東京都中小企業制度融資を徹底解説!金利優遇や保証料補助も
「新しい機械を導入したいが、自己資金だけでは足りない」
「創業したいが、金融機関の審査が不安だ」
「最近の物価高騰で、運転資金のやり繰りが厳しい」
こうした資金繰りの課題を抱える、東京都内の中小企業経営者や個人事業主の方に朗報です。
東京都が提供する「東京都中小企業制度融資」は、事業の成長や経営の安定に必要な資金を調達するための強力な選択肢です。
ここで一つ、非常に重要な点があります。本制度は、返済不要の「補助金(hojokin)」や「助成金(joseikin)」とは異なります。その名の通り、元本の返済義務がある「融資(yuushi)=ローン」制度です。
「なんだ、結局は借金か」とがっかりする必要はありません。本制度が単なるローンと一線を画すのは、東京都や各区市町村が「金利(利子)」や「信用保証料」の負担を補助してくれる、強力な”補助金的”メリットが組み込まれている点です。
本記事では、この「東京都中小企業制度融資」を最大限に活用し、実質的なコストを抑えて資金調達を成功させるための方法を徹底解説します。申請の「コツ」から、日本政策金融公庫との違い、そして最も重要な「上乗せ補助」を受けるためのフローまで、専門家の視点で詳しくご案内します。
「東京都中小企業制度融資」とは
本制度は、東京都内の中小企業者が金融機関から融資を受けやすくすることを目的に、東京都が「東京信用保証協会」および「指定金融機関」と協調して提供する融資プログラムです。
最大の特徴は、返済義務のない「補助金」ではありませんが、融資を受ける際にかかる「信用保証料」や「利息」の一部を、東京都や事業所所在地の区市町村が補助(肩代わり)してくれる点にあります。この仕組みにより、事業者は通常のプロパー融資や他のローンに比べて、圧倒的に低いコストで事業資金を調達することが可能になります。
| 東京都中小企業制度融資の概要 | |
|---|---|
| 主催機関 | 東京都(産業労働局) ※ 実際の運営は「東京都」「東京信用保証協会」「指定金融機関」の三者協調 |
| 融資限度額 | 最高 2億8,000万円(利用する融資メニューによります) 例:創業融資は3,500万円 |
| 補助内容 | 1. 信用保証料の補助(東京都が最大4/5などを補助) 2. 利子補給(金利優遇)(各区市町村が独自に上乗せ補助) |
| 申請期間 | 原則として通年(随時受付) ※ ただし、物価高騰対策などの緊急メニューは期限が設定される場合があります。 |
対象となる事業者・事業
本制度は、都内の中小企業者や個人事業主を幅広くサポートするために、多様な「融資メニュー」を用意しています。自社の状況や目的に合ったメニューを選ぶことが第一歩です。
対象となる事業者
原則として、東京都内に事業所(本店または支店)があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営む以下の方が対象です。
✅ 中小企業者(法人・株式会社、合同会社など)
✅ 個人事業主(フリーランス含む)
✅ NPO法人、一般社団法人など(対象となる場合あり)
特に「小規模企業者」は、保証料補助などで優遇されるため重要です。
| 区分 | 業種 | 定義(いずれかを満たす) |
|---|---|---|
| 中小企業者 | 製造業・その他 | 資本金3億円以下 または 従業員300人以下 |
| 卸売業・小売業・サービス業 | 資本金1億円〜5,000万円以下 または 従業員100人〜50人以下 | |
| 小規模企業者 (優遇あり) |
製造業・その他 | 従業員20人以下 |
| 商業・サービス業 | 従業員5人以下 |
対象となる事業(主な融資メニュー例)
本制度は、以下のような多様な資金ニーズ(事業)に対応しています。
-
創業・スタートアップ
- 対象:これから創業する方、または創業後5年未満の方
- メニュー名:創業 (Startup)
- 活用例:店舗の開業資金、オフィスの初期費用、Webサイト制作費
-
売上減少・経営安定化
- 対象:経済環境の変化などで売上が減少している方
- メニュー名:経営セーフ (Keiei Safe)
- 活用例:仕入れ費用、人件費、家賃などの運転資金の確保
-
設備投資・事業拡大
- 対象:新たな機械やソフトウェアを導入する方、工場や事務所を移転・新設する方
- メニュー名:設備投資・企業立地 (Capex)
- 活用例:新型の製造機械の購入、全社のPC入れ替え、業務効率化SaaSの導入
-
物価高騰・緊急対策
- 対象:エネルギー価格や原材料費の高騰で利益率が圧迫されている方
- メニュー名:エネルギー・ウクライナ情勢・円安等対応緊急融資
- 活用例:高騰した原材料の仕入れ資金、光熱費の支払い
-
小規模事業者の運転資金
- 対象:従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者
- メニュー名:小規模事業融資
- 活用例:日々の仕入れや経費の支払いなど、小口の運転資金
対象外となるケース
以下の場合は、原則として対象外となります。
❌ 東京都内に事業実態がない場合
❌ 東京信用保証協会の保証対象外業種(農林水産業、金融・保険業、一部の風俗営業など)
❌ 税金(法人税、事業税、住民税など)を滞納している場合
❌ 信用情報に重大な問題(債務不履行、代位弁済の履歴など)がある場合
融資限度額と補助(金利・保証料)
本制度の最大のメリットは「融資」と「補助」がセットになっている点です。ここでは「いくら借りられるか(融資額)」と「どれだけ得するか(補助)」を解説します。
基本スペック(融資額と補助)
- 融資限度額: 2,000万円〜最大2億8,000万円(メニューによる)
- 信用保証料の補助: 東京都が 1/2, 2/3, 4/5 などを補助(メニューによる)
- 利子補給(金利補助): 事業所所在地の区市町村が独自に「上乗せ」補助
補助シミュレーション(区市町村の上乗せが強力)
本制度の真価は、東京都の補助に加えて、各区市町村が実施する「あっせん融資」を組み合わせることで発揮されます。
ケース1:【信用保証料がゼロになる例】(中央区の場合)
小規模企業者が「経営セーフ」融資を利用する場合…
① 東京都の補助: 保証料の 1/2 を補助
② 中央区の上乗せ補助: 残りの保証料を全額補助(上限30万円)
結果: 事業者の実質的な保証料負担は 0円になる可能性があります。
ケース2:【金利が超低くなる例】(足立区の場合)
「創業資金」融資(例:金利 年1.9%)を利用する場合…
① 東京都の制度: そもそも低金利(年1.9%)で借りられる
② 足立区の上乗せ補助: 支払う利息の 2/3(上限1.7%)を区が補助(利子補給)
結果: 実質的な金利負担は 年0.63%(1.9% × 1/3)という破格の低さになります。
⚠️ 注意: このような「上乗せ補助」は、区市町村の窓口を経由する「あっせん」を受けないと対象外になることがほとんどです。いきなり銀行に申し込むと損をする可能性があります。
1. 設備資金
長期的に使用する固定資産の取得に必要な資金です。金額が大きく、事業の成長に直結します。
具体例:
- 機械・装置: 製造業のCNC旋盤、飲食店の業務用冷蔵庫・製麺機
- ソフトウェア: 業務効率化のためのSaaS導入費、ECサイト構築費、顧客管理システム(CRM)開発費
- 内装・工事: 店舗の改装費用、オフィスの内装工事費
- 車両: 配送用のトラック、営業用の社用車(※事業専用と明確に説明できるもの)
注意点:
- 原則として、申請した通りの見積書の内容で購入する必要があります。
- 領収書や契約書など、支払い証拠の保管が必須です。
- 中古品は対象となる場合がありますが、事前に確認が必要です。
2. 運転資金
事業を継続的に運営していくために必要な、日々の経常的な費用です。
具体例:
- 人件費: 従業員の給与、賞与、社会保険料
- 仕入れ費: 商品の仕入れ代金、原材料の購入費
- 諸経費: オフィスの家賃、水道光熱費、通信費
- 外注費: デザイン委託費、コンサルティング費用
- 広告宣伝費: Web広告費、チラシ印刷費
- 税金: 消費税や事業税などの公租公課の支払い
対象外となる経費
以下の使途には、本制度の融資は利用できません。
❌ 事業主個人の生活費、遊興費
❌ 株式、FX、不動産投資などの投機的資金
❌ 既存の借入金の返済(「借換」として認められた場合を除く)
❌ 事業と無関係な資産(例:経営者の趣味の車、別荘など)の購入
❌ 虚偽の申告による資金使途
申請要件チェックリスト
融資の審査を通過するためには、以下の要件を満たす必要があります。
必須要件(すべて満たす必要あり)
-
法人の場合は登記、個人事業主の場合は開業届や事業実態(例:賃貸契約書)で証明します。
-
ほとんどの業種が対象ですが、農林水産業、金融・保険業、一部の風俗営業などは対象外です。
-
法人税、事業税、住民税、消費税などの「納税証明書」の提出が必須です。滞納があると審査に通りません。
-
既存の借入の返済遅延、債務不履行、代位弁済などの履歴(いわゆるブラックリスト)があると非常に困難です。
-
例:「創業」なら創業5年未満、「経営セーフ」なら売上減少を証明する認定書、など。
加点事項(審査で有利になりやすい要素)
本制度の審査は、金融機関と信用保証協会が行います。彼らが「この会社なら大丈夫」と判断する材料を提供することが重要です。
- 🌟 区市町村や商工会議所の「あっせん」を受けている
専門家(経営相談員)のレビューを経ているため、計画の信頼性が高まります。(後述) - 🌟 事業計画書の説得力が高い
売上予測の根拠が明確で、返済計画に無理がないこと。 - 🌟 自己資金が十分にある(特に創業融資)
事業への本気度やリスク許容度の高さが評価されます。 - 🌟 経営者の関連業界での経験が豊富である
⚠️ よくある審査否決の理由
- 事業計画書の不備: 売上予測が甘い、資金使途が曖昧、返済計画に無理がある。
- 自己資金不足: (特に創業時) 自己資金が著しく少ないと、事業の準備不足と見なされます。
- 信用情報の問題: 経営者個人のクレジットカード延滞、既存の借入の遅延など。
- 税金の滞納: 必須要件であり、この時点で審査対象外となります。
1. 融資の「あっせん」・申込時の必要書類
| 書類名 | 入手先・作成方法 | 重要度・注意点 |
|---|---|---|
| 1. あっせん申込書 | 区市町村の窓口で入手・作成 | 【重要】利子補給などを受けるための第一歩です。 |
| 2. 事業計画書 / 創業計画書 | 自社で作成(指定様式の場合あり) | 【最重要】審査の核。返済能力をアピールします。 |
| 3. 登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 法務局(オンライン可) | (法人の場合)発行から3ヶ月以内。 |
| 4. 確定申告書・決算書(直近2期分) | 自社保管(税理士確認) | 個人の場合は確定申告書B、法人の場合は決算書一式。 |
| 5. 納税証明書 | 税務署、都税事務所、区市町村役場 | 「法人事業税・住民税」「源泉所得税」など。滞納がないことの証明。 |
| 6. 設備投資の見積書 | 取引先から取得 | (設備資金の場合)資金使途の根拠となります。 |
2. 補助金(保証料・利子補給)申請時の必要書類
⚠️ 融資が実行された後、自動では補助されません! 事業者自身が、定められた期限内(例:融資実行後3ヶ月以内)に、区市町村の窓口へ別途申請する必要があります。
| 書類名 | 入手先・作成方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 補助金交付申請書 | 区市町村の窓口で入手 | 融資実行後に、改めて補助金申請用の書類を作成します。 |
| 2. 信用保証決定のお知らせ(写し) | 融資実行時に金融機関から受領 | 保証料の金額が記載された、補助金計算の根拠となる書類です。 |
| 3. 融資実行が確認できる書類 | 金融機関から受領 | 金銭消費貸借契約書の写しなど。 |
💡 時短テクニック: 登記簿謄本・納税証明書は、e-Taxやオンライン申請を活用するとスピーディに取得できます。書類準備は審査期間にも影響するため、早めに着手しましょう。
申請から受給までの流れ
本制度は「区市町村のあっせん」→「金融機関の融資実行」→「区市町村への補助金申請」という複雑な流れをたどります。日本政策金融公庫(JFC)と比べて時間がかかるため、スケジュール感が重要です。
事前相談(金融機関)
やること: 融資を受けたい指定金融機関(取引のある銀行や信用金庫)と、制度融資の利用について事前に相談します。
区市町村の窓口で「あっせん」相談 (2-3週間)
やること: 【最重要】利子補給などのメリットを受けるため、事業所所在地の区役所(商工観光課など)や商工会議所に予約し、専門の経営相談員と面談します。
💡 ここで事業計画書のブラッシュアップが行われるため、実質的な「事前審査」の役割を果たします。
「あっ旋状」交付
やること: 区市町村の審査(あっせんの可否)が完了すると、金融機関宛の「あっ旋状(紹介状)」が交付されます。
金融機関・保証協会の「二重審査」 (1-2ヶ月)
やること: 事業者は「あっ旋状」と必要書類一式をSTEP1の金融機関に提出し、正式な融資申込みを行います。
審査の流れ:
- 金融機関が「融資できるか」を審査
- 金融機関がOKなら、東京信用保証協会へ「保証人になってもらえるか」を審査依頼
- 保証協会がOKなら、融資決定
融資実行(=資金の入金)
やること: 金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、融資が実行(指定口座に入金)されます。
⚠️ 申込みから融資実行まで、最短でも1.5ヶ月、通常は2〜3ヶ月かかります。JFC(公庫)より時間がかかる点に注意してください。
【最重要】補助金の申請 (期限:実行後3ヶ月以内など)
やること: 融資が実行されたら、自動で補助はされません。
事業者自身が、区市町村の窓口(STEP 2と同じ場所)に「融資が実行されました」と報告し、「信用保証料補助」や「利子補給」の交付申請手続きを行います。
⚠️ この期限(例:実行後3ヶ月以内)を1日でも過ぎると、補助金(キャッシュバック)は一切受けられません!
補助金入金 (1-2ヶ月後)
やること: STEP 6の申請が受理されると、区市町村から交付決定通知が届き、後日、指定口座に保証料補助金や利子補給金が振り込まれます。
⏰ トータル所要期間
申込みから「融資実行」まで: 約1.5〜3ヶ月
申込みから「補助金入金」まで: 約3〜6ヶ月
※ 資金が必要な時期から逆算して、早めに動き出すことが重要です。
審査通過率を高める5つのポイント
本制度の審査は「金融機関」と「東京信用保証協会」の二重審査です。両者を納得させるためのポイントを解説します。
1. まずは「区市町村の窓口」へ行く
最大のコツは、いきなり銀行に行かないことです。金利や保証料の補助(利子補給など)のメリットを最大限に享受するには、事業所所在地の区市町村(または商工会議所)の「あっせん窓口」を経由することが必須です。
この「あっせん」の過程で、経営相談員が事業計画書の書き方や資金計画を一緒に見直してくれます。このプロセス自体が計画の信頼性を高め、その後の金融機関・保証協会の審査通過率を大幅に高める「事前審査」として機能します。
2. 「返済能力」を数値で示す事業計画
審査員が知りたいのは「この会社に貸したお金は、利息を付けてちゃんと返ってくるか?」の一点です。情熱だけでなく、数字で語る必要があります。
❌ NG例: 「新機械を導入すれば、売上が増加する見込みです」
✅ OK例: 「新機械(500万円)導入により、製造時間が20%短縮。月100個の増産が可能となり、客単価5,000円×100個=月50万円、年間600万円の売上増を見込みます。返済原資は十分に確保可能です」
3. 資金使途の明確化と妥当性
「何に、いくら使うのか」を明確に示し、それが事業に必要な理由を説明します。
❌ NG例: 「運転資金として1,000万円」
✅ OK例: 「運転資金1,000万円の内訳:原材料高騰による仕入れ費増加分(月50万円×6ヶ月=300万円)、新規採用スタッフ2名の人件費(月30万円×2名×6ヶ月=360万円)、Web広告強化費(月50万円×6ヶ月=300万円)、予備費40万円」
設備資金の場合は、必ず取引先の「見積書」を添付し、金額の妥当性を示します。
4. 自己資金の準備(特に創業融資)
特に創業融資の場合、「自己資金ゼロ」での審査通過は非常に困難です。「自己資金が足りない」ことは、事業への本気度や準備不足を疑われ、審査落ちの主要な理由となります。最低でも、借りたい金額の1/3〜1/4程度の自己資金は用意しておくことが望ましいです。
5. 信用情報と税金はクリーンに
これは大前提です。経営者個人のクレジットカードの支払遅延、既存の借入の延滞、税金の滞納は、審査において致命的です。申込みの前に、自身の信用情報(CIC、JICC)や、税金の未納がないかを必ず確認してください。
想定される活用モデルケース
本制度は「融資」であるため、金融機関の守秘義務に基づき、補助金のような「採択事例一覧」は公表されません。ここでは、制度の趣旨に基づいた活用モデルケースをご紹介します。
ケース1: 飲食業(創業)
状況: 文京区でカフェを開業予定のAさん。内装費と厨房機器で1,000万円必要。
活用: 「創業」メニュー(限度額3,500万円)を利用。文京区のあっせん窓口(商工会議所)で創業計画書をブラッシュアップし、申込み。
メリット: 審査に通過し1,000万円を調達。東京都から保証料の2/3が補助され、さらに文京区から利子補給(金利補助)も受けることで、低コストでのスタートダッシュに成功した。
ケース2: 製造業(設備投資)
状況: 大田区の中小製造業B社。取引先から増産要請があるが、既存の機械が古く、生産性が低い。
活用: 「設備投資」メニューを利用し、最新のNC旋盤(2,000万円)の導入を計画。大田区の「産業振興課」にあっせんを申込み。
メリット: 融資実行後、東京都から保証料の2/3が補助された。生産性が向上し、増産要請に応えることができた。
ケース3: 小売業(経営安定)
状況: 杉並区で雑貨店を営むCさん(小規模企業者)。円安と物価高で仕入れコストが30%上昇し、資金繰りが悪化。
活用: 「エネルギー・ウクライナ…緊急」メニューと「経営セーフ」を検討。杉並区役所に相談し、「経営セーフ」の認定を取得して申込み。
メリット: 500万円の運転資金を確保。小規模企業者であるため、東京都から保証料の1/2が補助され、当面の資金繰りを安定させることができた。
よくある質問(FAQ)
Q1. これは補助金ですか? 融資ですか?
A. 融資(ローン)です。したがって、借りた元本は全額返済する必要があります。
ただし、返済不要の「補助」がセットになっています。具体的には、融資を受けるために必要な「信用保証料」や、支払う「利息」の一部を、東京都や区市町村が肩代わり(補助)してくれます。そのため、「補助金付きの低コストな融資制度」と理解するのが最も正確です。
Q2. 日本政策金融公庫(JFC)との違いは何ですか?
A. どちらも中小企業支援のための重要な資金調達先ですが、仕組みが異なります。
| 比較項目 | 日本政策金融公庫 (JFC) | 東京都制度融資 (本制度) |
|---|---|---|
| 運営 | 国(100%政府系金融機関) | 東京都+保証協会+民間金融機関 |
| 信用保証料 | 不要 | 必要(だが、都と区が補助) |
| 審査 | JFCによる単独審査 | 金融機関+保証協会の二重審査 |
| 実行速度 | 速い (1ヶ月程度) | 遅い (1.5〜3ヶ月程度) |
| 経験要件 | やや厳格(創業時など) | 比較的柔軟 |
💡 戦略: JFCは「保証料ゼロでスピーディ」、都制度は「時間がかかるが、区の補助を使えば総コスト(金利+保証料)がJFCより安くなる可能性があり、経験が浅くても通りやすい」という特徴があります。
Q3. JFC(公庫)と併用(同時申請)できますか?
A. はい、可能です。
JFC(国の資金)と東京都制度融資(民間の資金+公的保証)は、資金の原資と枠組みが異なるため、両方の審査基準を満たせば、両方から借り入れることができます。例えば、創業時に必要な資金3,000万円を、JFCから1,500万円、都制度から1,500万円、という形で調達する戦略は一般的です。
Q4. どこに申請すればよいですか? 銀行ですか?
A. 申込みは最終的に銀行(指定金融機関)に行いますが、その前に「区市町村の融資担当課」または「商工会議所」に相談するのが、最も有利な条件を引き出すための最善手です。
なぜなら、前述の「利子補給」や「保証料の上乗せ補助」といった最も強力なメリットは、これらの窓口の「あっせん」を受けることが条件となっている場合がほとんどだからです。いきなり銀行に行くと、これらのメリットを受けられない可能性があります。
Q5. 融資が実行されたら、補助金は自動で振り込まれますか?
A. いいえ、自動ではありません! これが最大の注意点です。
融資の実行が完了した後、事業者自身が、区市町村の窓口に「補助金(保証料補助・利子補給)の交付申請書」を別途提出する必要があります。
⚠️ この補助金申請には「融資実行後3ヶ月以内」といった厳格な期限が設定されています。この期限を過ぎると、融資は受けていても補助金は一切もらえなくなります。融資が実行されたら、即座に補助金申請の手続きを行ってください。
Q6. 自己資金ゼロでも使えますか?
A. 非常に困難です。
特に創業融資の場合、「自己資金が足りない」ことは審査に落ちる主要な理由の一つです。事業への本気度や、計画的な準備ができていないと見なされるためです。まずは自己資金を貯めるか、親族からの出資(贈与)などを検討する必要があります。
Q7. 補助金のような「実績報告書」は必要ですか?
A. 原則として、不要です。
これが「補助金(hojokin)」と「融資(yuushi)」の大きな違いです。補助金は、事業完了後に分厚い「実績報告書」や「経費の証憑」の提出が求められ、その後の事業化状況報告(5年間など)も義務付けられます。
一方、融資における最大の義務は、「定められたスケジュール通りに元本と利息を返済すること」です。煩雑な報告事務がない(=本業に集中できる)点が、融資の大きなメリットの一つです。
💡 ただし、設備資金で購入した機械などは、完済まで無断で売却・処分することはできません(財産処分制限)。
Q8. 審査に落ちた場合、再申請できますか?
A. はい、可能です。
ただし、同じ内容ですぐに再申請しても結果は同じです。まずは否決された理由(例:事業計画の甘さ、自己資金不足など)を金融機関や保証協会に確認し、その問題を明確に改善した上で、最低でも半年程度は間を空けてから再挑戦するのが一般的です。
Q9. 申請書類の作成をサポートしてもらえますか?
A. はい、商工会議所や、認定支援機関(中小企業診断士、税理士など)が申請サポートを行っています。
特に、審査の核となる事業計画書の作成は、専門家の支援を受けることで通過率が大きく向上します。
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