「業務改善助成金」は、事業場内の最低賃金を引き上げ、同時に生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業・小規模事業者に対して、その費用の一部を助成する制度です。最低賃金の上昇に対応しつつ、企業の成長を後押しすることを目的としています。本記事では、令和7年度の業務改善助成金について、対象者、助成額、申請方法などを分かりやすく解説します。

業務改善助成金(令和7年度)の概要

まずは、制度の全体像を把握しましょう。以下に主要な項目をまとめました。

項目 内容
実施機関 厚生労働省
対象地域 全国
申請期間 2025年6月14日〜 ※予算の上限に達し次第、予告なく受付を終了する場合があります。
上限金額 最大600万円
対象事業者 中小企業、小規模事業者、個人事業主
公式ページ 厚生労働省 公式サイト

助成金の目的とメリット

この助成金の最大の目的は、賃金引き上げ(賃上げ)と生産性向上の両立を支援することです。近年、全国的に最低賃金が引き上げられる傾向にあり、事業者にとっては人件費の負担が増加しています。業務改善助成金は、その負担を軽減すると同時に、新たな設備投資を促すことで、企業の競争力強化をサポートします。

  • 賃上げの負担軽減:従業員の給与を引き上げる際の経済的負担を助成金でカバーできます。
  • 生産性の向上:新しい機械やソフトウェアの導入により、業務効率が向上し、長時間労働の是正にも繋がります。
  • 従業員満足度の向上:賃上げと働きやすい環境整備により、従業員のモチベーションアップや人材の定着が期待できます。

補助額と補助率の詳細

助成額は、事業場内最低賃金の引き上げ額や、引き上げる労働者の数によって変動します。上限額は最大で600万円です。

補助率は、事業場内最低賃金の金額に応じて以下のように設定されています。

  • 事業場内最低賃金が1,000円未満の場合:補助率 4/5
  • 事業場内最低賃金が1,000円以上の場合:補助率 3/4

例えば、100万円の設備投資を行った場合、最低賃金が1,000円未満の事業場では80万円、1,000円以上の事業場では75万円が助成される計算になります。賃上げ額や対象人数に応じたコース設定があるため、詳細は公式の公募要領を必ずご確認ください。

対象となる経費の具体例

本助成金は、生産性向上に繋がる幅広い経費が対象となります。以下に主な対象経費を挙げます。

  • 機械装置等費:業務効率化に繋がる新しい機械や設備の導入費用(例:POSレジシステム、自動釣銭機、高効率な製造機械など)
  • ソフトウェア購入費:勤怠管理システム、会計ソフト、予約管理システムなどの導入・更新費用
  • コンサルティング費用:生産性向上に関する外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)への相談費用
  • 委託費:業務の一部を外部に委託するための費用
  • その他:専門家謝金、旅費、借料、原材料費/資材費など

原則として、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などは対象外となる場合が多いため注意が必要です。

申請の流れと注意点

申請の基本的なステップ

  1. 事業実施計画の作成:どのような設備投資を行い、どのように賃金を引き上げるかの計画を立てます。
  2. 交付申請書の提出:計画書を添付し、管轄の都道府県労働局へ交付申請を行います。
  3. 交付決定:審査を経て、交付が決定されます。(交付決定前に発注・購入したものは対象外です)
  4. 計画の実施:計画に沿って設備投資や賃金の引き上げを実施します。
  5. 事業実績報告書の提出:事業完了後、かかった経費の領収書などを添えて実績を報告します。
  6. 助成金の受給:報告内容が認められると、助成金が振り込まれます。

申請時の注意点

  • 早期終了の可能性:国の予算には限りがあるため、申請期間中であっても早期に受付が終了することがあります。検討している場合は、早めに準備を進めましょう。
  • 電子申請の準備:近年、多くの補助金で電子申請システム「jGrants」の利用が推奨されています。jGrantsの利用には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要となり、発行に数週間かかる場合があるため、事前に取得しておくことをお勧めします。
  • 不正受給の禁止:虚偽の申請や目的外利用などの不正行為が発覚した場合、助成金の返還はもちろん、加算金の支払いや事業者名の公表、刑事罰の対象となる可能性があります。

まとめ

令和7年度の「業務改善助成金」は、最低賃金の引き上げという課題を、生産性向上というチャンスに変えるための強力な支援策です。設備投資や業務プロセスの見直しを検討している中小企業・小規模事業者の方は、ぜひこの機会に活用を検討してみてはいかがでしょうか。

公募はすでに開始されていますが、予算がなくなり次第終了となるため、迅速な対応が求められます。まずは公式サイトで詳細な公募要領を確認し、自社が対象となるか、どのような取り組みが可能かを確認することから始めましょう。