テレワークやワーケーションの普及に伴い、地方に新たな拠点を設ける「サテライトオフィス」に関心を持つ企業が増えています。しかし、いきなりの進出には不安も多いはず。そんな企業を強力に後押しするのが、総務省の「お試しサテライトオフィス推進事業」です。この記事では、制度の概要から具体的な自治体の補助金事例まで、専門家が分かりやすく解説します。
総務省「お試しサテライトオフィス推進事業」とは?
この事業は、都市部の企業が地方で「お試し勤務」を行うことを通じて、本格的なサテライトオフィス開設を促進することを目的とした国の制度です。地方自治体が主体となり、都市部企業の受け入れ環境を整備し、その経費の一部を国が特別交付税措置で支援する仕組みです。
この制度の3つのポイント
- 目的: 都市部企業の地方進出を「お試し」から支援し、新たな人の流れを創出する。
- 仕組み: 地方自治体が企業のお試し勤務をサポートし、国がその自治体を財政的に支援する。
- メリット: 企業は低コストで地方での働き方を体験でき、自治体は企業の具体的なニーズを把握できる。
補助の対象となる企業と経費
この制度を利用できるのは、主に三大都市圏に本社を置く企業です。具体的な要件と、自治体から支援を受けられる経費の例を見ていきましょう。
対象となる企業(都市部企業等)の主な要件
- 本店または主たる事務所が三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、奈良)にあること。
- 地方自治体でおおむね3日以上のお試し勤務を行うこと。
- 将来的なサテライトオフィスの開設を検討していること。
- 自治体が実施するアンケート調査等に協力すること。
※個人事業主等が対象となる場合もあります。詳細は各自治体にご確認ください。
補助対象経費の例
受け入れ自治体は、国からの支援を活用して、企業のお試し勤務にかかる以下のような経費を補助します。
経費の種類 | 具体例 |
---|---|
誘引に要する経費 | 都市部でのPR費用、特設サイト構築費、ニーズ調査費など |
環境整備に要する経費 | お試し勤務オフィスの賃料、事務機器・備品のレンタル・購入費など |
活動中に要する経費 | 交通費、宿泊費、通信費、光熱水費、ビジネスマッチングイベント開催費など |
【具体例】各自治体の補助金制度
この国の事業を活用して、多くの自治体が独自の補助金制度を設けています。ここでは3つの市の事例をご紹介します。
長崎県島原市「島原でしてみんねテレワーク支援補助金」
三大都市圏からのテレワーク体験者やサテライトオフィス視察企業を対象に、航空運賃を補助します。
- 補助内容: 往復航空運賃の実費
- 補助上限: 1人あたり最大40,000円(片道20,000円)
- 対象者: 三大都市圏在住のテレワーカー、または三大都市圏に本社を置く企業の社員
三重県志摩市「お試しサテライトオフィス補助金」
三大都市圏の企業が市内で3日以上のお試し勤務を行う場合に、交通費・宿泊費・ワークスペース利用料を補助します。
- 交通費: 上限30,000円/人
- 宿泊費: 上限8,000円/人・日
- ワークスペース利用料: 上限2,000円/人・日
和歌山県和歌山市「トライアル和歌山市活動費支援金」
市内でワーケーションを実施する企業に対し、活動経費の一部を支援します。
- 補助内容: 交通費、宿泊費、施設利用料
- 補助額: ワーケーションを行う人数 × 30,000円
- 要件: 構成員が連続して2泊3日以上滞在すること
申請から利用までの一般的な流れ
自治体によって手続きは異なりますが、おおむね以下のステップで進みます。
- 1情報収集: 自社のニーズに合う補助金制度を実施している自治体を探す。
- 2事前相談・申請: 該当自治体の担当窓口に相談し、指定された様式で申請書を提出する。
- 3交付決定: 審査後、自治体から交付決定通知書が届く。
- 4お試し勤務の実施: 計画に沿ってお試し勤務(ワーケーション)を実施する。
- 5実績報告: 期間終了後、領収書や搭乗証明書などを添えて実績報告書を提出する。
- 6補助金交付: 報告書の内容が確定された後、指定口座に補助金が振り込まれる。
まとめ
総務省の「お試しサテライトオフィス推進事業」は、地方進出を検討する都市部企業にとって、リスクを抑えながら現地の環境やビジネスチャンスを探る絶好の機会です。多くの自治体がこの制度を活用し、魅力的な補助金を用意しています。まずは自社のビジョンに合った地域を探し、どのような支援が受けられるか調べてみてはいかがでしょうか。