外国人労働者の採用や定着にお悩みの事業主様へ。言葉の壁や文化の違いを乗り越え、外国人材が安心して長く働ける職場環境を整備するための費用を国が支援する制度があるのをご存知ですか?それが「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」です。この記事では、最大72万円が支給される本助成金の概要から、対象となる取り組み、申請の流れまで、専門家が分かりやすく徹底解説します。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)とは?
本助成金は、外国人労働者が日本の労働法制や雇用慣行に不慣れなことや、言語の違いから生じるトラブルを防ぎ、職場への定着を促進することを目的としています。事業主が外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行った場合、その経費の一部が助成されます。
| 助成金名 | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) |
|---|---|
| 実施機関 | 厚生労働省 |
| 対象者 | 雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用し、就労環境の整備に取り組む事業主 |
| 支給額 | 最大72万円(支給対象経費の1/2または2/3) |
| 申請期間 | 通年受付(ただし、計画提出や支給申請には期限があります) |
助成金の対象となる事業主と労働者
対象事業主の主な要件
- 雇用保険の適用事業主であること。
- 「外国人雇用状況届出」を適正に提出していること。
- 認定された就労環境整備計画に基づき、計画期間内に措置を新たに導入・実施すること。
- 計画期間終了後12ヶ月間の外国人労働者の離職率が10%以下であること(人数により特例あり)。
- 事業主都合による解雇等を行っていないこと。
対象となる外国人労働者の要件
- 「外国人雇用状況届出」の対象となる者であること。
- 事業主に直接雇用され、労働契約を締結していること。
- 雇用保険の被保険者であること。
- 社会保険の適用事業所に雇用されている場合は、社会保険の被保険者であること。
支給対象となる5つの「就労環境整備措置」
重要ポイント
助成金を受給するには、【必須措置】の2つを両方実施し、さらに【選択措置】の3つから1つ以上を選んで実施する必要があります。
【必須】必ず実施が必要な2つの措置
① 雇用労務責任者の選任
外国人労働者の就労環境整備を担当する責任者を選任します。責任者は、3ヶ月に1回以上、全ての外国人労働者と面談し、結果を書面で記録する必要があります。
② 就業規則等の多言語化
就業規則や雇用契約書などを、外国人労働者の母国語など、理解できる言語に翻訳し、周知します。
【選択】いずれか1つ以上を実施する3つの措置
③ 苦情・相談体制の整備
母国語で対応できる相談窓口の設置や、外部機関への委託など、外国人労働者が気軽に苦情や相談をできる体制を整備します。
④ 一時帰国のための休暇制度の整備
年次有給休暇とは別に、一時帰国を希望する際に取得できる特別な有給休暇制度(1年間に連続5日以上)を設けます。
⑤ 社内マニュアル・標識類等の多言語化
安全衛生に関するマニュアルや、事業所内の標識などを多言語化し、業務の理解と安全を促進します。
支給額と対象経費
支給額は最大72万円!賃金アップで助成率も向上
支給額は、かかった経費に助成率を乗じて算出されます。さらに、外国人労働者の賃金を5%以上アップさせる「賃金要件」を満たすと、助成率が向上します。
| 条件 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 基本 | 1/2 | 57万円 |
| 賃金要件達成時 | 2/3 | 72万円 |
対象となる経費
助成の対象となるのは、計画期間内に外部の機関や専門家へ支払った以下の経費です。
- 通訳費
- 翻訳機器導入費(上限10万円)
- 翻訳料(マニュアル、標識類等を含む)
- 弁護士、社会保険労務士等への委託料(顧問料は除く)
- 社内標識類の設置・改修費
申請から受給までの4ステップ
-
1
就労環境整備計画の作成・提出どのような措置を導入するかを定めた計画書を作成し、管轄の労働局へ提出します。計画開始日の1ヶ月前までに提出が必要です。
-
2
計画認定後、措置の導入・実施労働局から計画の認定を受けたら、計画期間内(3ヶ月~1年)に定めた措置を導入し、外国人労働者に対して実施します。
-
3
離職率の評価(12ヶ月間)計画期間終了後、12ヶ月間の離職率が目標(外国人労働者10%以下等)を達成しているかを確認します。
-
4
支給申請評価期間終了後、2ヶ月以内に必要書類を揃えて労働局へ支給申請を行います。審査を経て、助成金が支給されます。
申請前に確認!重要なポイントと注意点
✅ 成果目標(離職率)がある助成金です
単に制度を導入するだけでなく、計画期間終了後1年間の離職率が10%以下になるという成果が求められます。日頃からのコミュニケーションが重要です。
✅ 「新たな」取り組みが対象です
計画提出時点ですでに実施している制度は対象外です。これから新たに取り組む内容で計画を立てる必要があります。
✅ 計画の事前提出が必須です
翻訳などを業者に発注した後では申請できません。必ず、措置を開始する前に計画を提出し、労働局の認定を受ける必要があります。
✅ 外部委託費用が中心です
自社の従業員が翻訳や通訳を行った場合の人件費は対象外です。原則として、外部の専門業者へ支払った費用が対象となる点に注意しましょう。
まとめ
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者の定着率向上を目指す事業主にとって非常に強力な支援策です。多言語対応や相談体制の整備にはコストがかかりますが、本助成金を活用することで、その負担を大幅に軽減できます。
外国人材が能力を最大限に発揮できる職場環境を整えることは、企業の持続的な成長に不可欠です。この機会にぜひ、助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
対象者・対象事業
雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用し、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(雇用労務責任者の選任、就業規則の多言語化等)に新たに取り組む事業主。
必要書類(詳細)
【計画申請時】就労環境整備計画書、事業所確認票、外国人労働者名簿、見積書、変更予定の就業規則案、離職率算定に関する書類等。【支給申請時】支給申請書、労働条件通知書、出勤簿、面談結果一覧表、多言語化した規程類、経費支払を証明する書類(領収書等)、支給要件確認申立書等。
対象経費(詳細)
計画期間内に外部機関等へ支払った以下の経費が対象です。(1)通訳費 (2)翻訳機器導入費(上限10万円) (3)翻訳料(社内マニュアル・標識類等を含む) (4)弁護士、社会保険労務士等への委託料(顧問料は除く) (5)社内標識類の設置・改修費
対象者・対象事業
雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用し、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(雇用労務責任者の選任、就業規則の多言語化等)に新たに取り組む事業主。
必要書類(詳細)
【計画申請時】就労環境整備計画書、事業所確認票、外国人労働者名簿、見積書、変更予定の就業規則案、離職率算定に関する書類等。【支給申請時】支給申請書、労働条件通知書、出勤簿、面談結果一覧表、多言語化した規程類、経費支払を証明する書類(領収書等)、支給要件確認申立書等。
対象経費(詳細)
計画期間内に外部機関等へ支払った以下の経費が対象です。(1)通訳費 (2)翻訳機器導入費(上限10万円) (3)翻訳料(社内マニュアル・標識類等を含む) (4)弁護士、社会保険労務士等への委託料(顧問料は除く) (5)社内標識類の設置・改修費