はじめに:自社に合う雇用助成金を見つけませんか?

「従業員のスキルアップを図りたい」「多様な人材が働きやすい環境を整えたい」「経営状況が厳しい中でも雇用を維持したい」など、企業の経営課題は多岐にわたります。こうした課題解決を国が金銭的に支援するのが「雇用関係助成金」です。

しかし、種類が多く「どの助成金が自社に合うのか分からない」と感じる事業主の方も多いのではないでしょうか。この記事では、厚生労働省や関連機関が提供する主要な雇用関係助成金を目的別に整理し、分かりやすく解説します。2025年度(令和7年度)の最新情報に基づき、対象者や助成額の目安もご紹介しますので、ぜひご活用ください。

【重要】助成金を申請する前に知っておくべき共通要件

個別の助成金を見る前に、多くの雇用関係助成金に共通する基本的な受給要件と、受給できなくなる不支給要件を確認しましょう。

主な受給要件

  • ✅ 雇用保険の適用事業主であること
  • ✅ 支給のための審査に協力すること(書類提出、実地調査など)
  • ✅ 申請期間内に申請を行うこと

主な不支給要件

  • ❌ 過去5年以内に助成金の不正受給を行ったことがある
  • ❌ 前年度より前の労働保険料を納入していない
  • ❌ 過去1年間に労働関係法令の違反があった
  • ❌ 性風俗関連営業や接待を伴う飲食等営業などを行っている(一部例外あり)
  • ❌ 暴力団と関係がある、または暴力主義的破壊活動を行う団体に属している
  • ❌ 倒産している

注意:これらは一部です。必ず申請したい助成金の公式な支給要領で詳細をご確認ください。

【目的別】2025年度 雇用関係助成金一覧

ここでは、企業の目的別に代表的な助成金をピックアップしてご紹介します。

1. 従業員の雇用を守りたい(雇用維持)

景気変動などの理由で事業活動が縮小しても、従業員の雇用を維持するための助成金です。

  • 雇用調整助成金
    概要:休業や教育訓練、出向によって従業員の雇用を維持する事業主を支援。
    助成額の目安:休業手当相当額の一部(中小企業2/3、大企業1/2など)

2. 新たに人材を雇い入れたい(新規雇用)

高年齢者や障害者、就職が困難な方などを新たに雇い入れる際に活用できます。

  • 特定求職者雇用開発助成金
    概要:高年齢者、障害者、母子家庭の母などの就職困難者を継続して雇用する事業主を支援。
    助成額の目安:対象者1人あたり60万円~240万円(対象者の条件や労働時間による)
  • トライアル雇用助成金
    概要:職業経験が不足している求職者などを、原則3ヶ月間試行雇用する事業主を支援。
    助成額の目安:対象者1人あたり月額最大4万円(母子家庭の母などは5万円)

3. 従業員の待遇や職場環境を改善したい

非正規雇用労働者のキャリアアップや、働きやすい職場環境整備を支援します。

  • キャリアアップ助成金
    概要:有期雇用労働者などを正社員化したり、処遇改善に取り組んだりする事業主を支援。賃金規定の改定や賞与・退職金制度の導入も対象。
    助成額の目安:正社員化コースで1人あたり最大80万円(中小企業の場合)など、コースにより様々。
  • 人材確保等支援助成金
    概要:雇用管理制度の導入やテレワークの実施、外国人労働者の就労環境整備などを通じて、従業員の離職率低下に取り組む事業主を支援。
    助成額の目安:導入した制度に応じて助成(例:雇用管理制度で40万円)
  • 65歳超雇用推進助成金
    概要:65歳以上への定年引上げや、高年齢者の無期雇用転換などを行う事業主を支援。
    助成額の目安:措置内容に応じて15万円~160万円

4. 仕事と家庭の両立を支援したい

育児や介護と仕事を両立できる職場環境づくりを後押しします。

  • 両立支援等助成金
    概要:男性の育児休業取得、介護離職の防止、育休からの円滑な復帰支援、不妊治療との両立支援などに取り組む事業主を支援。
    助成額の目安:出生時両立支援コースで1人目20万円など、コースや取組内容により様々。

5. 従業員のスキルアップを支援したい(人材育成)

従業員の職業能力開発を計画的に行う事業主を支援します。

  • 人材開発支援助成金
    概要:職務に関連した訓練(OFF-JT)の実施、教育訓練休暇制度の導入、デジタル人材育成などを支援。リスキリングにも対応。
    助成額の目安:訓練経費の一部(45%~75%)や訓練中の賃金の一部(1人1時間あたり800円など)を助成。

6. 障害者の雇用を促進・支援したい

障害のある方が働きやすい環境を整えるための専門的な助成金です。

  • 障害者作業施設設置等助成金
    概要:障害特性に応じた作業施設・設備の設置や整備費用を助成。
    助成率の目安:対象費用の2/3
  • 障害者介助等助成金
    概要:職場介助者や手話通訳担当者の配置・委嘱費用などを助成。
    助成率の目安:対象費用の3/4
  • 重度障害者等通勤対策助成金
    概要:通勤を容易にするための住宅賃借、通勤援助者の委嘱費用などを助成。
    助成率の目安:対象費用の3/4
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金
    概要:ジョブコーチによる職場適応支援を実施する事業主を支援。
    助成額の目安:支援形態により月額最大12万円や1回あたり1.8万円など。

申請方法と相談窓口

助成金の申請は、計画の策定・提出から始まり、計画実施後に支給申請を行うのが一般的です。近年は「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請が推奨されており、GビズIDを取得するとスムーズです。

どの助成金が使えるか迷った場合や、申請手続きに不安がある場合は、以下の窓口にご相談ください。

  • 都道府県労働局・ハローワーク:多くの雇用関係助成金の相談・申請窓口です。
  • (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の都道府県支部:障害者雇用関連や65歳超雇用推進助成金などの専門窓口です。

また、社会保険労務士などの専門家に相談するのも有効な手段です。

まとめ

雇用関係助成金は、企業の成長と従業員の働きがい向上を両立させるための強力なツールです。本記事で紹介した目的別の分類を参考に、まずは自社の課題に合った助成金を見つけることから始めましょう。最新かつ詳細な情報は必ず公式サイトで確認し、計画的な活用をご検討ください。