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移動支援事業とは?障がいのある方の「外出したい」を支える心強い制度
「一人で外出するのが不安」「行きたい場所があるけれど、移動に介助が必要」…そんな悩みを抱える障がいのある方やそのご家族にとって、非常に心強い制度が「移動支援事業」です。この制度は、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業の一つで、屋外での移動が困難な障がい者(児)が、社会生活を送る上で必要な外出や、余暇活動などの社会参加をする際に、ヘルパー(ガイドヘルパー)が付き添い、移動のサポートを行うサービスです。この記事では、移動支援事業の詳しい内容や対象者、利用料金、申請方法まで、網羅的にわかりやすく解説します。この制度を活用し、あなたの「行きたい」を実現する第一歩を踏み出しましょう。
この制度のポイント
✓ 障がいのある方の外出をヘルパーがサポート
✓ 公的な手続きから余暇活動まで幅広い外出が対象
✓ 利用者負担は原則1割(所得に応じた上限あり)
✓ お住まいの市区町村が実施主体
移動支援事業の概要をサクッと解説
制度の目的
移動支援事業の主な目的は、屋外での移動に困難を抱える障がいのある方々の地域での自立した生活と、積極的な社会参加を促進することです。具体的には、ヘルパーが外出に付き添うことで、一人では難しかった様々な活動への参加を可能にし、生活の質(QOL)の向上を目指します。単なる移動の介助だけでなく、外出先でのコミュニケーション支援や安全確保なども含め、安心して外出できる環境を提供します。
実施主体
この事業は、国が定めた障害者総合支援法に基づき、各市区町村が地域の実情に応じて実施しています。そのため、対象者の詳細な要件や、利用できる時間数、対象となる外出の範囲などが自治体によって若干異なる場合があります。利用を検討する際は、必ずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。
【私は対象?】移動支援事業の対象者と利用条件
移動支援事業を利用できるのは、屋外での移動に困難があり、お住まいの市区町村から支給決定を受けた方です。一般的に、以下のような障がいのある方が対象となります。
- 身体障がい者:全身性障がい(両上肢・両下肢に重度の障がいがある方など)や、重度の視覚障がいのある方。
- 知的障がい者:療育手帳をお持ちで、一人での外出が困難な方。
- 精神障がい者:精神障害者保健福祉手帳をお持ちで、一人での外出に不安があるなど支援が必要な方。
- 難病患者等:障害者総合支援法の対象となる難病等により、移動に支援が必要な方。
注意点:他のサービスとの関係
障がい福祉サービスには、移動支援と似た目的のサービスとして「同行援護(視覚障がい者向け)」「行動援護(知的・精神障がい者向け)」「重度訪問介護」などがあります。これらのサービスの支給決定を受けている方は、原則として移動支援の対象とはなりません。どちらのサービスが適切かについては、市区町村の窓口や相談支援専門員とよく相談することが重要です。
どんな外出に使えるの?具体的な利用シーン
移動支援は、大きく分けて「社会生活上必要不可欠な外出」と「余暇活動等の社会参加のための外出」に利用できます。ただし、利用できないケースもあるため、事前に確認が必要です。
対象となる外出の例
| 外出の目的 | 具体例 |
|---|---|
| 社会生活上必要不可欠な外出 | 官公署や金融機関での手続き、日用品の買い物、冠婚葬祭への出席、お見舞い、学校や施設の見学など |
| 余暇活動・社会参加 | 映画鑑賞、コンサート、スポーツ観戦、展覧会、講演会、散歩、外食、理美容院、プールや銭湯の利用など |
対象とならない外出の例
- 通勤、営業活動などの経済活動を目的とする外出
- 通学や施設への通所など、通年かつ長期的な外出(※例外あり)
- 医療機関への定期的な通院(原則として「居宅介護(通院等介助)」が優先されます)
- ギャンブルや飲酒など、社会通念上不適当とされる外出
【例外あり】通学や通所で利用できるケース
原則として通学・通所は対象外ですが、自治体によっては、主たる介護者である保護者が病気や入院、出産などで一時的に送迎できなくなった場合など、緊急性が高く、他に代替手段がない場合に限り、期間を定めて利用が認められることがあります。このようなケースに該当する場合は、速やかに市区町村の窓口に相談しましょう。
気になる利用料金と支給時間
利用者負担の仕組み
移動支援サービスの利用者負担は、サービスにかかった費用の原則1割です。ただし、家計への負担が重くなりすぎないよう、世帯の所得(市町村民税の課税状況)に応じて、1ヶ月あたりの負担額に上限が設けられています。これを「負担上限月額」と呼びます。
利用者負担額のモデルケース(金沢市の例)
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1(児童) | 市町村民税課税世帯(所得割28万円未満) | 4,600円 |
| 一般1(者) | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※上記は一例です。自治体によって区分や金額が異なる場合があります。
1ヶ月あたりの利用可能時間(支給量)
1ヶ月に利用できる時間数(支給量)は、利用者の心身の状況や生活環境、利用希望などを考慮して、市区町村が個別に決定します。自治体によって基準は異なりますが、例えば杉並区では、18歳以上の方の余暇活動は月50時間以内が目安とされています。利用状況に応じて支給量を増やす相談も可能な場合がありますので、必要であれば窓口で相談してみましょう。
カンタン4ステップ!移動支援の申請から利用開始までの流れ
移動支援を利用するには、事前の申請と支給決定が必要です。基本的な流れは以下の通りです。
- ステップ1:市区町村の窓口へ相談
まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業所に相談します。制度の説明を受け、申請に必要な書類などを確認します。 - ステップ2:支給申請
申請書や利用計画書など、指定された書類を窓口に提出します。一般的に以下の書類が必要です。
・支給申請書
・障害者手帳の写し
・世帯の所得状況がわかる書類(課税証明書など)
・利用計画書(どのような目的で、月に何時間程度利用したいかを記載) - ステップ3:支給決定・受給者証の交付
市区町村が提出された書類を審査し、利用の必要性を判断します。支給が決定されると、利用できるサービスの種類や月間の支給量、利用者負担上限月額などが記載された「福祉サービス受給者証」が交付されます。 - ステップ4:事業者との契約・利用開始
受給者証が届いたら、お住まいの地域で移動支援サービスを提供している事業者の中から利用したい事業所を選び、直接連絡して利用契約を結びます。契約後、具体的な利用日時などを調整し、サービスの利用を開始します。
移動支援事業に関するよくある質問(FAQ)
- Q1. 通院には使えますか?
- A1. 定期的な通院は、原則として居宅介護サービスの「通院等介助」が優先されます。ただし、突発的に病院に行く必要が生じた場合など、緊急時には移動支援を利用できる場合があります。自治体によって判断が異なるため、ご確認ください。
- Q2. 通学・通所には使えますか?
- A2. 毎日・毎週といった継続的な通学・通所には原則利用できません。スクールバスや施設の送迎サービス、家族による送迎が基本となります。ただし、保護者の入院など、やむを得ない事情がある場合は一時的に利用が認められることがあります。
- Q3. ヘルパーさんと一緒にプールに入れますか?
- A3. 自治体や事業所によりますが、プールや銭湯内での介助を移動支援の対象としている場合があります。ただし、安全確保の観点から、損害保険への加入や救命講習の受講など、特定の要件を満たした事業所のみが対応可能です。利用したい場合は、事前に事業所に確認が必要です。
- Q4. 家族が同伴している場合でも利用できますか?
- A4. 移動支援は、介護者が不在または同伴できない場合に利用するのが基本です。家族が同伴している外出での利用は、原則として認められないことが多いです。ただし、障がいの特性上、家族だけでは介助が困難な場合など、事情によっては認められる可能性もあるため、市区町村に相談してみてください。
- Q5. 申請してからどのくらいで利用できますか?
- A5. 申請から支給決定、受給者証が交付されるまで、通常1ヶ月程度かかることが多いです。その後、事業者を探して契約を結ぶ時間も必要です。利用したい時期が決まっている場合は、余裕をもって早めに申請手続きを始めることをお勧めします。
まとめ:移動支援事業を活用して、活動の幅を広げよう!
移動支援事業は、障がいのある方が地域社会でいきいきと暮らしていくための重要な社会資源です。公的な手続きから趣味や楽しみのための外出まで、様々な場面で活用することができます。この制度を上手に利用することで、これまで諦めていた場所へ出かけたり、新しい活動にチャレンジしたりと、生活の可能性を大きく広げることができるでしょう。
利用を検討されている方は、まずは第一歩として、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、身近な相談支援事業所に問い合わせてみてください。専門の職員が、あなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれるはずです。