NEDO NEP事業 2025年度のポイント

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業(NEP)」は、日本のディープテック分野における起業家育成を目指す重要なプログラムです。2025年度も、起業前のアイデア段階を支援する「開拓コース」と、具体的な事業化を目指す「躍進コース」の2本立てで公募が行われました。本記事では、両コースの概要、対象者、支援内容、申請方法などを網羅的に解説します。

  • 対象者:ディープテック分野の技術シーズを持つ起業前の個人から、事業化を目指す法人まで幅広く対応。
  • 支援内容:「開拓コース」では月額25万円の活動費、「躍進コース」では最大3,000万円の助成金を提供。
  • 特徴:資金支援に加え、専門家によるハンズオン支援やメンタリングも充実。

NEDOのNEP事業とは?

NEDO Entrepreneurs Program(NEP)は、大学や研究機関に眠る革新的な技術シーズ(ディープテック)を基にした新しい産業の創出を目的とする、政府主導のスタートアップ支援事業です。研究開発段階から事業化まで、フェーズに応じたきめ細やかな支援が特徴で、日本の技術力を世界的なビジネスに繋げるための重要な役割を担っています。

【2025年度】2つのコース概要を徹底比較

NEP事業は、事業化のフェーズに応じて「開拓コース」と「躍進コース」の2種類が用意されています。ご自身の状況に合わせて最適なコースを選択することが重要です。

項目 開拓コース 躍進コース
フェーズ アイデア・構想段階 事業化・研究開発段階
対象者 起業前の個人・チーム 個人・チーム、法人(カーブアウト含む)
支援金額 活動費:月額25万円(上限300万円) 助成金:最大3,000万円
事業期間 約12ヶ月 約12ヶ月
2025年度公募期間 2025年1月6日~2月26日正午 2025年3月3日~4月18日正午

1. 開拓コース:アイデアを形にする第一歩

「開拓コース」は、ディープテック分野の技術シーズを活用した事業アイデアを持つ、起業前の個人やチームが対象です。自ら起業することも視野に入れながら、技術シーズの活用方法の探索、ビジネスモデルの作成、市場調査など、アイデアの実現可能性を調査する活動を支援します。採択者は「NEDO Front-Runner(FR)」として認定され、月額25万円の活動費支援のほか、専門家(AR: Assigned Researcher)による伴走支援を受けられます。

2. 躍進コース:事業化を加速させる強力な支援

「躍進コース」は、具体的なビジネスモデルを持ち、事業化に向けた研究開発や実証を行う個人・チーム、または法人を対象としています。応募要件や支援内容に応じて、複数のタイプが設定されています。

  • 躍進500・3000:最大3,000万円の助成金(助成率1/1)で、事業化促進に向けた研究開発や実証活動を支援します。
  • 躍進カーブアウトA・B:企業や大学からのカーブアウト(スピンアウト)を想定する個人・チームや法人を対象とし、最大3,000万円の助成金(助成率3/4)を交付します。

また、躍進コースでは、より精度の高い提案書作成を目的とした外部専門家による『提案書の添削指導』が実施されるなど、手厚いサポート体制が魅力です。

申請から採択までの流れとポイント

申請方法と必要書類

申請は、NEDOのウェブサイトに設置される専用アップロード先からの電子申請となります。郵送やメールでの申請は受け付けられません。主な必要書類は以下の通りですが、必ず公式の公募要領で最新情報をご確認ください。

  • 公募要領で指定された提案書一式
  • (開拓コース)プロフィールシート
  • (開拓コース)所属長の承諾書(該当者のみ)
  • その他、各コースで指定された添付資料

審査のポイントと採択率

審査は、外部有識者による書面審査や面接審査を経て行われます。2023年度の実績を見ると、採択率は以下のようになっています。

  • 開拓コース:応募131件に対し、採択35件(採択率 約26.7%)
  • 躍進コース:応募142件に対し、採択28件(採択率 約19.7%)

採択率は20%前後と、決して簡単ではありません。審査では、技術シーズの新規性・優位性、提案されるビジネスモデルの市場性や実現可能性、そして提案者の熱意やチーム体制などが総合的に評価されます。

採択事例:慶應義塾大学の医療機器開発

実際にどのようなテーマが採択されているのでしょうか。一例として、2025年度の開拓コースでは、慶應義塾大学医学部の勝俣良紀先生による「息を吐くだけで、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を診断 – 肝硬変・肝がんを未然に防ぐ医療機器の開発 –」というテーマが採択されました。このように、社会課題の解決に直結する革新的な技術シーズが評価される傾向にあります。

まとめ

NEDOのNEP事業は、ディープテック分野での起業を目指す研究者やエンジニアにとって、資金面だけでなく、専門家による伴走支援という大きな価値を提供するプログラムです。アイデア段階の「開拓コース」から事業化を目指す「躍進コース」まで、自身のステージに合った支援を受けられる点が最大の魅力です。公募期間は限られていますが、将来の日本を支える革新的な技術と熱意をお持ちの方は、ぜひ挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。最新情報は必ずNEDOの公式サイトや特設ホームページでご確認ください。