【2025年】働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)を徹底解説!

「時間外労働の上限規制に対応したいが、設備投資の資金がない」「従業員の労働環境を改善して、生産性を向上させたい」——。そんなお悩みを持つ中小企業の経営者様は多いのではないでしょうか。特に、建設業、運送業、病院、情報通信業、宿泊業など、長時間労働が課題となりやすい業種では、働き方改革は喫緊の課題です。

そこで活用したいのが、厚生労働省が提供する「働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)」です。この助成金は、生産性向上に資する設備投資や研修などを行い、時間外労働の削減や休暇取得促進に取り組む中小企業を支援する制度です。本記事では、2025年度(令和7年度)の最新情報を基に、制度の概要から対象者、支給額、申請方法までを分かりやすく解説します。

働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)の概要

まずは、本助成金のポイントを一覧表で確認しましょう。

項目 内容
目的 生産性向上を通じて、時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度導入など、業種特有の課題解決に取り組む中小企業を支援する。
対象事業者 建設業、運送業、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業を営む中小企業事業主
支給上限額 最大350万円(成果目標による)+ 賃上げ加算(最大720万円
補助率 原則3/4(一部条件で4/5)
申請期間 2025年4月1日(火)~ 2025年11月28日(金)必着
注意点 予算の制約により、期限前に受付を締め切る場合があります。

誰が対象?支給対象となる事業主

この助成金を利用できるのは、以下の要件をすべて満たす中小企業事業主です。

対象業種

以下のいずれかの事業を主たる事業として営んでいる必要があります。

  • 建設業
  • 運送業
  • 病院等(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院)
  • 砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)
  • 情報通信業
  • 宿泊業

中小企業の定義

業種ごとに、以下の「資本金・出資額」または「常時使用する労働者数」のいずれかを満たす必要があります。

業種 資本金または出資額 常時使用する労働者数
小売業(飲食店を含む)、サービス業(宿泊業など) 5,000万円以下 100人以下(小売業は50人以下)
病院等 5,000万円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種(建設業、運送業、情報通信業など) 3億円以下 300人以下

その他の要件

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
  • 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則等を整備していること。
  • 交付申請時点で、有効な36協定を締結・届出していること。

何に使える?対象となる取組

助成金の対象となるのは、成果目標を達成するために実施する以下の取組です。いずれか1つ以上を実施する必要があります。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器(タイムレコーダーなど)の導入・更新
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(例:POS装置、自動車リフト、内視鏡自動洗浄機など)

※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象外ですが、長時間労働恒常化要件に該当する場合は対象となる可能性があります。

何をすればもらえる?成果目標

以下の成果目標から1つ以上を選択し、その達成を目指して取組を行います。業種によって選択できる目標が異なります。

全業種で選択可能な目標

  1. 36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
    月60時間以下、または月60時間超~80時間以下に上限を設定し届け出る。
  2. 年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入
  3. 時間単位の年次有給休暇制度と特別休暇の新規導入
  4. 9時間以上の勤務間インターバル制度の新規導入
    (運送業や特定の医師は10時間以上)

特定の業種のみ選択可能な目標

  • 【建設業】所定休日の増加(4週5休から4週8休以上の範囲)
  • 【病院等】医師の働き方改革推進(労務管理体制の構築、労働時間の実態把握など)
  • 【砂糖製造業】3直3交代制等の勤務割表の整備

いくらもらえる?支給額を徹底解説

支給額は、「①成果目標ごとの上限額の合計」「②対象経費の合計額 × 補助率」のうち、いずれか低い方の額となります。

成果目標ごとの上限額

達成した成果目標に応じて、上限額が設定されています。(一部抜粋)

成果目標 上限額
目標1:36協定の時間削減(月80H超→月60H以下) 250万円
目標2:年休の計画的付与 25万円
目標4:勤務間インターバル導入(11時間以上・運送業) 170万円
目標5:所定休日増加(建設業・4日増) 100万円
目標6:医師の働き方改革推進 50万円
目標7:勤務割表の整備(砂糖製造業) 350万円

【重要】賃上げ達成でさらに加算!

上記の成果目標に加え、労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げることを目標に加えると、上限額がさらに加算されます。特に労働者30人以下の事業主は加算額が2倍になり、非常に手厚い支援となっています。

▼ 労働者30人以下の中小企業の場合(加算額)

引き上げ人数 3%以上引上げ 5%以上引上げ 7%以上引上げ
1~3人 12万円 48万円 72万円
11人~30人 1人当たり4万円
(上限120万円)
1人当たり16万円
(上限480万円)
1人当たり24万円
(上限720万円)

申請スケジュールと手続きの流れ

申請期間

交付申請の受付期間:2025年4月1日(火)~ 2025年11月28日(金)必着

※国の予算額には限りがあるため、11月28日より前に予告なく受付を締め切る可能性があります。検討されている方は、早めの申請をおすすめします。

申請から受給までの3ステップ

  1. 交付申請
    「交付申請書」と「事業実施計画」を作成し、管轄の都道府県労働局へ提出します。jGrantsによる電子申請も可能です。
  2. 取組の実施
    労働局から「交付決定通知」を受け取った後、計画に沿って設備導入や研修などの取組を実施します。(事業実施期間:交付決定日~2026年1月30日まで)
  3. 支給申請
    事業実施期間が終了したら、かかった経費の領収書などを添付して「支給申請書」を提出します。審査後、助成金が振り込まれます。

まとめ

「働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)」は、資金的な制約から働き方改革に踏み出せなかった中小企業にとって、非常に強力なサポートとなる制度です。生産性向上のための設備投資と、従業員の労働環境改善を同時に実現できる大きなチャンスです。申請には計画書の作成など準備が必要となりますので、公式サイトで詳細を確認し、早めに管轄の労働局へ相談してみてはいかがでしょうか。