なぜ今、農林水産物の「認証取得」が重要なのか?
持続可能性(SDGs)への関心が高まる現代において、農林水産業でも環境への配慮や安全性の確保が強く求められています。GAP、有機JAS、森林認証といった第三者認証は、自社の取り組みを客観的に証明し、消費者や取引先からの信頼を獲得するための強力なツールです。これにより、新たな販路の開拓や海外輸出、企業価値の向上に繋がります。
しかし、認証の取得や維持には審査費用やコンサルティング料など、一定のコストがかかります。そこで活用したいのが、国や自治体が提供する補助金・助成金です。これらの支援事業をうまく利用することで、コスト負担を大幅に軽減できます。
補助金活用の重要ポイント
- 交付決定前の事業着手は対象外: 補助金の申請を行い、「交付決定」の通知を受けてから、審査の申し込みやコンサルタントとの契約を行う必要があります。
- 消費税は補助対象外: 補助金の計算は、原則として消費税抜きの金額で行われます。
- 予算の上限: 多くの事業は予算がなくなり次第、受付を終了します。早めの情報収集と申請準備が成功のカギです。
国が実施する主な認証取得支援事業
農林水産省では、特に輸出促進や国内の持続可能な農業推進を目的とした、全国の事業者が対象となる支援事業を実施しています。
国際的に通用する認証等取得緊急支援事業
海外市場への輸出拡大を目指す事業者にとって、国際認証の取得は不可欠です。この事業は、輸出の障壁となる各国の規制に対応するための認証取得を強力に後押しします。
目的 | 輸出先国の規制等に対応するための国際認証の取得支援 |
対象者 | 農林水産物・食品の輸出に取り組む民間団体等 |
補助対象経費 | 認証取得に必要な審査費用、コンサル費用など |
公募期間(例) | 令和7年9月1日~令和7年9月19日 ※公募は複数回行われることがあります |
有機JAS認証、GAP等認証取得等支援事業
国内の環境保全型農業を推進し、安全・安心な農産物の供給を拡大するため、有機JAS認証や各種GAP認証の取得を支援する事業です。
目的 | 有機農業やGAPの取組拡大による持続可能な農業の推進 |
対象者 | 有機JAS認証やGAP認証の取得を目指す農業者、生産者団体等 |
補助対象経費 | 認証取得・更新に係る審査費用、コンサル費用、研修費用など |
公募期間(例) | 令和7年1月30日まで ※年度により異なります |
東京都が実施する認証取得支援事業
東京都では、都内の農林業者が持続可能な生産活動を行い、競争力を高めるための独自の支援事業を展開しています。
農家認証取得支援事業
都内の農業者が販路を維持・拡大することを目的に、JGAP、ASIAGAP、GLOBALG.A.P.といった主要なGAP認証の取得を支援します。
対象者 | 都内在住の農業者、農業者団体、都内に農地を持つ農業高校等 |
助成内容 | 審査費用、コンサルタント契約料(初回のみ)、研修受講費用 |
補助率 | 2分の1以内 |
募集期間(R7) | 令和7年4月1日~令和8年3月31日 |
森林認証取得支援事業
適切に管理された森林から産出された木材であることを証明する森林認証(FM認証、CoC認証)の取得を支援し、「多摩産材」のブランド価値向上と利用促進を図ります。
対象者 | 都内の森林所有者、素材生産事業者、製材事業者等 |
助成内容 | コンサルタント契約料、初回・定期・更新審査料、年間公示料 |
補助率 | 2分の1以内(コンサル料は上限40万円) |
募集期間(R7) | 令和7年4月14日~令和8年3月19日 |
申請手続きの一般的な流れ
補助金の申請から受給までの流れは、事業によって多少異なりますが、おおむね以下のステップで進みます。
- STEP 1: 相談・情報収集
まずは各事業の担当窓口に連絡し、自社の取り組みが対象になるか、必要な書類は何かなどを確認します。 - STEP 2: 申請書類の準備
公募要領に従い、事業計画書や申請様式を作成します。見積書など、添付書類も漏れなく準備します。 - STEP 3: 申請
Jグランツによる電子申請、郵送、窓口への持参など、指定された方法で期間内に申請します。 - STEP 4: 交付決定通知
審査を経て、補助金の交付が決定されると通知が届きます。この通知を受け取るまで、契約や支払いはできません。 - STEP 5: 事業の実施
計画に沿って、認証の審査を受けたり、コンサルティングを受けたりします。 - STEP 6: 実績報告
事業が完了したら、かかった経費の証拠書類などを添えて実績報告書を提出します。 - STEP 7: 補助金の交付
実績報告書が受理されると、補助金額が確定し、指定の口座に振り込まれます。
まとめ
農林水産物の認証取得は、短期的なコストはかかりますが、長期的に見れば経営基盤の強化、信頼性の向上、そして新たなビジネスチャンスに繋がる価値ある投資です。今回ご紹介した補助金制度を賢く活用し、ぜひ認証取得にチャレンジしてみてください。ご自身の事業に合った補助金を見つけ、まずは担当窓口へ相談することから始めましょう。