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「離職して収入が途絶えてしまった」「急な休業で給料が減り、来月の家賃が払えない…」そんな経済的な困難に直面し、住まいを失う不安を抱えていませんか?そんな時に頼りになるのが、国の「住居確保給付金」制度です。この制度は、離職や減収によって住居を失うおそれのある方々に対し、市区町村が家賃相当額を原則3ヶ月(最大9ヶ月)支給することで、安定した住まいと再就職を支援するものです。返済不要の給付金であり、生活の立て直しに向けた大きな支えとなります。この記事では、住居確保給付金の対象者、支給額、申請方法から必要書類まで、あなたが今すぐ行動できるよう、専門家が徹底的に解説します。
この記事のポイント
✅ 住居確保給付金の対象者や収入・資産要件がわかる
✅ 自治体ごとの支給上限額や計算方法がわかる
✅ 申請から支給までの具体的な流れと必要書類がわかる
✅ フリーランスや学生が対象になるかなど、よくある疑問が解決する
住居確保給付金とは?離職や減収で家賃に困る方を支える制度
住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法に基づき、離職や廃業、またはそれに同程度の収入減少があった方で、住まいを失うおそれがある場合に、安定した求職活動ができるよう家賃の一部を支援する制度です。実施主体はお住まいの市区町村で、国がその財源を支えています。
制度の目的と背景
この制度の最大の目的は、経済的な理由で住まいを失うことを防ぎ、生活の基盤を安定させることです。住む場所が確保されることで、安心して再就職に向けた活動に専念できるようになります。単なる金銭的な支援だけでなく、地域の自立相談支援機関による就労サポートもセットになっているのが特徴です。
【早見表】住居確保給付金の制度概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 住居確保給付金 |
| 実施組織 | 厚生労働省(実施主体:各市区町村) |
| 対象者 | 離職・廃業後2年以内、または収入が同程度まで減少した方で、一定の収入・資産要件を満たす方 |
| 支給額 | 自治体が定める家賃額(上限あり) |
| 支給期間 | 原則3ヶ月(延長・再延長により最大9ヶ月) |
| 支給方法 | 自治体から大家さんや不動産会社の口座へ直接振込(代理納付) |
| 申請窓口 | お住まいの市区町村の自立相談支援機関 |
| 返済義務 | なし(給付金のため返済は不要) |
あなたは対象?支給を受けるための主要要件をチェック
住居確保給付金を受給するには、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。ここでは、特に重要な収入・資産要件を中心に詳しく見ていきましょう。
要件1:離職・廃業または収入減少の状況にあること
- 離職・廃業後2年以内であること。
- または、個人の責任や都合によらず、給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少していること。(例:フリーランスで仕事が激減した、シフトが大幅に削られたなど)
要件2:収入要件(基準額+家賃額以下)
申請月における、世帯全員の収入合計額が「基準額」と「家賃額」の合計(収入基準額)以下であることが必要です。「基準額」とは、市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12で、自治体や世帯人数によって異なります。
<東京都江東区の例>
| 世帯人数 | 基準額 | 家賃上限額 | 収入基準額(合計) |
|---|---|---|---|
| 単身世帯 | 84,000円 | 53,700円 | 137,700円 |
| 2人世帯 | 130,000円 | 64,000円 | 194,000円 |
| 3人世帯 | 172,000円 | 69,800円 | 241,800円 |
※収入は給与の場合、社会保険料等天引き前の総支給額(交通費は除く)で計算します。年金や各種手当も収入に含まれる場合がありますので、詳細は窓口で確認が必要です。
要件3:資産要件(預貯金など)
申請日時点での、世帯全員の預貯金や現金の合計額が、自治体の定める額を超えていないことが必要です。これも基準額を基に計算され、多くの自治体で基準額の6倍(ただし上限100万円)とされています。
| 世帯人数 | 資産上限額(多くの自治体の例) |
|---|---|
| 単身世帯 | 504,000円 |
| 2人世帯 | 780,000円 |
| 3人以上世帯 | 1,000,000円 |
要件4:求職活動等を行うこと
受給期間中は、誠実かつ熱心に常用就職を目指した求職活動を行うことが義務付けられています。具体的には、以下のような活動報告が必要です。
- 自立相談支援機関との面談:月4回以上
- ハローワークでの職業相談:月2回以上
- 企業等への応募・面接:週1回以上
※自営業者の場合は、事業再生のための経営相談などが求職活動に代わる場合もあります。
支給額はいくら?支給期間と計算方法をわかりやすく解説
支給額の計算方法
支給額は、世帯収入と自治体が定める基準額によって変動します。
- 世帯収入が「基準額」以下の場合:家賃額を全額支給(ただし、自治体の定める上限額まで)
- 世帯収入が「基準額」を超える場合:「基準額 + 家賃額 - 世帯収入額」で計算された額を支給
支給されるのは家賃の実費分のみで、管理費や共益費、駐車場代などは対象外です。また、支給額には自治体・世帯人数ごとに上限が設けられています。
支給期間と延長・再支給
支給期間は原則3ヶ月間です。ただし、受給中に誠実に求職活動を行っても常用就職できなかった場合など、一定の要件を満たせば、申請により3ヶ月間の延長が2回まで可能です。これにより、最長で9ヶ月間の支援を受けられます。また、一度受給が終了した後でも、会社の都合による解雇などで再び困窮した場合、一定期間を空ければ再申請(再支給)できる可能性があります。
【5ステップ】住居確保給付金の申請から支給までの流れ
申請手続きは、お住まいの地域の「自立相談支援機関」で行います。どこにあるかわからない場合は、市区町村の役所の福祉担当課に問い合わせてみましょう。
- ステップ1:自立相談支援機関への相談
まずは電話などで連絡し、現在の状況を相談します。来所の予約を取り、制度の説明を受けます。 - ステップ2:必要書類の準備
申請に必要な書類を揃えます。書類が多岐にわたるため、リストを元に漏れなく準備しましょう。 - ステップ3:申請書の提出
揃えた書類とともに申請書を窓口に提出します。多くの自治体では郵送申請を受け付けていないため、直接窓口での手続きが必要です。 - ステップ4:審査・支給決定
提出された書類を基に、自治体が審査を行います。審査には数週間かかる場合があります。支給が決定されると「支給決定通知書」が届きます。 - ステップ5:家賃の支給(代理納付)
自治体から、大家さんや不動産会社の口座へ家賃が直接振り込まれます。申請者本人に現金が渡るわけではありません。
申請に必要な主な書類リスト
- 住居確保給付金支給申請書、申請時確認書(窓口で配布)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 世帯全員分の住民票の写し(マイナンバー記載なし)
- 離職・廃業が確認できる書類(離職票など)または収入減少がわかる書類(給与明細、シフト表など)
- 世帯全員の収入が確認できる書類(直近の給与明細、年金通知書など)
- 世帯全員の金融資産が確認できる書類(すべての預貯金通帳の写しなど)
- 賃貸借契約書の写し
- 入居住宅に関する状況通知書(大家さんや不動産会社に記入を依頼)
※自治体によって必要書類が異なる場合があります。必ず事前に確認してください。
【Q&A】住居確保給付金に関するよくある質問
Q1. フリーランスや自営業者も対象になりますか?
はい、対象になります。廃業した場合だけでなく、本人の責任によらず仕事が減少し、離職・廃業と同程度まで収入が減った場合も対象となります。収入減少を証明する書類(売上台帳、発注が減少したことがわかるメールなど)が必要になります。
Q2. アルバイトで生計を立てている学生は対象ですか?
はい、対象となる可能性があります。学費も生活費もご自身のアルバイト収入で賄っており、そのアルバイトがシフト減などで収入が大幅に減少した場合、「主たる生計維持者」であり「収入が減少した」という要件に該当すれば対象となり得ます。詳しくは相談窓口で確認してください。
Q3. 支給された給付金は返済する必要がありますか?
いいえ、返済の必要はありません。住居確保給付金は「貸付」ではなく「給付」ですので、不正受給が発覚した場合を除き、返済義務は一切ありません。
Q4. 生活保護との違いは何ですか?併用はできますか?
住居確保給付金は家賃に特化した支援であり、生活費は対象外です。一方、生活保護は生活費全般(住宅扶助含む)を支援する制度です。原則として、生活保護を受給している方は住居確保給付金の対象外となり、併用はできません。家賃だけでなく生活費全般に困窮している場合は、生活保護の申請も検討することになります。
Q5. 転居費用も対象になりますか?
一部の自治体では、家計改善のために現在の住居より家賃の安い物件への転居が必要と判断された場合に、転居費用(礼金、仲介手数料、家財運搬費など)を補助する制度もあります。これも住居確保給付金事業の一環ですが、要件が異なるため、希望する場合は相談窓口で詳細を確認してください。
まとめ:家賃の支払いに困ったら、まずは地域の相談窓口へ
住居確保給付金は、予期せぬ離職や減収によって住まいを失う危機に瀕した際の、非常に心強いセーフティネットです。
- ポイント1:離職・減収で家賃の支払いが困難な方が対象。
- ポイント2:収入・資産要件があり、自治体ごとに基準が異なる。
- ポイント3:家賃相当額が原則3ヶ月(最大9ヶ月)支給され、返済は不要。
- ポイント4:申請には多くの書類が必要。早めに準備を始めることが重要。
もしあなたが「来月の家賃、どうしよう…」と一人で悩んでいるなら、決して諦めないでください。まずは勇気を出して、お住まいの市区町村の自立相談支援機関に電話をしてみましょう。専門の相談員が、あなたの状況に寄り添い、解決への道を一緒に探してくれます。この制度を活用し、生活の基盤を立て直すための一歩を踏み出しましょう。