地域企業経営人材確保支援事業給付金とは?経営人材採用の強い味方
「地域企業経営人材確保支援事業給付金」は、経験豊富なプロ経営人材の採用を目指す中堅・中小企業を支援する制度です。多くの企業が抱える「大企業出身者との賃金ギャップ」という課題を解消し、企業の成長を加速させることを目的としています。具体的には、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)が運営する経営人材マッチングプラットフォーム「REVICareer(レビキャリ)」を通じて人材を採用した場合に、給与負担の一部が給付されます。
本記事では、この給付金制度の概要から、令和6年度補正予算によって決定した最新の変更点、対象要件、申請方法までを網羅的に解説します。経営革新や生産性向上を目指す経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
- 令和6年度補正予算による変更点(上限額の引き下げ等)を詳しく解説
- 「転籍型」「兼業・副業型」「在籍出向型」3つのタイプの要件がわかる
- 対象となる企業の条件や申請フロー、必要書類がわかる
- 活用する上での注意点も網羅
【重要】令和6年度補正予算による主な変更点(令和7年4月1日以降適用)
令和6年度補正予算の成立に伴い、本事業は金融庁と経済産業省の連携事業として強化され、いくつかの重要な変更が発表されました。特に「転籍型」で申請を検討している場合は注意が必要です。
変更点①:給付金上限額の引き下げ(転籍型のみ)
最も大きな変更点は、「転籍型」の給付金上限額が従来の500万円から450万円に引き下げられることです。なお、「兼業・副業型」および「在籍出向型」の上限額(200万円)に変更はありません。
※注意:現行の令和5年度補正予算を財源とする給付金の申請受付期限は令和7年2月14日です。この日を過ぎて申請する場合、転籍型の上限額は450万円となります。
変更点②:採用プロセスの見直し(転籍型のみ)
採用後のミスマッチを防ぎ、経営人材の定着と活躍を促進するため、採用プロセスに以下の2点が追加されます。これらは令和7年4月1日以降の給付金申請から適用されます。
- 説明事項のフォーマット化:
採用企業は、候補者に対して「経営理念」「経営戦略」「労働環境」「経営人材の活用ビジョン」「企業情報の発信」について、所定のフォーマットで説明することが求められます。 - 地域金融機関によるヒアリングの追加:
人材を仲介する地域金融機関等が、候補者に対して企業側の説明内容に関する所感をヒアリングします。このヒアリング結果の提出が、給付金申請の要件となります。
これらの変更は、企業と候補者間の情報の非対称性を解消し、より精度の高いマッチングを実現することを目的としています。
給付対象となる企業の要件
本給付金の対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 日本国内に本店の法人登記を行っている法人
- 以下の①と②の両方を満たす法人(資本金がない場合は②のみ)
- ① 資本金が10億円未満
- ② 常時使用する従業員数が2,000人以下
ただし、上記の要件を満たしていても、いわゆる「みなし大企業」や、国・地方公共団体が出資している法人、REVICareer登録者が所属していた大企業の親会社・子会社などは対象外となるため注意が必要です。
給付金の3つのタイプ別要件と給付額
本給付金には、人材の働き方に合わせて3つのタイプが用意されています。それぞれの要件と給付額をまとめました。
| タイプ | 給付上限額 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 転籍型 | 450万円 (R7.2.14までの申請は500万円) |
・大企業を退職した人材 ・年収500万円以上 ・1年以上の雇用契約等 |
| 兼業・副業型 | 200万円 | ・大企業等との雇用を継続 ・3ヶ月以上の契約 |
| 在籍出向型 | 200万円 | ・大企業に在籍したまま出向 ・3ヶ月以上の出向契約 |
① 転籍型
大企業を完全に退職し、中堅・中小企業に転職するケースです。最も手厚い支援が受けられますが、年収500万円以上を支払う必要がある点に注意が必要です。例えば、1年目に600万円、2年目に400万円を支払う場合、2年目が要件を満たさないため給付対象外となります。
② 兼業・副業型
大企業等に在籍しながら、その知見やスキルを活かして地域企業で働くケースです。3ヶ月以上の契約期間が必要となります。雇用契約を結ぶ「雇用等型」と、業務委託契約などを結ぶ「請負契約等型」があります。
③ 在籍出向型
大企業との雇用関係を維持したまま、地域企業へ出向するケースです。こちらも3ヶ月以上の出向契約が必要となります。
申請から受給までの流れ【4ステップ】
給付金を受給するまでの大まかな流れは以下の通りです。
- 申請書と添付書類の準備
REVICareerで人材を採用後、公式サイトから申請書をダウンロードし、必要書類を準備します。必要書類はタイプによって異なるため、注意深く確認しましょう。 - REVICareerへの提出・審査
準備した書類一式をREVICareerに提出します。提出後、REVICareerによる審査が行われ、給付の可否が決定されます。 - 給付決定・入金
審査を通過すると「給付決定通知書」が送付され、指定した口座に給付金が振り込まれます。 - 実績報告
給付金受給後、定められた期間ごとに実績報告が必要です。最初の1年間は半年ごと、その後は最大1年分を1回報告します。
活用する上での3つの注意点
本制度を活用する際には、以下の点に注意してください。
- 1. 今後の制度変更の可能性
- 今回解説した通り、本制度は社会情勢に合わせて変更される可能性があります。利用を検討する際は、必ずREVICareer公式サイトで最新の公募要領を確認してください。
- 2. 1社あたりの給付対象人数に制限がある
- 1社あたりの給付対象は、転籍型と、兼業・副業型または在籍出向型の合計で最大10人までです。また、同一の大企業からは各タイプ2人までという制限もあります。
- 3. 他の補助金との併用は不可
- 採用する人材の給与等を対象とする他の国庫補助金等と重複して受給することはできません。万が一、重複受給が発覚した場合は、給付金の返還を求められるため、事前に必ず確認しましょう。
まとめ:給付金を活用し、企業の未来を担う経営人材を獲得しよう
「地域企業経営人材確保支援事業給付金」は、成長意欲の高い中堅・中小企業にとって、優秀な経営人材を獲得するための強力な後押しとなる制度です。特に、大企業出身者の高い専門性やネットワークは、事業の新たな展開や経営基盤の強化に大きく貢献するでしょう。
令和6年度補正予算による変更点を正しく理解し、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。本記事を参考に、ぜひ制度の活用を検討してみてください。
対象者・対象事業
日本国内に本店登記があり、資本金10億円未満かつ常時使用する従業員数2,000人以下の法人。REVICareerを通じて大企業から経営人材(転籍・兼業・副業・出向)を受け入れる中堅・中小企業が対象。
必要書類(詳細)
【各タイプ共通】
・法人登記簿謄本(登記事項証明書)
・直近の確定申告書の写し
・暴力団排除に関する誓約書
・雇用者等からの個人情報提供に関する同意書
・3親等以内の親族非該当に関する誓約書
・特定金融機関への情報提供に関する同意書
【タイプ別追加書類】
・転籍型:雇用契約書等の写し、大企業との雇用契約終了を証明する書類 など
・兼業・副業型:雇用契約書等の写し、他社との雇用契約を証明する書類 など
・在籍出向型:出向契約書等の写し、大企業との雇用契約を証明する書類 など
※詳細は公式サイトでご確認ください。
対象経費(詳細)
REVICareerを通じて採用した経営人材(転籍・兼業・副業・出向者)に支払う給与、報酬、または出向元大企業への負担金。