人口減少や高齢化が進む中、デジタル技術を活用した地域課題の解決が急務となっています。この記事では、総務省が推進する令和7年度(2025年度)概算要求の目玉施策「地域社会DX推進パッケージ事業」について、その全体像から具体的な支援メニューまでをプロの視点で徹底解説します。地方自治体や地域企業の皆様は必見です。
事業概要|地域社会DX推進パッケージ事業
事業名 | 地域社会DX推進パッケージ事業 |
実施機関 | 総務省 |
目的 | デジタル技術の実装(地域社会DX)を通じた省力化・地域活性化等による地域社会課題の解決。デジタル実装の好事例を創出し、全国における早期実用化を目指す。 |
対象者 | 地方公共団体、および地方公共団体とコンソーシアムを形成する民間企業・団体など |
公募時期 | 令和7年度(2025年度)に公募開始予定(詳細は後日発表) |
この事業のポイント
- 総合的な支援: 人材確保から計画策定、実証、インフラ整備までを一気通貫でサポート。
- 多様なメニュー: 自治体や企業のステージに合わせて、専門家派遣、実証事業、補助事業など多彩な支援を選択可能。
- 先進技術の活用: ローカル5GやAI、自動運転など、最新技術の実装を強力に後押し。
事業の3つの柱と具体的な支援内容
本事業は、地域DXを成功に導くための3つの大きな柱で構成されています。それぞれの柱に複数の支援メニューが用意されており、地域のニーズに応じて柔軟に活用できます。
① デジタル人材/体制の確保支援
DX推進の最大の課題である「人材」と「体制」の構築を強力にバックアップします。
- 推進体制構築支援: 専門家を地方公共団体に通年派遣し、課題整理から推進体制の構築まで伴走支援します。
- 計画策定支援: コンサルタント等の専門家が3ヶ月程度、デジタル技術導入に向けた計画策定を支援します。
- 地域情報化アドバイザー派遣制度: ICTの知見を持つ専門家を派遣し、利活用に関する助言を行います(旅費・謝金は総務省負担)。
- 人材ハブ機能(新規): 地域が求めるデジタル人材を全国からマッチングする「デジタル人材ハブ」を設置します。
② 先進的ソリューションの実用化支援(実証事業)
AIや自動運転など、先進的なソリューションの実用化に向けた実証事業を支援します。事業形態は定額補助(請負)となります。
タイプ | 内容 | 事業規模の目安 |
---|---|---|
先進無線システム活用タイプ | ローカル5G、Wi-Fi HaLow/6E/7などを活用した先進的ソリューションの実証 | 1千万円~1億円程度 |
AI検証タイプ(新規) | 既存の通信インフラと組み合わせたAIソリューションモデル(エッジAI等)の検証 | 1億円程度 |
自動運転レベル4検証タイプ | 地域限定型の無人自動運転移動サービスに必要な通信システムの信頼性確保等の検証 | 上限2.5億円程度 |
③ 地域のデジタル基盤の整備支援(補助事業)
地域課題解決に必要な通信インフラ(ローカル5G、LPWA等)や、それに接続するソリューション機器の整備費用を補助します。
- 補助率: 補助対象経費の 1/2
- 補助対象: 無線ネットワーク設備(ローカル5G、Wi-Fi、LPWA等)、ソリューション機器(カメラ、センサー等)、および関連する設備・ソフトウェア
- 地方債の活用: 地方公共団体が実施主体の場合、自己負担分について過疎対策事業債などの地方債を起債することが可能です。
関連施策:通信・放送インフラの強靱化
「国土強靱化基本計画」に基づき、災害に強い情報通信インフラの整備も加速化されます。地域DXの基盤となるこれらの施策も併せて確認しておきましょう。
主なインフラ強靱化支援策
- 災害時における携帯電話基地局等の強靱化対策事業: 停電や伝送路断に備え、基地局に大容量蓄電池や衛星回線を整備する費用を補助。
- 情報通信インフラ整備加速化パッケージ: 条件不利地域における光ファイバや5G基地局の整備を支援。
- ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業: ケーブルテレビ網の光化・複線化による耐災害性強化を支援。
- 地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達: 消防庁とも連携し、地デジ波(IPDC方式)を活用した災害情報伝達システムの整備を推進。既存のテレビインフラを活用できるため、低コストで強靱な情報伝達網を構築可能です。
申請のポイントと注意点
- 概算要求段階: 本記事の内容は令和7年度の概算要求に基づくものであり、今後内容が変更される可能性があります。必ず公募開始後に正式な公募要領をご確認ください。
- 連携体制の構築: 多くのメニューで地方公共団体との連携が必須となります。地域の課題を共有し、民間企業、大学、金融機関など多様な主体を巻き込んだコンソーシアムを早期に形成することが採択の鍵となります。
- 情報収集: 総務省が開設した「地域社会DXナビ」では、優良事例やノウハウが随時発信されています。情報収集に活用しましょう。
まとめ
総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業」は、地域が抱える課題をデジタル技術で解決するための強力な支援策です。人材育成からインフラ整備まで、切れ目のないサポートが提供される点が大きな魅力です。令和7年度の公募開始に向けて、今から地域の課題を整理し、連携体制を構築するなど、準備を進めてみてはいかがでしょうか。