人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは?
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、新規事業の立ち上げやDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーン・カーボンニュートラル化)への対応など、企業の新たな挑戦に伴う人材育成(リスキリング)を支援する厚生労働省の制度です。従業員に新しい分野で必要な知識やスキルを習得させるための訓練費用や、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。このコースは令和4年度から令和8年度末までの期間限定措置として創設されており、変化の激しい時代に対応する企業にとって非常に心強い味方となります。
こんなお悩みを持つ事業主様におすすめ
- 新しい事業分野に進出したいが、対応できる人材がいない。
- 社内のDX化を進めたいが、従業員のITスキルが不足している。
- カーボンニュートラルへの対応が求められているが、何から手をつければいいかわからない。
- 従業員のスキルアップをしたいが、研修費用や人件費の負担が大きい。
助成対象となる取り組みの具体例
この助成金は、大きく分けて以下の2つのケースで活用できます。
- 事業展開に伴うリスキリング
新たな製品開発や新サービスの提供、事業転換など、新しい分野に進出するために必要な専門知識・技能を習得させる訓練。
(例)飲食店がテイクアウト・デリバリー事業を始めるためのWebマーケティングやアプリ開発の訓練。製造業が医療機器分野に参入するための専門技術訓練。 - DX・GX化に伴うリスキリング
既存事業のままでも、社内のDX化やグリーン化を推進するために必要な専門知識・技能を習得させる訓練。
(例)RPAツール導入による業務自動化のための訓練。ドローンを活用した測量技術の習得訓練。再生可能エネルギー設備の導入・管理に関する技術訓練。
助成金の対象要件
助成金を受給するためには、事業主、労働者、訓練内容のそれぞれで定められた要件を満たす必要があります。
対象となる事業主
以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業所であること。
- 社内に「職業能力開発推進者」を選任していること。
- 「事業内職業能力開発計画」を策定し、従業員に周知していること。
- 訓練期間中、対象労働者に適正に賃金を支払っていること。
- 申請に必要な書類を整備・保管し、労働局の審査に協力すること。
対象となる労働者
申請事業主に雇用される雇用保険被保険者が対象です。訓練の実施期間中も被保険者であることが必要です。
対象となる訓練
以下の要件を満たすOFF-JT(通常の業務から離れて行う訓練)が対象です。
- 職務に直接関連した専門的な知識・技能を習得するための訓練であること。
- 実訓練時間数が10時間以上であること。
- 社外の教育訓練機関で実施する「事業外訓練」または、要件を満たす講師による「事業内訓練」であること。
- 接遇マナー研修や、法令で実施が義務付けられている訓練、趣味教養目的の訓練などは対象外です。
助成額と助成率について
助成額は、訓練にかかった「経費」と訓練中の「賃金」の2種類があり、企業規模によって助成率・助成額が異なります。
助成内容の概要
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成額(1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
※賃金助成はeラーニング、通信制訓練、育児休業中訓練は対象外です。
支給限度額
- 経費助成:1人1訓練あたり最大50万円(訓練時間数による)
- 賃金助成:1人1訓練あたり1,200時間まで
- 1事業所あたりの年間支給限度額:1億円
- 1労働者あたりの年間受講回数:3回まで
申請手続きの流れ
申請は、訓練を開始する前の計画段階から始まります。計画的に進めることが重要です。
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Step 1: 計画の策定・準備
「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」の策定を行います。初めて申請する場合は、この段階で管轄の労働局に相談することをおすすめします。 -
Step 2: 職業訓練実施計画届の提出
訓練開始日の1か月前までに、必要書類を揃えて管轄の労働局へ提出します。提出が遅れると助成対象外となるため、期限は厳守してください。 -
Step 3: 訓練の実施
提出した計画に沿って訓練を実施します。訓練費用は、支給申請時までに事業主が全額支払いを完了している必要があります。 -
Step 4: 支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を労働局へ提出します。こちらも期限厳守です。
まとめ
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、企業の成長戦略に不可欠な「人への投資」を強力に後押しする制度です。DX化や新事業展開など、企業の変革期において、従業員のスキルをアップデートさせることは競争力を維持・向上させる上で極めて重要です。手続きは計画的に進める必要がありますが、最大75%の経費助成や賃金助成といった手厚い支援が受けられます。ぜひこの機会に本助成金の活用を検討し、企業の持続的な発展につなげてください。