「後継者が見つからない」「事業の将来が不安だ」…そんな悩みを抱える経営者様へ。この記事では、国や自治体が提供する事業承継・引継ぎに関する補助金や支援策を網羅的に解説します。M&A、親族内承継、第三者への引継ぎなど、あらゆるケースで活用できる情報をまとめました。あなたの会社の未来を切り拓くヒントがここにあります。
事業承継はなぜ今、重要なのか?
現在、日本の中小企業は深刻な後継者不足に直面しています。経営者の高齢化が進む一方で、適切な後継者が見つからず、価値ある技術や事業が廃業の危機に瀕しているケースが少なくありません。この状況は、日本経済全体にとっても大きな損失です。
政府はこの問題を喫緊の課題と捉え、予算、税制、制度など多角的な支援策を打ち出しています。円滑な事業承継は、雇用の維持、地域経済の活性化、そして日本の技術力の継承に不可欠なのです。
【全体像】事業承継のプロセスと支援策
事業承継は大きく分けて4つのプロセスで進みます。各段階で活用できる支援策を理解し、計画的に準備を進めましょう。
- 気付き(承継準備の必要性)
専門家による「事業承継診断」などを通じて、自社の現状と課題を把握する段階です。
→ 主な支援策: 事業承継ネットワークによる相談・診断 - 承継準備(計画策定、マッチング等)
具体的な事業承継計画を策定し、後継者候補を探す段階。親族内か、従業員か、第三者(M&A)かを検討します。
→ 主な支援策: 事業承継・引継ぎ支援センター、後継者人材バンク、M&Aマッチングサイト - 事業承継の実行
株式譲渡や資産の移転など、法務・税務手続きを実行する段階。資金調達や税負担の軽減が重要になります。
→ 主な支援策: 事業承継税制、各種融資制度、補助金 - 承継後の成長・発展
新体制で経営基盤を強化し、新たな事業展開を目指す段階です。
→ 主な支援策: 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)、専門家派遣
最重要!「事業承継・引継ぎ補助金」を徹底解説
事業承継関連の支援策の中でも、特に活用したいのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。事業承継を機に行う新しい取り組みや、M&Aにかかる専門家費用などを幅広く支援してくれます。
補助金の概要と支援類型
この補助金は、事業承継の形態に応じて主に以下の類型に分かれています。※下記は過去の公募内容を参考にしたものです。最新の公募では内容が変更される可能性があります。
支援類型 | 概要 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
経営革新 | 事業承継を機に行う設備投資、販路開拓、業態転換などの新たな取組を支援 | 1/2 or 2/3 | 最大500万円程度 |
専門家活用 | M&A時の仲介手数料、デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用などを支援 | 1/2 or 2/3 | 最大400万円程度 |
廃業・再チャレンジ | 事業引継ぎに伴う廃業費用(在庫処分、原状回復など)を支援 | 1/2 or 2/3 | 上記に上乗せあり |
※補助率・上限額は公募回により変動します。必ず最新の公募要領をご確認ください。
補助対象経費の例
経営革新
- 人件費、店舗等借入費
- 設備費、原材料費
- マーケティング調査費、広報費
- 外注費、委託費
専門家活用
- M&A仲介手数料、FA費用
- デューデリジェンス費用
- 企業価値評価費用
- 表明保証保険の保険料
⚠️ 注意点
この補助金は非常に人気が高く、申請には説得力のある事業計画書が不可欠です。公募期間も限られているため、専門家と連携し、早めに準備を始めることを強くお勧めします。最新の公募情報は中小企業庁のウェブサイトなどで必ず確認してください。
後継者教育を支援!「事業承継トライアル」
社外の第三者を後継者候補として迎え入れたい場合に活用できるのが「事業承継トライアル」です。後継者候補のマッチングから、後継者教育の実施、経営の引き継ぎにかかる経費の一部が補助されます。
- 後継者候補の選定支援: 人材紹介会社などと連携し、自社に合った後継者候補を探すプロセスを支援。
- 後継者教育の実施: マッチング後、後継者候補が経営スキルを習得するための教育プログラム費用を補助。
- 経営引き継ぎ支援: 譲渡企業の経営者と後継者が共同で事業計画策定などを行う際の経費を補助。
その他にもある!多様な事業承継支援策
補助金以外にも、事業承継を後押しする様々な制度があります。自社の状況に合わせて組み合わせて活用しましょう。
1. 相談窓口・マッチング支援
何から始めれば良いかわからない場合は、まず専門の相談窓口を利用しましょう。
- 事業承継・引継ぎ支援センター: 全国47都道府県に設置。親族内承継からM&Aまでワンストップで無料相談に対応。
- 後継者人材バンク: 後継者不在の事業者と創業意欲のある人材をマッチング。
- M&Aプラットフォーム(Batonzなど): オンラインでM&Aの相手先を探せるサービス。多くの自治体や金融機関と連携しています。
2. 税制優遇(事業承継税制)
事業承継時の大きな負担となる相続税・贈与税の納税を100%猶予する制度です。法人版(株式が対象)と個人版(事業用資産が対象)があり、一定の要件を満たすことで適用されます。非常に強力な制度ですが、手続きが複雑なため税理士などの専門家への相談が必須です。
3. 資金調達(融資・保証制度)
株式の買取資金や承継後の設備投資資金など、必要な資金を調達するための制度も充実しています。
- 日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化資金」: 低利で長期の融資が受けられます。
- 信用保証協会「事業承継特別保証制度」: 経営者保証を不要とする保証制度。後継者の負担を大幅に軽減できます。
- 各自治体の制度融資: 都道府県や市町村が設けている独自の融資制度。
まとめ:未来へ事業をつなぐために、今すぐ行動を
後継者不足は待ったなしの課題ですが、見てきたように、国や地域は事業承継を強力にバックアップする体制を整えています。大切なのは、早期に準備を開始し、専門家の力を借りながら最適な支援策を組み合わせて活用することです。
事業承継の第一歩は「相談」から
まずは最寄りの「事業承継・引継ぎ支援センター」や取引金融機関、顧問税理士などに相談してみましょう。自社の状況を客観的に把握し、未来への道筋を描くことが、成功への鍵となります。