自動車事故による重度の後遺障害を負われた方々が、安心して地域で生活できる環境を整備するため、国土交通省は「自動車事故被害者支援体制等整備事業」を実施しています。この事業は、被害者を受け入れる医療機関や介護施設に対し、設備導入や人材確保にかかる費用を補助するものです。本記事では、この重要な補助金の5つの支援事業について、対象者や補助内容を詳しく解説します。
補助金の概要
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 令和7年度 自動車事故被害者支援体制等整備事業 |
実施機関 | 国土交通省 物流・自動車局 |
対象者 | 障害者支援施設、グループホーム、短期入院協力病院、短期入所協力施設、自立訓練事業所、居宅介護・重度訪問介護事業所など |
補助上限額 | 事業により異なる(最大1,500万円) |
申請期間 | 執行団体決定後、公募開始予定(詳細は公式サイトをご確認ください) |
5つの支援事業を徹底解説
本事業は、支援内容に応じて5つの間接補助事業に分かれています。それぞれの事業内容を確認し、ご自身の施設に合ったものを見つけましょう。
① 自動車事故被害者受入環境整備事業
いわゆる「介護者なき後」に備え、重度後遺障害者が地域で安心して生活できるよう、障害者支援施設やグループホームの受入環境整備を支援します。
- 対象事業者: 障害者支援施設、共同生活援助(グループホーム)を行う事業者
- 支援内容: 事業所の開設支援、設備導入(介護器具等)、人材確保・育成(人材雇用費、賃金改善費、求人情報発信費、研修費)
- 補助上限額: 新設支援 1,500万円、継続支援 1,000万円
② 短期入院協力事業
介護者の休息(レスパイト)や病気などの際に、重度後遺障害者が安心して短期入院できるよう、国土交通省が指定する「短期入院協力病院」の体制整備を支援します。
- 対象事業者: 国土交通省が指定した短期入院協力病院
- 支援内容: 入院施設支援費(特殊浴槽、リハビリ機器等)、利用促進等事務費(研修、広報、プラン作成費等)
- 補助上限額: 受入実績に応じて400万円~800万円の範囲で設定
③ 短期入所協力事業
短期入院と同様に、重度後遺障害者が安心して短期入所(ショートステイ)を利用できるよう、指定協力施設の体制整備を支援します。
- 対象事業者: 国土交通省が指定した短期入所協力施設(障害者支援施設等)
- 支援内容: 入所施設支援費(介護器具等)、利用促進等事務費、人材雇用費(重点支援施設のみ)
- 補助上限額: 受入実績や条件により変動(重点支援施設は最大1,000万円)
④ 社会復帰促進事業
自動車事故による高次脳機能障害を有する方の社会復帰を促進するため、専門的な自立訓練を提供する事業者の支援体制構築を補助します。
- 対象事業者: 自立訓練(機能訓練・生活訓練)を行う事業所
- 支援内容: ネットワーク構築支援費、自立訓練提供支援費、地域連携支援費(人材雇用費、求人費、研修費等を含む)
- 補助上限額: 最大1,200万円(初年度)
⑤ 在宅療養環境整備事業
重度後遺障害者が自宅での生活を継続できるよう、訪問系サービスを提供する事業者の人材確保等を支援します。
- 対象事業者: 居宅介護、重度訪問介護を行う事業者
- 支援内容: 事業所の開設支援、人材確保・育成(人材雇用費、賃金改善費、求人情報発信費、研修費)
- 補助上限額: 新設支援 300万円、継続支援 200万円
補助対象経費の具体例
この補助金では、質の高いケアを提供するために必要な様々な経費が対象となります。特に設備投資に関する支援が手厚いのが特徴です。
経費区分 | 具体例 |
---|---|
施設支援費 (設備導入) |
特殊浴槽、介護用ベッド、移動用リフト、床ずれ予防対策用具、監視カメラ装置、意思伝達装置、痰吸引装置、各種リハビリ機器 など |
人材関連費 | 新規職員の雇用にかかる給与・賞与、職員の賃金改善費用、求人サイト掲載料、職業紹介手数料、研修参加費、講師謝金 など |
その他経費 | 広報活動費(パンフレット作成等)、短期入院・入所プラン作成費、医学図書等の備品購入費 など |
申請の基本的な流れ
本事業は、国が選定した「補助金執行団体」を通じて間接的に補助が行われます。事業者様の申請は、この執行団体に対して行います。
- 【国】補助金執行団体の公募・決定
国土交通省が、補助金交付の実務を行う団体を公募し、決定します。(令和7年度は3月に公募済) - 【執行団体】間接補助事業の公募開始
決定した執行団体が、公式サイト等で各支援事業の公募を開始します。 - 【事業者】申請書類の提出
公募要領に従い、申請書や事業計画書を作成し、執行団体に提出します。 - 【執行団体】審査・採択通知
提出された書類に基づき審査が行われ、採択・不採択の結果が通知されます。 - 【事業者】事業の実施・経費の支払い
交付決定後、計画に沿って事業を開始し、設備導入や人材雇用などの経費を支払います。 - 【事業者】実績報告書の提出
事業完了後、成果や経費の使用実績をまとめた報告書を執行団体に提出します。 - 【執行団体】補助金の交付
実績報告書の内容が承認されると、補助金額が確定し、指定口座に振り込まれます。
申請の重要ポイントと注意点
- 事前相談の推奨: 特に設備導入(入院施設支援費など)については、事業着手前に補助対象となるか事務局へ事前相談することが推奨されています。
- 交付決定前の発注は対象外: 補助金の交付決定通知を受ける前に発注・契約した経費は、原則として補助対象外となりますのでご注意ください。
- 事業計画の具体性: なぜその設備が必要なのか、導入によって被害者の療養環境がどう改善されるのかなど、具体的で説得力のある事業計画が採択の鍵となります。
- 消費税の取り扱い: 補助対象経費は、原則として消費税等を除いた金額で計上する必要があります。
まとめ
「自動車事故被害者支援体制等整備事業」は、自動車事故による重度後遺障害者の方々を支える医療・介護事業者の皆様にとって、施設環境の向上や人材確保の大きな助けとなる制度です。5つの事業から自施設に合った支援を選び、質の高いサービス提供に繋げることができます。公募情報は国土交通省のウェブサイトで発表されますので、定期的にチェックし、申請準備を進めましょう。