障害者雇用は企業の社会的責任だけでなく、組織の多様性を高める重要な取り組みです。しかし、採用後の教育訓練やスキルアップ支援に課題を感じる企業も少なくありません。そんな課題を解決するのが「障害者能力開発助成金」です。本記事では、障害者の能力開発を支援するこの助成金について、対象要件から支給額、申請方法までプロが徹底解説します。
障害者能力開発助成金とは?
障害者能力開発助成金とは、障害者の職業能力を開発・向上させるための訓練事業を支援する制度です。具体的には、訓練施設の設置や整備、または訓練事業の運営にかかる費用の一部が助成されます。これにより、事業主は経済的負担を軽減しつつ、障害者の雇用促進と職場定着を図ることができます。
【重要】令和6年度からの制度変更
従来は厚生労働省の「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」でしたが、令和6年4月1日から独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が管轄する「障害者能力開発助成金」へ移管されました。本記事は移管後の最新情報に基づいています。
2つの助成金タイプ
この助成金は、支援内容によって以下の2種類に分かれています。
- 第1種(施設設置費)助成金: 訓練に必要な施設や設備の設置・整備・更新費用を助成。
- 第2種(運営費)助成金: 訓練事業の運営にかかる費用を助成。
助成金の対象要件
助成金を受給するには、「事業者」「対象となる障害者」「訓練内容」の3つの要件をすべて満たす必要があります。
対象となる事業者
以下のいずれかに該当する事業主や団体が対象です。
- 事業主または事業主団体
- 専修学校、各種学校を設置する学校法人または法人
- 社会福祉法人
- その他、障害者の雇用促進にかかる事業を行う法人
対象となる障害者
ハローワークに求職申込を行い、職業訓練が必要であるとハローワーク所長に認められた、以下のいずれかに該当する方が対象です。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 発達障害者
- 高次脳機能障害のある者
- 難治性疾患を有する者
対象となる訓練の主な要件
助成対象となる訓練は、厚生労働大臣が定める基準を満たす必要があります。主要な要件は以下の通りです。
| 項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 運営管理者 | 障害者向け教育訓練の知識と5年以上の経験を有する者であること。 |
| 訓練期間 | 6ヶ月以上2年以内であること。 |
| 訓練時間 | 6ヶ月あたり700時間(1日5〜6時間)を基準とし、実技が5割以上であること。 |
| 訓練人員 | 1単位あたり概ね10人(障害種別により5〜10人)。 |
| 訓練担当者 | 受講者概ね5人につき1人の専任担当者を配置すること。 |
| 費用 | 受講料は無料であること(教科書等の実費は除く)。 |
支給額と助成率
助成金の支給額は「第1種(施設設置費)」と「第2種(運営費)」で異なります。
第1種(施設設置費)助成金
訓練施設の設置・整備・更新にかかる費用が対象です。
助成率: 3/4
上限額:
- 新規設置・整備: 5,000万円
- 更新: 1,000万円
第2種(運営費)助成金
訓練事業の運営にかかる費用が対象です。対象となる障害者の種別によって助成率・上限額が異なります。
| 対象障害者 | 助成率 | 上限額(月額/人) |
|---|---|---|
| 重度障害者等 | 4/5 | 17万円 |
| 上記以外の障害者 | 3/4 | 16万円 |
💡 就職加算: 重度障害者等が訓練修了後に就職した場合、1人あたり10万円が追加で支給されます。
申請の流れ
申請は「認定申請」と「支給請求」の2段階で行います。事前に計画を立て、期限内に手続きを進めることが重要です。
- 1認定申請書の提出
事業計画を立て、管轄の都道府県支部へ「受給資格認定申請書」を提出します。 - 2審査・認定通知
提出された書類に基づき、JEEDが審査を行い、結果が通知されます。 - 3措置の実施・費用支払
認定後、計画に沿って施設の設置や訓練事業を実施し、費用を支払います。 - 4支給申請書の提出
措置の完了後、期限内に都道府県支部へ「支給請求書」と必要書類を提出します。 - 5審査・支給決定
請求内容が審査され、支給または不支給が決定されます。 - 6助成金の振込
支給が決定されると、指定した銀行口座に助成金が振り込まれます。
⚠️ ご注意
認定申請と支給請求にはそれぞれ提出期限が定められています。要件も複雑なため、計画段階で早めに管轄の都道府県支部に相談することをおすすめします。
まとめ
障害者能力開発助成金は、障害者のスキルアップと雇用安定を目指す事業者にとって非常に強力な支援策です。施設の設置から日々の運営まで幅広くカバーしており、活用することで質の高い訓練プログラムの提供が可能になります。
要件は詳細に定められていますが、計画的に準備を進めることで受給の可能性は高まります。障害者雇用をさらに推進するため、この助成金の活用をぜひご検討ください。
お問い合わせ: 最寄りのJEED都道府県支部まで
対象者・対象事業
障害者の職業能力開発訓練を行うための施設・設備の設置や整備を行う、または訓練事業を運営する事業主、事業主団体、学校法人、社会福祉法人など。
必要書類(詳細)
受給資格認定申請書、事業計画書、経費の内訳がわかる書類、法人格を証明する書類など。詳細は公式の支給要領や申請様式をご確認ください。
対象経費(詳細)
【第1種】能力開発訓練施設(教室、実習室)、管理施設、福祉施設(寄宿舎、食堂)、訓練用設備の設置・整備・更新費用。【第2種】障害者職業能力開発訓練事業の運営に必要な経費(人件費、教材費など)。
対象者・対象事業
障害者の職業能力開発訓練を行うための施設・設備の設置や整備を行う、または訓練事業を運営する事業主、事業主団体、学校法人、社会福祉法人など。
必要書類(詳細)
受給資格認定申請書、事業計画書、経費の内訳がわかる書類、法人格を証明する書類など。詳細は公式の支給要領や申請様式をご確認ください。
対象経費(詳細)
【第1種】能力開発訓練施設(教室、実習室)、管理施設、福祉施設(寄宿舎、食堂)、訓練用設備の設置・整備・更新費用。【第2種】障害者職業能力開発訓練事業の運営に必要な経費(人件費、教材費など)。