1. 革新的原子力技術開発支援事業(NEXIP)の概要
2050年のカーボンニュートラル達成に向け、世界各国で脱炭素技術の開発競争が激化しています。その中で、実用段階にある脱炭素電源として原子力の重要性が再認識されています。日本政府は、経済産業省と文部科学省が連携し、原子力分野のイノベーションを連続的に促進する「NEXIP(Nuclear Energy × Innovation Promotion)イニシアチブ」を推進しています。本事業は、このNEXIPの中核をなし、原子力の安全性・信頼性・効率性を抜本的に高める革新的な技術開発を支援するものです。
この事業の目的
- 次世代革新炉(SMR、高速炉等)開発で世界をリードする日本の技術力を強化する。
- 原子力によるカーボンフリー水素製造など、多様な産業利用の可能性を追求する。
- 産学官の連携を強化し、基礎研究から社会実装までシームレスな研究開発体制を構築する。
2. 助成金の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
事業名 | 社会的要請に応える革新的な原子力技術開発支援事業 / 原子力システム研究開発事業 (NEXIPイニシアチブ) |
実施組織 | 経済産業省 資源エネルギー庁、文部科学省 研究開発局 |
支援規模 | プログラムにより異なる(例:基盤チーム型 上限1億円/年、ボトルネック課題解決型 上限3,000万円/年など) |
対象者 | 原子力関連の革新的な技術開発に取り組む大学、研究機関、民間企業、およびそれらで構成される産学官連携チーム |
公募期間 | 例年2月~4月頃(※年度により変動するため、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください) |
3. 主要な支援プログラムと対象分野
NEXIPイニシアチブは、基礎研究から実用化開発まで、複数のプログラムで構成されています。代表的なものを紹介します。
経済産業省:革新的原子力技術開発支援
主に社会実装に近い技術開発やフィージビリティスタディ(F/S)を支援します。
- 小型モジュール炉(SMR): NuScale SMRやBWRX-300など、海外の実証プロジェクトと連携した開発。
- 高速炉: 放射性廃棄物の減容化・有害度低減を目指す次世代炉の開発。日米・日仏の国際協力も活用。
- 高温ガス炉: 950℃の高温熱を利用したカーボンフリー水素製造や熱利用技術の開発。
- 溶融塩炉: 次世代の革新炉として期待される技術の基礎研究。
文部科学省:原子力システム研究開発事業
イノベーションの源泉となる戦略的な基礎・基盤研究を支援します。
- 基盤チーム型: 産学官がチームを組み、重点領域の基礎・基盤研究を推進。
- ボトルネック課題解決型: 社会実装の障壁となっている技術的課題の解決を目指す研究。
- 新発想型: 従来の枠にとらわれない、挑戦的・ゲームチェンジングなアイデアを支援。
4. 申請プロセス
申請から事業開始までの一般的な流れは以下の通りです。
- 公募情報の確認: 経済産業省や文部科学省、または事業の公式サイトで公募要領を確認します。
- 提案書の作成: 研究開発の目的、計画、実施体制、予算などを詳細に記述した提案書を作成します。
- 申請手続き: 多くの場合、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)等を利用した電子申請となります。
- 審査: 専門家で構成される審査委員会により、提案内容の新規性、実現可能性、社会的インパクトなどが評価されます。
- 採択・契約: 採択決定後、国との委託契約または補助金交付手続きを進めます。
- 事業開始: 契約締結後、研究開発プロジェクトを開始します。
申請の重要ポイント
本事業は国家戦略上、極めて重要な研究開発を対象とするため、技術的な優位性だけでなく、社会実装までの具体的なロードマップや、産業界への波及効果を明確に示すことが採択の鍵となります。特に、産学官の強みを結集した連携体制の構築が強く推奨されています。
5. お問い合わせ・公式サイト
最新の公募情報や詳細な資料は、公式サイトをご確認ください。
【お問い合わせ先】
- 経済産業省 資源エネルギー庁 原子力政策課
- 文部科学省 研究開発局 原子力課