2024年度(令和6年度)から、社会的養護を経験した若者たちの自立を支える画期的な新制度「社会的養護自立支援拠点事業」がスタートします。この記事では、こども家庭庁の最新資料を基に、本事業の目的、支援内容、補助額、対象者などをプロの視点から分かりやすく解説します。

社会的養護自立支援拠点事業とは?

社会的養護自立支援拠点事業は、児童養護施設を退所した若者や、虐待経験がありながらもこれまで公的な支援につながりにくかった人々が、社会的に孤立することなく、安心して自立した生活を送れるように支援することを目的とした新しい事業です。具体的には、交流の場の提供、相談支援、そして一時的な居場所の確保などを通じて、彼らが地域社会で安定した生活を築くためのサポート体制を整備します。

この事業の重要ポイント

  • 対象者の拡大: 従来の支援の枠組みから漏れていた「公的支援につながっていない虐待経験者」なども対象。
  • 多機能な拠点: 相談窓口だけでなく、交流スペースや一時的な滞在場所としての機能も持つ。
  • 安心こども基金の活用: 令和6年度から11年度末まで、安定した財政支援が見込まれる。

事業の基本情報

項目 内容
事業名 社会的養護自立支援拠点事業
目的 社会的養護経験者等の孤立を防ぎ、必要な支援に適切につなぐことで、自立に向けたサポート体制を整備する。
主な対象者 社会的養護経験者、または虐待経験がありながらこれまで公的支援につながっていなかった者等
実施主体 都道府県、指定都市、児童相談所設置市(社会福祉法人やNPO法人等への委託が可能)

具体的な4つの支援内容

本事業では、主に以下の4つの支援を提供することが想定されています。

1. 相互交流の場の提供

社会的養護経験者などが気軽に集まり、自由に交流や意見交換ができる居場所を提供します。同じような経験を持つ仲間とつながることで、孤立感を和らげ、安心できるコミュニティを形成することを目指します。

2. 生活・就労等に関する相談支援

日常生活や社会生活、学業、就労など、対象者が抱える様々な悩みについて相談を受け、専門の支援員が必要な助言や情報提供を行います。一人ひとりの状況に合わせたきめ細やかなサポートが特徴です。

3. 関係機関との連絡調整

福祉サービス、医療的支援、法的支援など、他の専門的なサポートが必要な場合には、関係機関と連携し、適切な支援へスムーズにつなぐ「ハブ」としての役割を担います。

4. 一時的な居場所の提供

帰る場所を失っている場合など、緊急時には一時的に滞在できる居場所を提供します。状況が安定するまでの間、居住支援や生活支援を行い、次のステップに進むための基盤を整えます。

補助額と対象経費について

この事業を実施する団体に対しては、手厚い財政支援が用意されています。補助基準額は基本分と各種加算で構成されています。

項目 補助基準額(1か所あたり)
基本分 23,794,000円
主な加算措置
  • 生活相談支援員配置加算: 5,166,000円
  • 心理療法担当職員加算: 最大 6,955,000円
  • 開設準備経費加算: 4,000,000円
  • 賃借料加算: 3,000,000円
  • 自立生活支援加算: 2,599,000円 など
補助率 国 1/2、都道府県等 1/2

※補助基準額は上限であり、実際の補助額は対象経費の実支出額と比較して少ない方の額となります。

事業活用のためのステップ

この事業を活用して支援拠点を開設したい社会福祉法人やNPO法人等の団体は、以下のステップで進めることが一般的です。

  1. Step 1: 自治体への情報確認

    まず、事業所を設置したい地域の都道府県、指定都市、または児童相談所設置市の担当課(子ども・家庭福祉課など)に、本事業の公募状況や要件について問い合わせます。

  2. Step 2: 事業計画の策定

    地域の実情や対象者のニーズを踏まえ、具体的な支援内容、実施体制、予算計画などを盛り込んだ事業計画書を作成します。

  3. Step 3: 申請手続き

    自治体が定める公募期間内に、事業計画書や必要書類を提出します。

  4. Step 4: 審査・採択、事業開始

    自治体による審査を経て採択が決定された後、補助金の交付を受け、事業を開始します。

まとめ

「社会的養護自立支援拠点事業」は、これまで支援が届きにくかった若者たちに寄り添い、彼らが安心して社会で生きていくための重要なセーフティネットとなる事業です。地域で子ども・若者支援に取り組む団体にとって、活動を大きく発展させるチャンスとなります。関心のある方は、ぜひ管轄の自治体に詳細を確認し、事業の活用を検討してみてはいかがでしょうか。