国土交通省が管轄する「被害者保護増進等事業費補助金」は、運送事業者や自動車整備事業者の安全対策と環境整備を強力に支援する制度です。デジタルタコグラフ(デジタコ)やドライブレコーダー、先進安全自動車(ASV)の導入、従業員の健康管理、整備用スキャンツールの導入など、幅広い経費が補助対象となります。本記事では、令和6年度補正予算と最新の令和7年度の情報を統合し、対象事業、申請期間、必要書類などを網羅的に解説します。
被害者保護増進等事業費補助金とは?
この補助金は、自動車事故の発生を未然に防ぐことを目的として、国土交通省が実施する重要な事業です。大きく分けて以下の2つの柱で構成されており、それぞれが事業者の安全性向上と近代化をサポートします。
- 自動車運送事業の安全総合対策事業:運送事業者(トラック、バス、タクシー等)を対象に、運行管理の高度化、過労運転防止、安全教育、ASV導入などを支援します。
- 先進安全自動車の整備環境の確保事業:自動車整備事業者を対象に、ASVの性能を維持するためのスキャンツール導入や研修受講を支援します。
多くの事業が先着順で受け付けられ、予算上限に達し次第終了となるため、早期の検討と申請が成功の鍵となります。
【令和7年度】公募事業の詳細
最新の令和7年度(2025年度)における主要な支援事業の概要です。申請を検討されている方は、各事業の期間と内容を必ずご確認ください。
自動車運送事業の安全総合対策事業
先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援
- 対象経費:衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置、後付け事故自動通報システム等のASV装置
- 対象者:中小の自動車運送事業者、リース事業者
- 申請受付期間:令和7年6月30日(月) ~ 令和8年1月30日(金)
- 実施団体:公益財団法人日本自動車輸送技術協会(JATA)
運行管理の高度化に対する支援
- 対象経費:デジタル式運行記録計(デジタコ)、映像記録型ドライブレコーダー、及びそれらの一体型機器
- 申請受付期間:令和7年7月31日(木) ~ 令和8年1月30日(金)
過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援
- 対象経費:遠隔点呼機器、自動点呼機器、運転者の疲労状態を測定する機器など
- 申請受付期間:令和7年7月31日(木) ~ 令和8年1月30日(金)
健康起因事故防止を推進するための取り組みに対する支援
- 対象経費:SAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニング検査、脳MRI検診、ABI検査、視野障害検査等に要する経費
- 申請受付期間:令和7年8月29日(金) ~ 令和8年1月30日(金)
先進安全自動車の整備環境の確保事業
先進安全自動車の整備環境の確保に対する支援
- 対象経費:スキャンツール(故障診断機)の導入費用、スキャンツール利活用のための研修受講費用
- 対象者:自動車整備事業者
- 申請受付期間:順次公開予定(令和6年度補正予算では受付中)
【令和6年度補正予算】受付延長中の事業
令和6年度補正予算事業の一部は、申請期間が延長され現在も受付中です。特に人気の高い機器が対象となっていますので、お見逃しなく。
【期間延長】運行管理の高度化に対する支援
デジタル式運行記録計、ドライブレコーダー(一体型含む)の導入支援は、令和8年1月30日(金)17時まで申請受付が延長されました。予算上限に達し次第終了となりますので、お早めの申請をお勧めします。
スキャンツール補助も受付中!
自動車整備事業者向けのスキャンツール導入支援も受付中です。前回交付を受けた方(異なる機器の場合)や、PCを買い替える方(PC分離型が必須)も対象となる場合があります。
申請方法と主な必要書類
申請は原則として、各事業の公式サイトに設置されるオンライン申請システムを利用します。申請にあたっては、事前に必要書類を準備しておくとスムーズです。
主な必要書類(例:ASV導入支援)
- 直近事業年度の事業報告書の写し(事業概況報告書、損益計算書、貸借対照表)
- 自動車検査証記録事項の写し
- 納品書の写し又は搭載証明書
- 領収書の写し(登録番号又は車台番号が記載されたもの)
- 振込先が確認出来る書類(通帳の写しなど)
- 【リース事業者のみ】賃貸借契約書の写し、リース料金算定根拠明細書など追加書類が必要
※申請する事業や内容によって必要書類は異なります。必ず公式の公募要領をご確認ください。
申請時の重要注意点
- 予算と先着順:全ての事業は国の予算に基づいており、申請額が予算上限に達した場合は期間内でも受付が終了します。
- 行政処分の確認:申請日から過去3年以内に運輸支局等から行政処分を受けていないことが要件となる場合があります。事前に確認が必要です。
- 財産処分制限:補助金で購入した機器は、一定期間(財産処分制限期間)、補助金の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供することができません。やむを得ず処分する場合は、事務局への事前承認と補助金の返納が必要になる場合があります。
まとめ
被害者保護増進等事業費補助金は、運送業界・整備業界の安全性を飛躍的に高めるための非常に有効な制度です。デジタコやASVの導入は、事故防止だけでなく、ドライバーの負担軽減や労務管理の効率化にも繋がります。年度や事業によって申請期間や要件が細かく分かれているため、自社が対象となる事業を公式サイトでしっかりと確認し、計画的に申請準備を進めましょう。
お問い合わせ先
令和7年度 被害者保護増進等事業費補助金事務局
電話番号: 03-4446-4346
受付時間: 9:00~18:00 (土日祝日、年末年始を除く)
※申請受付開始直後は電話が大変混み合いますので、時間をずらしておかけ直しください。
対象者・対象事業
自動車運送事業者(トラック、バス、タクシー等)、対象車両を貸し出すリース事業者、自動車整備事業者
必要書類(詳細)
【法人】事業報告書の写し、自動車検査証記録事項の写し、納品書または搭載証明書の写し、領収書の写し、振込先が確認できる書類など。※リース事業者や申請内容により追加書類が必要。
対象経費(詳細)
デジタル式運行記録計、映像記録型ドライブレコーダー、遠隔点呼機器、自動点呼機器、SASスクリーニング検査費用、脳MRI検診費用、スキャンツール導入費用、先進安全自動車(ASV)の導入費用(衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置等)など、事業区分により対象経費は異なります。