女性の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」。経済産業省は、このフェムテックを活用して女性の就業継続を支援し、企業の価値向上を目指す「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を実施しています。本記事では、この補助金の概要から申請方法、採択のポイント、具体的な採択事例までをプロが徹底解説します。
フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金とは?
本補助金は、働く女性が妊娠・出産、更年期といったライフイベントを理由に望まない離職をすることを防ぐため、フェムテック等のサービスを活用した実証事業を支援するものです。女性特有の健康課題を個人だけの問題とせず、企業や社会全体で解決していくアプローチを後押しし、人材の多様性を高め、中長期的な企業価値の向上を図ることを目的としています。
事業の3つの柱
この事業は、単に製品開発を支援するだけでなく、社会全体の意識変革を目指しています。
- 気づく、知る、受け入れる:女性自身と周囲の人々が健康課題への理解を深め、サポートを利用する「新たな当たり前」の創出を支援します。
- 企業や自治体との連携:フェムテック企業だけでなく、導入企業や自治体との連携を促進し、ライフステージに合った包括的なサポート体制の構築を目指します。
- 働き方を考える:女性の健康課題への配慮が、職場のマネジメント改善や多様な働き方の実現につながり、誰もが働きやすい環境づくりを推進します。
補助金の詳細【令和7年度(2025年度)】
公募は例年4月頃に開始されます。最新情報は公式サイトで必ずご確認ください。ここでは、過去の公募情報に基づいた概要を解説します。
補助対象者 | フェムテック企業、導入企業、医療機関、自治体等による連携体、または連携体を構成する事業者(単体・複数問わず) |
補助額 | 上限500万円 |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
補助対象事業 | フェムテック等の製品・サービスを活用し、働く女性のウェルビーイング実現に向けた実証事業(例:月経・不妊・更年期と仕事の両立支援、ヘルスリテラシー向上事業など) |
対象経費 | 人件費、事業費(謝金、旅費、消耗品費、会議費、広報費など)、委託・外注費など |
申請から採択までの流れ
一般的な申請プロセスは以下の通りです。公募開始から採択決定まで約3〜4ヶ月かかります。
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1
公募開始(例年4月頃)
公式サイトにて公募要領が公開されます。事業内容やスケジュールを熟読しましょう。 -
2
申請準備・提出(例年5月〜6月頃)
事業計画書や経費明細書など必要書類を作成し、電子申請システム(Jグランツ等)で提出します。 -
3
審査
外部有識者による審査委員会で、事業の新規性、社会へのインパクト、実現可能性などが審査されます。 -
4
採択決定・事業開始(例年7月〜8月頃)
採択事業者が公式サイトで発表され、交付決定後に実証事業を開始します。
採択のポイントと過去の採択事例
採択されるための重要ポイント
- 連携体制の構築:単独の事業者だけでなく、導入企業や自治体、医療機関など、複数のステークホルダーを巻き込んだ具体的な連携計画が評価されます。
- 課題解決の具体性:どのような社会課題を、どのように解決するのか。事業の目的と成果(KPI)が明確で、説得力があることが重要です。
- 社会への波及効果:実証事業の成果が、特定の企業だけでなく、業界全体や地域社会へどのように広がっていくかのビジョンが求められます。
【令和7年度採択速報】株式会社With Midwifeの事例
2025年8月29日に発表された令和7年度の採択事業者の一つ、株式会社With Midwifeは、令和3年度に続き2度目の採択となりました。今回の実証事業では、企業向けの健康相談サービス「THE CARE」において、ストレスチェックデータと女性特有の健康課題の相関性を分析し、個別の伴走支援や的確な集団研修を通じて、企業の健康経営と女性活躍を支援する計画です。このように、既存の仕組み(ストレスチェック)とデータを活用した先進的な取り組みが高く評価されています。
過去の採択事業ピックアップ
これまでにも多様な事業が採択されています。自社の事業計画を練る際の参考にしてください。
事業者名 | 事業概要 | 関連キーワード |
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ライオン株式会社 (R6) | 「考え方のくせ」を変えるプログラムで女性特有の不調との付き合い方をサポート | 月経・PMS, 更年期 |
豊田通商株式会社 (R5) | 製造現場の女性が我慢しない魅力的な職場環境を整備し「モノづくり力」を強化 | 月経・PMS, 更年期, ヘルスリテラシー |
沖縄セルラー電話株式会社 (R4) | 不眠に悩む働く女性の睡眠を可視化し、原因特定と改善をサポート | 更年期 |
メロディ・インターナショナル株式会社 (R3) | 周産期遠隔医療プラットフォームを活用し、自治体と連携して仕事と安全な妊娠・出産の両立を支援 | 妊娠・不妊, ヘルスリテラシー |
まとめ:社会を動かす一歩を踏み出そう
「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」は、資金的な支援だけでなく、企業や自治体を巻き込み、社会全体のウェルビーイング向上に貢献できる大きなチャンスです。女性の健康課題解決という社会的意義と、企業の持続的成長という経済的価値を両立させる事業計画を立て、ぜひ挑戦してみてください。