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この記事のポイント
- 建設業界に特化した助成金の全体像と目的を理解できる
- 人材確保、人材育成、試行雇用の3つのカテゴリ別に主要な助成金コースがわかる
- 各コースの対象者、助成額、主な要件を具体的に把握できる
- 申請手続きの基本的な流れと、必要な書類、問い合わせ先がわかる
建設事業主等に対する助成金とは?
「建設事業主等に対する助成金」は、厚生労働省が管轄する、建設業界に特化した助成金制度です。建設労働者の雇用環境の改善や技能向上を目的とした取り組みを行う建設事業主や事業主団体に対して、経費や賃金の一部を助成します。人材不足や高齢化といった課題を抱える建設業界にとって、人材の確保・定着、生産性向上を図るための強力なサポートとなります。
この制度は、大きく分けて「建設事業主」を対象としたものと、「建設事業主団体・職業訓練法人」を対象としたものがあります。本記事では、主に建設事業主が活用できる助成金コースを中心に、わかりやすく解説します。
【目的別】建設業で使える助成金コース一覧
建設事業主向けの助成金は、目的別に大きく3つの制度に分類されます。自社の課題に合わせて、最適なコースを選びましょう。
1. 人材確保等支援助成金(建設分野)
若者や女性の入職・定着促進、労働環境の改善、生産性向上を支援するコースです。
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース
- 目的:若年・女性労働者の入職や定着を図るための事業を支援。
- 対象経費例:広報活動費、職業体験講習、雇用管理研修の受講費用、女性専用の更衣室やトイレの設置・改修費用など。
- 助成率:中小建設事業主は対象経費の3/5(賃金要件を満たす場合は3/4)。
作業員宿舎等設置助成コース
- 目的:女性が快適に働ける環境整備や、被災地(石川県)での復興事業に従事する労働者のための宿舎確保を支援。
- 対象事業例:女性専用作業員施設(トイレ、更衣室、シャワー室等)の賃借、石川県内の作業員宿舎・賃貸住宅の賃借など。
- 助成額・助成率:
・女性専用施設:対象経費の3/5(賃金要件を満たす場合は3/4)。
・石川県の作業員宿舎:建設労働者1人あたり25万円など。
建設キャリアアップシステム等活用促進コース
- 目的:建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、技能者の処遇改善を行う中小建設事業主を支援。
- 主な要件:雇用する全ての技能者のCCUS登録完了、レベル判定で昇格した技能者の賃金を5%以上増加させること。
- 助成額:対象となる建設技能者1人あたり16万円。
2. 人材開発支援助成金(建設分野)
雇用する建設労働者の技能向上を目的とした訓練(技能実習)にかかる経費や賃金を助成します。
建設労働者認定訓練コース
- 目的:都道府県知事の認定を受けた認定職業訓練の受講を支援。
- 助成内容:経費助成(受講料など)と賃金助成(訓練受講中の賃金の一部)。
建設労働者技能実習コース
- 目的:建設業法で定められた技術検定や技能検定の取得、特別教育や安全衛生教育などの技能実習の受講を支援。
- 助成内容:経費助成(受講料、教材費など)と賃金助成(実習受講中の賃金の一部)。
3. トライアル雇用助成金(建設分野)
経験の少ない若者や女性を試行的に雇用し、適性を見極めた上で常用雇用への移行を促す制度です。
若年・女性建設労働者トライアルコース
- 目的:35歳未満の若者や女性を、建設技能労働者等として試行雇用する場合に助成。
- 主な要件:ハローワーク等の紹介により、原則3ヶ月間の有期雇用契約を締結すること。
- 助成額:支給対象者1人あたり月額4万円(最長3ヶ月)。
申請手続きの基本的な流れ
助成金の申請は、コースによって異なりますが、一般的に以下の流れで進みます。事前の計画届が必要なものが多いため、必ず事業を開始する前に手続きを確認しましょう。
- 計画届の提出:事業内容や経費の見込みなどを記載した計画書を、管轄の労働局に提出します。
- 計画の実施:認定された計画に基づき、研修の実施や設備の導入などを行います。
- 支給申請:事業終了後、定められた期間内に、実績報告書や経費の領収書などを添えて支給申請書を提出します。
- 審査・支給決定:提出された書類が審査され、内容に問題がなければ助成金が支給されます。
申請様式は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。年度によって様式が変更される場合があるため、必ず最新のものを利用してください。
申請窓口・問い合わせ先
建設事業主等に対する助成金の申請や相談は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(助成金担当窓口)となります。地域によっては「助成金センター」として専門の窓口が設置されている場合があります。
例えば、大阪府の場合は「大阪労働局助成金センター」が一括して多くの助成金を取り扱っています。まずは、厚生労働省の公式サイトで管轄の窓口を確認することをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
- Q1. 複数のコースを同時に利用できますか?
- A1. はい、要件を満たせば複数のコースを併用することが可能です。ただし、同一の経費に対して複数の助成金を受けることはできません。詳細は管轄の労働局にご相談ください。
- Q2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録は必須ですか?
- A2. 「建設キャリアアップシステム等活用促進コース」を利用する場合は必須です。他のコースでは必須要件ではありませんが、CCUSの活用は技能者の処遇改善に繋がるため、登録が推奨されています。
- Q3. 申請は社会保険労務士などに代行してもらえますか?
- A3. はい、社会保険労務士や行政書士などの専門家に申請手続きを代行依頼することも可能です。ただし、別途費用が発生します。
まとめ
建設事業主等に対する助成金は、人材の確保・育成・定着という建設業界の重要課題に取り組む事業主を力強く支援する制度です。若者や女性が働きやすい環境を整えたり、従業員のスキルアップを促進したりすることで、企業の競争力強化にも繋がります。この記事を参考に、自社の状況に合った助成金を積極的に活用し、持続的な事業発展を目指しましょう。