【2025年最新】働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を徹底解説!

「残業を減らしたいけど、そのための設備投資の費用が…」「有給休暇の取得を促進したいが、何から手をつければいいかわからない」

このような悩みを抱える中小企業の経営者様・人事担当者様は多いのではないでしょうか。2020年4月から中小企業にも適用された時間外労働の上限規制への対応は、多くの企業にとって喫緊の課題です。

そんな課題解決の強い味方となるのが、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」です。この助成金を活用すれば、生産性向上のための設備投資や専門家へのコンサルティング費用などの一部が助成され、コストを抑えながら働きやすい職場環境を実現できます。

この記事では、2025年度(令和7年度)の働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)について、対象者、支給額、申請方法、注意点まで、どこよりも分かりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 中小企業の残業削減・有給休暇取得促進の取組を支援する制度
  • 設備投資やコンサル費用など、かかった経費の最大4/5を助成
  • 成果目標達成で最大150万円、さらに賃上げで最大720万円が加算される可能性も
  • 申請期限は2025年11月28日(金)まで(予算上限に達し次第終了)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは?

本助成金は、生産性を向上させ、時間外労働の削減や年次有給休暇・特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するための制度です。働き方改革を進める上での経済的な負担を軽減し、従業員がより健康で長く働ける職場づくりを後押しすることを目的としています。

対象となる中小企業事業主

助成金の対象となるのは、以下の3つの要件をすべて満たす中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
  2. 交付申請時点で、後述する「成果目標」の要件を満たしていること。
  3. 全ての対象事業場において、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

「中小企業事業主」の定義は、業種ごとに資本金または常時使用する労働者数で定められています。

業種 A. 資本または出資額 B. 常時使用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

※AまたはBのいずれかの要件を満たせば対象となります。

いくらもらえる?支給額と補助率

支給額は、「①成果目標に応じた上限額」「②対象経費の合計額 × 補助率」のうち、いずれか低い方の額が支給されます。

補助率

  • 原則:3/4
  • 特例:常時使用する労働者数が30人以下で、後述の対象経費⑥~⑨を実施し、その費用が30万円を超える場合 → 4/5

① 成果目標に応じた上限額

上限額は、達成を目指す成果目標によって異なります。複数の目標を達成した場合、それぞれの上限額が合算されます。

目標1:時間外労働の削減

36協定の時間外・休日労働時間数を縮減した場合の上限額です。

事業実施後の設定時間 実施前が月80時間超の場合 実施前が月60時間超の場合
月60時間以下に設定 150万円 100万円
月60時間超~80時間以下に設定 50万円

目標2:年次有給休暇の計画的付与

年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入した場合、上限額に25万円が加算されます。

目標3:特別休暇の導入

時間単位の年休制度と、病気休暇や教育訓練休暇などの特別休暇を新たに導入した場合、上限額に25万円が加算されます。

【注目】賃金引き上げによる加算

上記の成果目標に加え、従業員の時間当たりの賃金額を引き上げる目標を設定・達成すると、人数や引上げ率に応じて上限額がさらに加算されます。常時使用する労働者数が30人以下の事業主の場合、加算額は2倍になります。

(例)労働者数30人以下の中小企業の場合の加算額

引上げ率 1~3人 4~6人 11人~30人
3%以上引上げ 12万円 24万円 1人当たり4万円(上限120万円)
5%以上引上げ 48万円 96万円 1人当たり16万円(上限480万円)
7%以上引上げ 72万円 144万円 1人当たり24万円(上限720万円)

※これは賃上げ額そのものを助成するものではなく、助成金の上限額が増える制度です。

何に使える?対象となる取組(経費)

助成金の対象となるのは、成果目標を達成するために実施する以下の取組です。いずれか1つ以上を実施する必要があります。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発(業務研修も含む)
  • 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組(求人広告掲載費用など)
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新(勤怠管理システムなど)
  • 労務管理用機器の導入・更新(タイムレコーダーなど)
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(例:POSレジ、自動釣銭機、自動車リフト、業務用食洗機など)

※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象外ですが、特定の要件を満たす場合は対象となる可能性があります。

申請から受給までの流れ

申請は大きく分けて「交付申請」と「支給申請」の2ステップです。必ず交付決定後に事業を開始する必要がある点に注意してください。

  1. 【STEP1】交付申請
    事業実施計画書などを作成し、管轄の都道府県労働局へ提出します。
    申請期限:2025年11月28日(金)必着
  2. 【STEP2】交付決定
    労働局での審査後、交付決定通知書が届きます。(申請から1~2ヶ月程度)
  3. 【STEP3】事業の実施
    交付決定後、計画に沿って設備投資や研修などを実施します。
    事業実施期間:交付決定日 ~ 2026年1月30日(金)まで
  4. 【STEP4】支給申請
    事業完了後、成果をまとめて支給申請書を労働局へ提出します。
    申請期限:事業完了から30日後、または2026年2月6日(金)のいずれか早い日
  5. 【STEP5】助成金の受給
    審査後、支給決定通知が届き、助成金が振り込まれます。

申請時の3つの重要注意点

1. 事業開始は必ず「交付決定後」に!

最も重要な注意点です。交付決定通知を受け取る前に発注・契約・支払いなどを行った経費は、すべて助成金の対象外となります。見積書の取得までは問題ありませんが、発注は必ず交付決定後に行ってください。

2. 予算には限りがある!

この助成金は国の予算に基づいており、申請額が予算の上限に達した場合、申請期限(11月28日)より前に予告なく受付を締め切ることがあります。活用を検討している場合は、早めに準備を進め、申請することをおすすめします。

3. 成果目標の達成が必須!

助成金は、計画した「成果目標」を達成することが支給の条件です。例えば、「時間外労働を月60時間以下にする」という目標を立てた場合、実際に達成できなければ、たとえ設備投資を行っていても助成金は支給されません。達成可能な、現実的な計画を立てることが重要です。

まとめ:助成金を活用して働きやすい職場環境へ

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、中小企業が直面する労働時間管理の課題を解決し、従業員の満足度向上と生産性向上を両立させるための強力なツールです。

設備投資や勤怠管理システムの導入、就業規則の見直しなど、これまでコスト面で躊躇していた取組も、この助成金を活用することで実現の可能性が大きく広がります。

申請には計画的な準備が必要ですが、その価値は十分にあります。まずは自社の課題を洗い出し、どのような取組が可能か検討してみてはいかがでしょうか。不明な点があれば、管轄の都道府県労働局や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。