援を行います。
- 簡易保険:ウイルス駆除やデータ復旧費用、損害賠償などを補償する保険が付帯しています。
- その他:セキュリティに関する相談窓口や簡易診断などのサービスが含まれることもあります。
対象外となる経費
以下の費用は補助対象外となるため注意が必要です。
- PC、サーバー、ルーターなどのハードウェア購入費用
- 単体のウイルス対策ソフトなど、お助け隊サービスに含まれないソフトウェア
- コンサルティング費用や社内研修費用
- 補助金の交付決定前に行った契約・支払い
申請から交付までの完全ガイド|5つのステップで解説
IT導入補助金の申請は、事業者単独では行えず、「IT導入支援事業者」と共同で進める必要があります。全体の流れをステップごとに見ていきましょう。
STEP1: gBizIDプライムアカウントの取得
申請は電子申請システム「Jグランツ」を利用するため、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。取得には2〜3週間程度かかる場合があるため、早めに手続きを始めましょう。
STEP2: IT導入支援事業者の選定とITツールの選択
公式サイトでIT導入支援事業者を検索し、自社の課題に合った「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を提供している事業者を選定します。事業者と相談しながら、導入するサービスを決定します。
STEP3: 交付申請
IT導入支援事業者が申請のマイページを作成します。その後、申請者(中小企業・小規模事業者)がマイページにログインし、必要な情報を入力して申請を完了させます。事業計画の策定などは支援事業者と協力して行います。
STEP4: ITツールの発注・契約・支払い
事務局から「交付決定」の通知を受けた後に、ITツールの発注、契約、支払いを行います。交付決定前にこれらを行うと補助対象外になるため、絶対に注意してください。
STEP5: 事業実績報告と補助金交付
実際にサービスを導入し、支払いが完了したら、IT導入支援事業者を通じて事業実績報告を行います。報告内容が審査され、補助金額が確定すると、指定の口座に補助金が振り込まれます。
申請スケジュール(2025年度版)
2025年度のスケジュールは複数回に分けて公募されます。以下は一例です。乗り遅れないよう、公式サイトで最新の締切日を必ず確認しましょう。
| 項目 | 日付(7次締切分の例) |
|---|---|
| 申請締切日 | 2025年12月2日(火)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年1月20日(火)(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定日~2026年7月31日(金)17:00(予定) |
| 事業実績報告期限 | 2026年7月31日(金)17:00(予定) |
採択率アップの秘訣!審査で評価されるポイントと注意点
せっかく申請するなら、採択されたいものです。審査で重視されるポイントと、よくある失敗例を知っておきましょう。
審査のポイント
- 自社の経営課題の明確化:なぜセキュリティ対策が必要なのか、現状の課題は何かを具体的に説明できることが重要です。
- 導入効果の具体性:導入するサービスによって、どのようにセキュリティが向上し、事業リスクが低減するのかを論理的に示す必要があります。
- 事業計画の妥当性:導入スケジュールや資金計画に無理がないか、実現可能性が高い計画であることが求められます。
よくある不採択理由
不採択となるケースには共通点があります。以下の点に注意しましょう。
- 申請内容の不備(誤字脱字、添付書類の漏れなど)
- 補助対象外の経費を含めて申請している
- 交付決定前に発注・契約・支払いを行ってしまった(フライング)
- 事業計画の内容が抽象的で、セキュリティ対策の必要性が伝わらない
IT導入支援事業者との連携がカギ
この補助金は、IT導入支援事業者との二人三脚で進めます。そのため、信頼できるパートナーを選ぶことが採択への近道です。複数の事業者と面談し、自社の状況をよく理解し、親身にサポートしてくれる事業者を選びましょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、申請を検討する事業者からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 補助金はいつ振り込まれますか?
A1. 補助金は精算払いです。サービス導入と支払いを完了させた後、事業実績報告を行い、その内容が確定してから振り込まれます。そのため、一時的に費用を全額立て替える必要があります。
Q2. 過去にIT導入補助金の他の枠(通常枠など)を利用していても申請できますか?
A2. はい、申請可能です。セキュリティ対策推進枠は、他の枠とは別で申請することができます。ただし、同一事業での複数枠の申請はできない場合があるため、詳細は公募要領をご確認ください。
Q3. 申請は自社だけでできますか?IT導入支援事業者とは何ですか?
A3. 申請は事業者単独ではできず、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と共同で行う必要があります。IT導入支援事業者は、補助金対象となるITツールの提供、申請手続きのサポート、事業計画の策定支援などを行うパートナーです。
Q4. 2年分の利用料とありますが、1年分だけでも申請できますか?
A4. はい、1年分の利用料でも申請は可能です。ただし、補助額の下限が5万円であるため、補助額が5万円以上になるようにサービス利用料を計算する必要があります。
Q5. 東京都の「サイバーセキュリティ対策促進助成金」との違いは何ですか?
A5. IT導入補助金は国が実施する全国対象の制度で、対象経費が「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用料に限定されます。一方、東京都の助成金は都内事業者が対象で、UTMなどの機器購入費やサーバーOSの更新費用など、より幅広い経費が対象となる点が大きな違いです。両方の要件を満たす場合は、どちらが自社にとって有利か比較検討すると良いでしょう。
まとめ:今すぐ行動を!IT導入補助金で安全な経営環境を構築しよう
この記事では、IT導入補助金2025「セキュリティ対策推進枠」について詳しく解説しました。サイバーセキュリティ対策は、もはやコストではなく、事業を守るための「投資」です。この補助金を活用することで、その投資負担を大幅に軽減できます。
重要ポイントの再確認
- 対象:全国の中小企業・小規模事業者
- 補助額:最大150万円(補助率 中小企業1/2, 小規模事業者2/3)
- 対象経費:「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用料(最大2年分)
- 申請方法:IT導入支援事業者と共同で電子申請
- 注意点:GビズIDの事前取得と、交付決定後の契約・支払いを徹底すること
まずは公式サイトで最新情報を確認し、信頼できるIT導入支援事業者を探すところから始めてみましょう。この機会を逃さず、自社のセキュリティ体制を盤石なものにし、未来の成長に向けた一歩を踏み出してください。