【総務省】地域課題解決のためのスマートシティ推進事業とは?
総務省が主導する「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」は、デジタル技術やデータを活用して地域が抱える多様な課題(防災、少子高齢化、地域活性化など)を解決し、地方創生を実現することを目的とした補助金制度です。この事業の最大の特徴は、各サービスやデータを連携させるための基盤となる「都市OS(データ連携基盤)」の導入を支援する点にあります。本記事では、この重要な補助金制度の概要から申請方法、採択されるためのポイントまで、専門家が徹底的に解説します。
事業概要が一目でわかる早見表
事業名 | 令和4年度 地域課題解決のためのスマートシティ推進事業 |
実施機関 | 総務省 |
対象者 | 都道府県、市町村、法人格を有する組織(地方公共団体との連携が条件) |
補助率・補助額 | 事業費総額の1/2以内 ※補助事業に係る事業費の下限額は100万円 |
公募期間(令和4年度) | 受付終了 (参考:令和4年5月16日(月)午前12時まで) |
目的 | 都市OS/データ連携基盤の導入・改修や、それに接続するサービス・アセットの整備を通じて、地域課題の解決や地域活性化を実現する。 |
事業の核心:なぜ「都市OS」が重要なのか?
スマートシティの実現には、防災、交通、健康、観光といった様々な分野のデータを効率的に連携させることが不可欠です。しかし、各分野でシステムがバラバラに構築される「サイロ型」では、データの連携ができず、非効率な運用に陥りがちです。
❌ 従来のサイロ型

- 各分野でシステムが独立・分断
- データ連携が困難でコスト増大
- サービスの横展開ができない
✅ 本事業が目指すデータ連携型
)
- 都市OSがハブとなりデータを一元管理
- 分野横断的なデータ連携が容易
- 拡張性・再利用性が高く効率的
本事業は、この「データ連携型」を実現するための中核となる都市OSの導入を直接支援することで、持続可能で発展性のあるスマートシティの構築を後押しします。
補助対象となる経費の詳細
補助対象となる経費は、事業の実施に直接必要な「直接経費」と、それを管理するための「一般管理費」に大別されます。
補助対象経費一覧
- 物品費:設備備品費(PC、サーバー等)、消耗品費
- 人件費・謝金:事業に直接従事する担当者の人件費、専門家への謝金など
- 旅費:事業遂行に必要な交通費、宿泊費など
- その他:
- 外注費(業務請負費):システム構築等の外注費用
- 印刷製本費:資料、チラシ等の印刷費用
- 会議費:会場借上費、資料作成費など
- 通信運搬費:データ通信料、物品の運搬費など
- 光熱水料:機器の運転に必要な電気代など
- 一般管理費:直接経費の合計額の10%を上限として計上可能
⚠️ 補助対象外となる経費の例
以下の経費は原則として補助対象となりませんのでご注意ください。
- 建物の建設や不動産取得に関する経費
- 補助事業に直接関係のない打ち合わせ費用
- 借入金の支払利息や遅延損害金
- 団体の経理事務に従事する人件費
- 接待費、手土産代など、社会通念上不適切と認められる経費
- 交付決定日より前に発注・契約した経費
申請資格と重要な審査基準
申請できる団体
- 都道府県
- 市町村(一部事務組合又は広域連合を含む)
- 法人格を有する組織(株式会社、一般社団法人、NPO法人など)
※ただし、民間事業者等が申請主体となる場合は、関連する都道府県又は市区町村との間で、出資、包括連携協定、コンソーシアム組成等によりガバナンスが確立されていることが必須条件です。
採択を左右する5つの審査ポイント
審査は、主に以下の5つの観点から総合的に評価されます。申請書作成の際は、これらのポイントを強く意識することが重要です。
- 適合性:事業目的やスマートシティの基本理念(市民中心、課題解決志向など)に合致しているか。
- 具体性・実行性:首長のリーダーシップが発揮された推進体制や、実現可能な事業計画が組まれているか。
- 継続性:事業が単発で終わらず、補助終了後も(最低5年間)自立的・持続的に運営される見込みがあるか。資金計画も重要。
- 汎用性・発展性:構築したシステムが特定のベンダーに依存せず(ロックインの排除)、他地域でも応用できるような設計になっているか。
- 先進性:AIや5Gなどの先端技術を活用し、これまでにない有効な取り組みであるか。
💡 専門家からのアドバイス:財務省の調査報告から見る成功の鍵
財務省の調査(令和5年度)では、本事業の課題として「提供サービスの住民利用率の低さ」や「地域間・分野間のデータ連携が十分に進んでいない」点が指摘されています。このことから、採択を勝ち取るためには以下の点が極めて重要です。
- 「導入ありき」からの脱却:単に都市OSを導入するだけでなく、住民が本当に必要とするサービスは何かを徹底的に調査し、その課題解決に資する計画を立てること。
- 関係者との連携体制:計画段階から、庁内の関連部署や地域の民間企業、大学などを巻き込み、データ提供やサービス運営に関する具体的な協力体制を構築すること。
- データ連携の具体性:どのデータを、どの分野と連携させ、それによってどのような新しい価値やサービスが生まれるのかを、明確かつ具体的に示すこと。
これらの点を事業計画に盛り込むことで、審査員に事業の実行性と将来性を強くアピールできます。
申請手続きの流れ(令和4年度参考)
- 必要書類の準備:実施要領を確認し、「応募様式」や「セキュリティ導入チェックシート」などの指定書類を作成します。
- 書類の提出:提出期限までに、管轄の総合通信局等へメールで提出、または補助金申請システム「Jグランツ」で申請します。
- 審査(書面・ヒアリング):合同審査会による評価が行われます。必要に応じてヒアリングが実施されます。
- 採択候補先の選定:審査結果に基づき、採択候補先が選定されます。
- 交付決定:提案内容の最終確認後、正式に交付が決定され、事業開始となります。
まとめと公式サイト情報
「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」は、地域のDXを加速させるための非常に強力な支援制度です。成功の鍵は、技術導入そのものではなく、それを活用して「誰の」「どの課題を」解決するのかという明確なビジョンと、関係者を巻き込む実行力にあります。最新の公募情報は総務省のウェブサイトで発表されますので、関心のある自治体・企業の担当者様は定期的にご確認ください。
問い合わせ先(令和4年度参考)
総務省 情報流通行政局 地域通信振興課
電話: 03-5253-5756
※最新の公募に関する問い合わせ先は、必ず最新の実施要領をご確認ください。