1. 物流拠点機能強化支援事業費補助金とは?
国土交通省が実施する「物流拠点機能強化支援事業費補助金(災害時の支援物資輸送体制構築促進事業)」は、災害時における支援物資の円滑な輸送体制(ラストマイル輸送)の構築・強化を目的とした補助金です。近年の能登半島地震など、大規模災害の教訓を踏まえ、地方公共団体と物流事業者が連携して行う「支援物資輸送訓練」にかかる経費の一部を支援します。
災害発生時、特に被災地への最終的な物資輸送(ラストマイル)では、物流専門家の不在や拠点運営の混乱が課題となります。この補助金を活用し、平時から官民連携による実践的な訓練を行うことで、有事の際に迅速かつ的確な物資輸送を実現し、地域全体の防災力向上を目指します。
制度概要(まとめ)
| 補助金名 | 物流拠点機能強化支援事業費補助金(災害時の支援物資輸送体制構築促進事業) |
|---|---|
| 実施機関 | 国土交通省 |
| 補助上限額 | 400万円 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 対象者 | 地方公共団体と物流事業者等で構成する協議会等 |
| 公募期間(四次) | 令和7年9月22日(月)~10月24日(金)【必着】 |
2. 補助金の背景と目的:なぜ今、官民連携の輸送訓練が必要なのか
能登半島地震の災害対応では、物流専門家の不足により、ラストマイルにおける支援物資の輸送や保管に混乱が生じたことが課題として挙げられました。多くの市町村では、輸送・保管・専門家派遣に関する物流事業者との協力協定が未締結であるという現状も明らかになっています。
このような背景から、本補助金は災害時のラストマイル輸送における人員不足等が懸念される自治体と、トラック・倉庫などの物流事業者が連携する訓練を支援します。これにより、各地域の実情に応じた災害時の円滑かつ迅速な支援物資輸送体制を確立し、維持・確保することを目的としています。
3. 補助対象事業と対象者
補助対象事業
補助の対象となるのは、地方公共団体と物流事業者等の官民が連携して実施する「災害時の支援物資輸送訓練」です。机上訓練・実働訓練のいずれも対象となります。
訓練を通じて、輸送の手配や物資拠点の運営等に係る災害協定の締結を目指す取り組みが支援されます。
補助対象事業者
申請できるのは、以下の事業者です。
- 地方公共団体(都道府県及び市区町村)と物流事業者等で構成する協議会等
単独の事業者や団体では申請できず、必ず官民が連携した「協議会」等を組成する必要があります。これから協議会を設立して申請することも可能です。
4. 補助対象経費・補助率・上限額
補助対象経費
訓練の実施に必要となる以下の経費が対象です。
- 企画制作費:訓練シナリオ作成、マニュアル作成など
- 旅費・交通費:訓練参加者や専門家の移動にかかる費用
- 諸謝金:物流専門家等の外部有識者に対する謝礼
- 資機材等借上げ経費:訓練に必要な車両、フォークリフト、通信機器などのレンタル費用
- 燃料費:訓練車両の燃料代
- 通信費:訓練中の通信手段確保にかかる費用
- 印刷製本費:訓練資料の印刷費用
- 消耗品費:訓練で使用する消耗品の購入費用
補助率と補助金上限額
- 補助率:補助対象経費の1/2以内
- 上限額:400万円
5. 申請方法と公募期間
公募期間(四次公募)
令和7年9月22日(月)~10月24日(金)【必着】
申請方法
国土交通省の公式サイトから交付要綱、実施要領、公募要領、申請様式をダウンロードし、内容を熟読の上、申請書類一式を郵送または電子メールで提出してください。
- 郵送の場合:
〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3
国土交通省物流・自動車局物流政策課「災害時の支援物資輸送体制構築促進事業」担当あて - 電子メールの場合:
hqt-saigai-kunren@ki.mlit.go.jp
※件名の冒頭に必ず「【申請】災害時物資輸送訓練補助事業」と記載してください。
6. 採択に向けた審査のポイント
提出された申請書類に基づき審査が行われます。審査では、主に以下の点が確認されます。
- 事業の目的合致性:提案内容が、災害時のラストマイル輸送体制の構築・強化という事業目的に合致しているか。
- 計画の実現可能性:事業の実施方法やスケジュールが現実的か。
- 実施体制:事業を遂行するための適切な体制(特に官民の連携体制)が構築されているか。
- 費用対効果:コストパフォーマンスが優れており、経費積算が適正か。
- 事業の継続性・発展性:訓練を一過性のものとせず、災害協定の締結や継続的な体制強化につながる計画となっているか。
7. 活用事例:災害に強い物流体制の構築
本補助金を活用した訓練は、過去の災害対応の教訓を活かした先進的な取り組みにつながります。例えば、東日本大震災では、岩手県トラック協会と岩手県が連携し、大規模な催事場を集積拠点とする「岩手方式」と呼ばれる効率的な物資輸送システムを構築しました。
この事例では、物流のプロであるトラック協会が主体となり、入荷した物資を保管せず即座に配送する「クロスドッキング方式」を採用。官民が役割分担し、円滑な連携を図ることで、混乱なく支援物資を被災地へ届けました。
本補助金を活用することで、このような先進事例を参考に、各地域の実情に合わせた独自の災害時物流マニュアルの作成や、実践的な連携体制の構築が期待できます。
8. まとめ
「物流拠点機能強化支援事業費補助金」は、災害時の「命の道」となる支援物資輸送体制を強化するための重要な制度です。自治体と物流事業者が平時から顔の見える関係を築き、共同で訓練を行うことは、いざという時の迅速な対応に直結します。
地域の防災力向上に関心のある地方公共団体および物流事業者の皆様は、ぜひ本補助金の活用をご検討ください。詳細は国土交通省の公式ウェブサイトをご確認ください。
対象者・対象事業
地方公共団体(都道府県及び市区町村)と物流事業者等で構成する協議会等
必要書類(詳細)
申請様式一式(交付申請書、事業計画書等)。詳細は国土交通省の公式サイトに掲載されている公募要領、交付要綱、実施要領をご確認ください。
対象経費(詳細)
訓練の実施に必要な企画制作費、旅費・交通費、物流専門家等の外部有識者に対する諸謝金、資機材等の借上げに係る経費、燃料費、通信費、印刷製本費、消耗品の購入等に係る経費