はじめに:令和7年度文化庁の予算案(概算要求)が公表!
文化庁は、令和7年度(2025年度)の予算として、総額1,400億円規模の概算要求を公表しました。この予算案には、文化芸術活動、文化財の保存活用、文化観光の推進など、幅広い分野の事業者や団体が活用できる補助金や支援事業が数多く盛り込まれています。
この記事では、文化芸術団体、博物館、劇場、地方公共団体、クリエイター、観光事業者など、文化関連の事業に携わる皆様が活用できる可能性のある支援策を、令和7年度文化庁概算要求の概要資料から分かりやすく解説します。今後の事業計画や資金調達の参考に、ぜひご一読ください。
令和7年度文化庁予算案の2つの柱
令和7年度の文化庁の概算要求は、大きく分けて以下の2つの柱で構成されています。それぞれの柱に、具体的な補助金・支援事業が紐づいています。
| 柱 | 要求・要望額 |
|---|---|
| 1. 文化資源の持続可能な保存・活用による好循環の構築 | 792億円+事項要求 |
| 2. 世界に誇る多様な文化芸術の創造・発信 | 559億円+事項要求 |
以下では、それぞれの柱に含まれる主要な支援事業について、対象者や内容を詳しく見ていきましょう。
【柱1】文化資源の保存・活用に関する支援事業
この柱は、国宝や重要文化財、史跡、伝統芸能といった貴重な文化資源を次世代に継承し、地域活性化や観光に活かしていくための取り組みを支援するものです。
対象となる方
- 地方公共団体
- 文化財の所有者・管理団体(寺社仏閣、個人、NPO法人など)
- 博物館、美術館
- 伝統芸能の保存団体
- 観光地域づくり法人(DMO)
主な支援事業の例
国宝・重要文化財建造物保存修理強化対策事業(要求額:134億円)
国宝や重要文化財に指定された建造物の根本修理、維持修理、防災対策、公開活用事業などを支援します。補助率は原則として対象経費の50%で、財政状況に応じた加算措置もあります。地域の宝である文化財を守り、観光資源として活用したい場合に最適です。
歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業(要求額:110億円)
城跡や遺跡などの史跡について、保存修理や歴史的建造物の復元、案内板やガイダンス施設の整備などを一体的に支援します。ARなどの先端技術を活用した活用事業も対象となり、地域の歴史的シンボルを観光の核として再生させる取り組みを後押しします。
地域文化財総合活用推進事業(要求額:22億円)
各地に古くから継承されている伝統行事、民俗芸能、文化遺産などを活用した人材育成(ボランティアガイド養成など)や普及啓発(シンポジウム開催、用具修理など)の取り組みを支援します。地域コミュニティの活性化と文化継承の両立を目指す事業です。
文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業(要求額:18億円)
博物館や美術館などを中核として、文化振興・観光振興・地域活性化の好循環を生み出す取り組みを支援します。インバウンド富裕層などをターゲットとした特別な体験コンテンツの開発や、夜間開館(ナイトミュージアム)などの高付加価値化が想定されます。
【柱2】文化芸術の創造・発信に関する支援事業
この柱は、舞台芸術、映画、メディア芸術といった多様な文化芸術の創造活動を支え、クリエイターを育成し、その成果を国内外に発信していくための取り組みを支援するものです。
対象となる方
- 芸術家、クリエイター(個人・団体)
- 文化芸術団体(オーケストラ、劇団など)
- 劇場、音楽堂、美術館
- 映画・メディア芸術関連事業者
- 文化芸術イベントの主催者
主な支援事業の例
舞台芸術等総合支援事業(要求額:106億円)
音楽、舞踊、演劇などの分野で、質の高い公演の創造・実施や、国内外への発信、人材育成などを総合的に支援します。コロナ禍を経て変化した公演形態(オンライン配信など)への対応も含まれる可能性があります。
日本映画の創造・振興プラン(要求額:13億円)
日本映画の企画開発から製作、海外展開、人材育成までを一体的に支援します。国際共同製作や、若手映画作家の育成なども対象となり、日本映画の国際競争力強化を目指します。
クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業(要求額:54億円)
新進芸術家の海外研修や、国内での制作活動を支援します。また、文化施設がデジタル技術などを活用して新たな鑑賞体験を提供するなど、高付加価値化を図る取り組みも支援対象です。
申請に向けての注意点
今回ご紹介した内容は、あくまで「概算要求」の段階のものです。今後、政府内での予算編成過程を経て、内容が変更されたり、事業名が変更されたりする可能性があります。
- 公募はこれから:各事業の具体的な公募要領や申請期間は、令和7年度(2025年4月)以降に順次、文化庁のウェブサイトで公開されます。
- 情報収集が鍵:関心のある事業については、文化庁のウェブサイトを定期的にチェックし、最新情報を逃さないようにしましょう。
まとめ
文化庁の令和7年度概算要求には、文化・芸術・観光分野の事業者にとって大きなビジネスチャンスとなる支援策が豊富に含まれています。自社の事業内容や将来のビジョンと合致する支援事業を見つけ、今のうちから情報収集と事業計画の準備を進めることが、採択への近道となります。文化の力で事業を成長させ、地域を活性化させるために、これらの制度を積極的に活用していきましょう。
対象者・対象事業
文化芸術団体、博物館、劇場・音楽堂、地方公共団体、クリエイター、観光事業者、文化財所有者・管理団体(寺社仏閣、NPO法人等)など、文化・芸術・観光に関連する幅広い事業者・団体
必要書類(詳細)
事業計画書、経費見積書、団体の定款・規約、決算書類など。各事業の公募要領によって異なります。
対象経費(詳細)
保存修理費、施設整備費、公演・展示会開催経費、調査研究費、人材育成費、デジタル化・オンライン配信経費、広報費、専門家謝金など、各事業の公募要領によります。