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「日々の業務を効率化したい」「新しいITツールを導入したいけどコストが…」とお悩みの中小企業・小規模事業者の皆様へ。その課題、最大450万円が補助される「IT導入補助金2025(通常枠)」で解決できるかもしれません。この記事では、制度の概要から申請の具体的なステップ、さらには採択率を上げるための重要なポイントまで、専門家が徹底的に解説します。自社の生産性を飛躍的に向上させるチャンスを、この機会にぜひ掴んでください。
この記事のポイント
- IT導入補助金2025(通常枠)の目的や対象者がわかる
- 補助額が最大450万円になる条件や補助率が明確になる
- 具体的な申請手順と必要書類がリストで確認できる
- 審査で有利になる「加点項目」や採択のコツがわかる
① IT導入補助金2025(通常枠)の概要
まずは、IT導入補助金がどのような制度なのか、基本から押さえていきましょう。
制度の目的と背景
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が直面する働き方改革、賃上げ、インボイス制度導入といった様々な制度変更に対応し、生産性を向上させることを目的としています。具体的には、業務効率化や売上アップに繋がるITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)の導入費用の一部を国が補助してくれる制度です。
単なるIT化支援ではなく、これらのツール活用を通じて、企業の競争力を高め、持続的な成長を後押しすることを目指しています。
実施組織とスキーム
この事業は、経済産業省・中小企業庁の監督のもと、サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局(運営:TOPPAN株式会社)が実施しています。特徴的なのは、「IT導入支援事業者」と申請者が共同で申請手続きを進める点です。IT導入支援事業者は、補助金対象となるITツールの提供や、申請手続きのサポート、導入後のアフターフォローまで行ってくれる頼れるパートナーです。どの事業者・ツールを選ぶかが、補助金活用の鍵となります。
② 補助金額・補助率
最も気になる補助金額と補助率について、詳しく見ていきましょう。通常枠は、導入するITツールが持つ機能(プロセス数)によって補助額の上限が変わるのが大きな特徴です。
| 項目 | 1プロセス以上 | 4プロセス以上 |
|---|---|---|
| 補助額 | 5万円以上 ~ 150万円未満 | 150万円以上 ~ 450万円以下 |
| 補助率 | 1/2以内 ※特定の賃上げ要件を満たす場合は2/3以内に引き上げ |
|
| 賃上げ目標 | 加点項目 | 必須要件 |
「プロセス」とは?
プロセスとは、ソフトウェアが持つ機能の分類のことです。例えば、以下のようなものが定められています。
- 共P-01:顧客対応・販売支援(CRM、SFAなど)
- 共P-02:決済・債権債務・資金回収(POSレジ、請求管理ソフトなど)
- 共P-03:供給・在庫・物流(在庫管理、受発注管理システムなど)
- 共P-04:会計・財務・経営(会計ソフトなど)
- 共P-05:総務・人事・給与・労務(給与計算、勤怠管理システムなど)
例えば、顧客管理(CRM)と会計ソフトを導入する場合、2プロセスとなります。複数の業務を横断して効率化するツールを導入することで、より高額な補助が受けられる仕組みです。
③ 対象者・条件
自社が補助金の対象になるか、以下の要件を確認しましょう。
対象となる事業者
日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者が対象です。資本金や従業員数によって定義されており、幅広い業種が対象となります。
- 中小企業: 製造業、建設業、運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下など、業種ごとに規定あり。
- 小規模事業者: 商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は従業員20人以下など。
- その他: 個人事業主、医療法人、社会福祉法人、学校法人、NPO法人、組合なども対象に含まれます。
主な申請要件
申請にあたっては、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 日本国内で法人登記され、事業を営んでいること。
- 事業場内の最低賃金が、地域別最低賃金以上であること。
- 「gBizIDプライム」アカウントを取得していること。(取得に2週間程度かかるため、早めの準備が必要です)
- IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言していること。
- 労働生産性の向上に関する3年間の事業計画を策定し、年率平均3%以上の向上を目指すこと。
④ 補助対象経費
どのような費用が補助の対象になるのか、具体的に見ていきましょう。
対象となる経費
補助対象となるのは、事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供するITツールに関連する費用です。
- ソフトウェア購入費: 業務パッケージソフトなどの購入費用。
- クラウド利用料: クラウドサービスの利用料。最大2年分が対象となります。
- 導入関連費: 導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポートなどの費用。
対象外となる経費
以下の費用は対象外となるため注意が必要です。
- ハードウェア(PC、タブレット、サーバーなど)の購入費用 ※インボイス枠では一部対象
- 補助金の申請代行費用
- 交通費、宿泊費
- 消費税
- 交付決定前に契約・発注・支払いを行ったITツール
⑤ 申請方法・手順
申請はオンラインで行います。以下のステップに沿って進めましょう。
- 事前準備: gBizIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの宣言を済ませます。
- IT導入支援事業者・ITツールの選定: 自社の課題に合ったITツールと、それを扱うIT導入支援事業者を選定し、相談します。
- 申請マイページの開設: IT導入支援事業者から招待を受け、申請マイページを開設します。
- 交付申請の作成: IT導入支援事業者と共同で、事業計画などの申請情報を作成・入力します。
- 交付申請の提出: 申請者自身が申請マイページから最終的な提出操作を行います。
- 交付決定: 審査後、事務局から交付決定の通知が届きます。
- 事業実施: 交付決定後にITツールの契約・導入・支払いを行います。
- 事業実績報告: 導入したITツールの契約書や請求書、支払証憑などを提出します。
- 補助金交付: 実績報告の内容が確定した後、補助金が振り込まれます。
- 事業実施効果報告: 導入後3年間、生産性向上や賃上げに関する状況を報告します。
必要書類一覧
申請時には以下の書類のPDFデータが必要です。事前に準備しておきましょう。
- 法人の場合:
- 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)
- 法人税の納税証明書(その1またはその2)
- 個人事業主の場合:
- 運転免許証、運転経歴証明書または住民票(発行から3ヶ月以内)
- 所得税の納税証明書(その1またはその2)
- 税務署の受領印がある直近の確定申告書Bの控え
申請期限・スケジュール
IT導入補助金は、年間を通じて複数回の締切が設けられています。2025年度の申請は3月31日から開始されており、7次締切は2025年12月2日(火)17:00(予定)と公表されています。ただし、予算の消化状況によっては早期に終了する可能性もあります。最新のスケジュールは必ず公式サイトで確認し、余裕を持った申請を心がけましょう。
⑥ 採択のポイント
申請すれば誰でも採択されるわけではありません。審査で評価されるポイントを理解し、採択率を高める工夫が重要です。
審査で有利になる「加点項目」
以下の項目に該当する場合、審査で加点され、採択の可能性が高まります。積極的に活用しましょう。
- 賃上げ計画の策定: 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる計画を策定し、従業員に表明している。(補助額150万円未満の申請で大きな加点に)
- クラウド製品の導入: 導入するITツールがクラウド対応製品である。
- インボイス制度対応製品の導入: 導入するITツールがインボイス制度に対応した機能(会計・受発注・決済)を有している。
- サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用: 対象のセキュリティサービスを導入する。
- 健康経営優良法人2025の認定を受けている。
- 女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」や次世代法に基づく「くるみん認定」を受けている。
申請書作成のコツと不採択理由
事業計画書では、自社の経営課題を明確にし、その課題解決のために「なぜこのITツールが必要なのか」を具体的に示すことが重要です。ツールの機能と自社の課題、そして導入後の生産性向上のストーリーに一貫性を持たせましょう。
よくある不採択理由としては、「事業計画が具体的でない」「生産性向上の目標値が低すぎる、または非現実的」「書類の不備」などが挙げられます。信頼できるIT導入支援事業者とよく相談し、説得力のある申請書を作成することが採択への近道です。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 交付決定前にITツールを契約してしまいました。補助対象になりますか?
A1. いいえ、なりません。必ず事務局からの「交付決定」通知を受けた後に、ITツールの契約・発注・支払いを行ってください。順番を間違えると補助金は受け取れません。
Q2. gBizIDプライムとは何ですか?取得にどれくらいかかりますか?
A2. gBizIDプライムは、様々な行政サービスに1つのアカウントでログインできる認証システムです。申請には印鑑証明書などが必要で、アカウント発行までおおむね2週間程度かかります。申請を検討し始めたら、すぐに取得手続きを開始することをおすすめします。
Q3. 賃上げ目標が未達だった場合、ペナルティはありますか?
A3. はい、あります。補助額150万円以上の申請で必須となる賃上げ目標が達成できなかった場合、補助金の一部または全部の返還を求められる可能性があります。ただし、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は考慮されます。
Q4. 過去にIT導入補助金を利用しましたが、今年も申請できますか?
A4. 申請は可能ですが、減点措置の対象となる場合があります。例えば、過去に導入したソフトウェアと同じ機能(プロセス)を持つツールを導入する場合などは審査で不利になる可能性があります。詳細は公募要領を確認するか、IT導入支援事業者にご相談ください。
Q5. どのIT導入支援事業者を選べば良いかわかりません。
A5. IT導入補助金の公式サイトには、登録されているIT導入支援事業者やITツールを検索できるページがあります。自社の業種や解決したい課題で検索し、複数の事業者に相談してみることをお勧めします。サポート実績が豊富で、親身に相談に乗ってくれる事業者を選ぶことが重要です。
⑧ まとめ・行動喚起
IT導入補助金2025(通常枠)は、中小企業・小規模事業者が生産性を向上させるための強力な支援策です。最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 補助額は導入ツールの機能(プロセス数)に応じて最大450万円。
- 申請にはIT導入支援事業者との連携が必須。
- gBizIDプライムの取得など、事前準備を早めに進めることが重要。
- 賃上げ計画やクラウド導入などの加点項目を積極的に活用し、採択率を上げる。
- 交付決定前の契約は絶対にNG。
この補助金を活用することで、これまで導入をためらっていた高機能なITツールを導入し、ビジネスを次のステージへ進めることが可能です。まずは公式サイトで詳細を確認し、信頼できるIT導入支援事業者を探すことから始めてみましょう。