【2025年最新版】両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)とは?

両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)は、育児中の従業員が仕事と家庭を両立できるよう、多様で柔軟な働き方を選択できる制度を導入し、その利用を促進した中小企業事業主に対して支給される助成金です。深刻化する人手不足の中、優秀な人材の確保・定着は企業にとって喫緊の課題です。この助成金を活用し、従業員が働きやすい環境を整備することは、企業の持続的な成長に繋がります。

この記事では、特に2025年(令和7年)10月1日からの改正内容を中心に、制度の概要、支給要件、支給額、申請の流れまでを分かりやすく解説します。

このコースのポイント

  • 対象:中小企業事業主のみ
  • 目的:3歳から小学校就学前の子を養育する従業員の仕事と育児の両立支援
  • 内容:柔軟な働き方制度の導入・利用、または子の看護等休暇の有給化を支援
  • 金額:最大30万円+各種加算(最大22万円)

2025年10月からの改正点!制度は2つの柱に再編

令和7年10月1日より、本コースは以下の2つの制度に再編され、より利用しやすくなりました。事業主はいずれかの要件を満たすことで申請が可能です。

  1. 柔軟な働き方に関する制度を3つ以上導入した場合
  2. 子の看護等休暇制度を新たに有給化した場合

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1. 柔軟な働き方に関する制度を3つ以上導入した場合

3歳から小学校就学前の子を養育する従業員が利用できる「柔軟な働き方に関する制度」を複数導入し、実際に従業員の利用があった場合に助成金が支給されます。

支給額

導入した制度の数 支給額(利用者1名あたり)
3つ以上の制度を導入 20万円
4つ以上の制度を導入 25万円

※1事業主あたり通算5人まで申請可能です。

対象となる「柔軟な働き方に関する制度」

以下のA~Eの中から3つ以上の制度を導入し、就業規則等に規定する必要があります。

  • A. 始業時刻等の変更制度:フレックスタイム制度や時差出勤制度(1時間以上の繰上げ・繰下げ)
  • B. テレワーク制度:週または月の所定労働日数の半数以上利用可能など、一定の要件を満たすもの
  • C. 短時間勤務制度:1日の所定労働時間を平均1時間以上短縮する制度
  • D. 保育サービスの費用補助等:ベビーシッターの手配や費用補助
  • E. 子の養育のための休暇制度:年次有給休暇や子の看護休暇とは別の有給休暇(年10日以上、時間単位取得可)

受給までの4ステップ

制度を導入するだけでなく、以下のステップを制度利用開始日の前日までにすべて実施する必要があります。

  1. 方針の社内周知:「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき、制度利用やキャリア形成を支援する方針を社内で周知します。
  2. 利用者との面談:制度を利用したい従業員と上司または人事担当者が面談し、内容を「面談シート」に記録します。
  3. 支援プランの作成:面談結果を踏まえ、対象者ごとに個別の「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成します。
  4. 制度の利用:プランに基づき、従業員が制度を利用開始し、6ヶ月以内に各制度で定められた利用基準(例:テレワーク20日以上など)を満たします。

令和7年10月1日以降に、これまで無給だった「子の看護休暇制度」を新たに有給化し、就業規則等に規定した場合に助成金が支給されます。

支給額

30万円(1事業主1回限り)

ポイント:この制度は、実際に休暇を取得した従業員がいなくても、有給化の規定を整備し、対象となる従業員が1名以上在籍していれば申請可能です。

就業規則等に規定すべき内容

以下の要件をすべて満たす制度として規定する必要があります。

  • 年次有給休暇と同等の賃金が支払われる
  • 1年度あたり10労働日以上取得できる
  • 時間単位で取得でき、いわゆる「中抜け」も可能
  • 年次有給休暇とは別に取得できる

見逃せない!2つの加算措置

上記のいずれかの助成金を申請する際に、以下の要件を満たすとさらに加算が受けられます。(それぞれ1事業主1回限り)

制度利用期間延長加算:20万円

導入した柔軟な働き方制度や有給化した子の看護等休暇の利用対象を「中学校修了前の子を養育する労働者」まで延長した場合に加算されます。

情報公表加算:2万円

厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で、自社の男女別育児休業取得率などを公表した場合に加算されます。

申請の流れと期限

申請までの大まかな流れ

  1. 要件の確認と制度設計:自社に合った制度を選択し、助成金の要件を満たすように設計します。
  2. 就業規則の改定・届出:設計した制度を就業規則に明記し、労働基準監督署へ届け出ます。(常時10人未満の事業場でも規定の整備と周知は必須)
  3. 社内周知・プラン作成・制度利用:上記「受給までの4ステップ」等を実施します。
  4. 支給申請:必要書類を揃え、管轄の都道府県労働局へ申請します。

申請期限

申請の種類によって期限が異なるため、注意が必要です。

  • 制度を3つ以上導入した場合:対象労働者の制度利用を開始した日から6ヶ月が経過する日の翌日から2ヶ月以内
  • 子の看護等休暇を有給化した場合:有給化を就業規則に規定した日の翌日から2ヶ月以内

期限を過ぎると受理されないため、計画的な準備が不可欠です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 大企業は対象になりますか?
A1. いいえ、このコースは中小企業事業主のみが対象です。業種ごとに資本金や常時雇用する労働者数の上限が定められています。
Q2. 申請手続きは難しいですか?専門家に依頼すべきでしょうか?
A2. 就業規則の改定や個別プランの作成、利用実績の管理など、専門的な知識が求められる場面が多くあります。助成金の申請代行は法律で社会保険労務士(社労士)の独占業務と定められています。要件漏れや期限切れを防ぎ、確実な受給を目指すためには、助成金申請に強い社労士への相談をおすすめします。
Q3. 複数の制度を1人の従業員が利用した場合、実績は合算できますか?
A3. いいえ、利用実績は1つの制度で定められた基準を満たす必要があります。複数の制度の利用実績を合算することはできません。

まとめ

「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、従業員のワークライフバランスを向上させ、企業の魅力を高める絶好の機会です。助成金を活用することで、制度導入のコスト負担を軽減し、働きやすい職場環境を実現できます。

特に2025年10月からの改正では、子の看護休暇の有給化だけでも30万円が支給されるなど、中小企業にとって活用しやすい内容となっています。この機会に制度導入を検討し、人材確保と定着、ひいては企業価値の向上に繋げてみてはいかがでしょうか。