人口減少やドライバー不足、燃料費の高騰など、地域の公共交通は多くの課題に直面しています。この記事では、こうした課題に対応し、持続可能な地域交通ネットワークを支える国の重要施策「地域公共交通確保維持改善事業」について、その概要から具体的な支援内容、申請のポイントまでプロが徹底的に解説します。

地域公共交通確保維持改善事業とは？

地域公共交通確保維持改善事業は、地域住民にとって不可欠な生活交通の確保・維持・改善を図るため、国土交通省が地方公共団体や交通事業者に対して行う総合的な支援制度です。この事業は、大きく分けて以下の3つの柱で構成されています。

1. 地域公共交通確保維持事業：バス路線や離島航路などの運行費支援が中心。
2. 地域公共交通バリア解消促進等事業：ノンステップバス導入などバリアフリー化を推進。
3. 地域公共交通調査等事業：持続可能な交通網の計画策定や調査を支援。

補助金の詳細を徹底解説

本事業は多岐にわたるため、主要な支援内容を表にまとめました。

対象となる事業者

主に以下の事業者が対象となりますが、事業メニューによって異なります。

• 地方公共団体（都道府県、市町村）
• 地域公共交通活性化再生法に基づく協議会
• 一般乗合旅客自動車運送事業者（バス会社など）
• 一般乗用旅客自動車運送事業者（タクシー会社など）

申請プロセスと成功の鍵

本事業の活用には、戦略的な準備が不可欠です。基本的な申請フローと、採択率を高めるためのポイントを解説します。

申請の基本的な流れ

1. 1法定協議会の設置：市町村が中心となり、交通事業者や地域住民、関係団体などと「地域公共交通活性化再生法」に基づく協議会を組織します。
2. 2地域公共交通計画の策定：協議会で議論を重ね、地域のマスタープランとなる「地域公共交通計画」を策定します。この計画に、実施したい事業を明確に位置づけることが重要です。
3. 3事業計画の作成と申請：策定した計画に基づき、具体的な事業内容、収支計画などを盛り込んだ申請書類を作成し、管轄の地方運輸局等へ提出します。
4. 4交付決定・事業実施：審査を経て交付が決定されると、計画に沿って事業を実施します。

富山県の事例と今後の展望

富山県は、国への「令和7年度の提案・要望」の中で「地域公共交通の維持・活性化」を重要項目として掲げており、JR城端線・氷見線の再構築や、MaaSの推進、バス運転手の担い手不足解消などに積極的に取り組む姿勢を示しています。実際に、富山市では公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを進めており、高齢者を対象とした「おでかけ定期券事業」など、国の支援制度を活用した先進的な取り組みが見られます。

このように、自治体の成長戦略やまちづくり計画と連携させることで、本事業をより効果的に活用することが可能です。

まとめと次のステップ

「地域公共交通確保維持改善事業」は、地域の足を維持・強化するための強力なツールです。しかし、その活用には関係者を巻き込んだ計画的な準備が不可欠です。