この記事のポイント

  • 2024年度(令和6年度補正予算)および2025年度(令和7年度予算)の環境省による脱炭素・再生可能エネルギー関連の補助金・助成金を網羅的に解説します。
  • 地方公共団体、民間企業、個人まで、幅広い対象者が利用できる多様な支援事業を紹介。
  • 太陽光発電、ZEH/ZEB化、省エネ改修、EV導入など、具体的な補助対象事業と要件を分かりやすく整理しました。
  • 脱炭素経営やカーボンニュートラル実現に向けた設備投資を検討中の方は必見です。

はじめに:脱炭素化を加速する環境省の補助金

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、国は脱炭素化への取り組みを強力に推進しています。その中心的な役割を担うのが、環境省が提供する多種多様な補助金・助成金です。これらの支援事業は、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー性能の向上、電気自動車(EV)の普及などを通じて、企業や自治体、そして個人の脱炭素への移行を後押しします。

この記事では、令和6年度補正予算および令和7年度予算に基づき、現在公募中または今後公募が予定されている主要な補助金事業をカテゴリ別に詳しく解説します。自社の事業に合致する支援策を見つけ、有効に活用するための一助となれば幸いです。

【カテゴリ別】環境省 脱炭素・再エネ補助金一覧

環境省の補助金は対象者や目的別に多岐にわたります。ここでは主要な事業を以下のカテゴリに分けてご紹介します。

1. 地域・公共施設向け支援事業

地方公共団体が主体となり、地域全体の脱炭素化や公共施設のレジリエンス強化を目指す事業です。

事業名 概要 対象者 補助率・上限額(例)
地域脱炭素推進交付金 脱炭素先行地域づくりや、再エネ設備導入、基盤インフラ整備等を支援。 地方公共団体等 事業により異なる(交付金形式)
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業 災害時に避難施設となる公共施設等へ、平時の脱炭素化と災害時のエネルギー供給を両立する再エネ設備等の導入を支援。 地方公共団体(PPA等で民間事業者も可) 1/3〜2/3
一般廃棄物処理施設の整備 エネルギー回収型廃棄物処理施設など、防災・減災やエネルギー利用を推進する施設の整備を支援。 市町村等 1/3(一部1/2)

2. 民間企業・工場向け支援事業

企業の自家消費型再エネ導入や、工場・事業場の省CO2化を促進する事業です。特に注目度の高い2事業を詳しく解説します。

【注目事業①】地域共生型の太陽光発電設備の導入促進事業

営農地(ソーラーシェアリング)や農業用ため池などの水面を活用した太陽光発電設備の導入を支援する事業です。地域の特性を活かし、農業と発電を両立させる取り組みを後押しします。

  • 対象事業: 営農地事業、水面等事業
  • 主な要件:
    • パワーコンディショナの合計出力が10kW以上
    • FIT/FIP認定を取得しない自家消費型または特定の施設への供給
    • 停電時に電力供給可能なシステム構成
    • コスト要件(kWあたりの単価上限)を満たすこと
  • 補助対象設備: 太陽光発電設備、定置用蓄電池、自営線、EMSなど
  • 補助率・上限額: 補助率1/2、上限1億5,000万円
  • 対象者: 民間企業、個人・個人事業主(農林水産事業者)、各種法人など

【注目事業②】再エネ熱利用・工場廃熱利用等の価格低減促進事業

太陽熱、バイオマス熱、地中熱などの再生可能エネルギー熱や、工場から出る廃熱を有効活用するための設備導入を支援します。熱エネルギーの脱炭素化を目指す事業者に最適です。

  • 対象事業:
    • 設備等導入事業A:太陽熱、バイオマス熱、自家消費型再エネ発電(太陽光除く)
    • 設備等導入事業B:地中熱、温泉熱、河川熱、雪氷熱など
    • 設備等導入事業C:工場廃熱利用、温泉供給設備の省エネ改修
  • 主な要件: CO2削減コストが基準値を下回ること(コスト要件)
  • 補助対象設備: 各種熱利用設備(ヒートポンプ、熱交換器等)、発電設備、蓄電池など
  • 補助率・上限額: 補助率1/3または1/2、上限1億円
  • 対象者: 民間企業、個人事業主、地方公共団体、各種法人など
事業名 概要 対象者 補助率・上限額(例)
脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業) 電化・燃料転換等によりCO2排出量を大幅削減する設備改修を支援。 民間事業者・団体 1/3、上限1億円または5億円
商用車等の電動化促進事業 トラック、タクシー、バス、建設機械の電動化(BEV、FCV等)を支援。 民間事業者、地方公共団体等 差額の2/3、本体価格の1/4等
Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業 バリューチェーン内の代表企業と連携企業(中小企業等)が行う省CO2設備導入を支援。 民間事業者・団体 中小企業1/2、大企業1/3、上限15億円

3. 住宅・建築物向け支援事業

新築住宅のZEH化や既存住宅の断熱リフォーム、業務用ビルのZEB化など、建物の脱炭素化を支援する事業です。

事業名 概要 対象者 補助額(例)
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業 新築戸建住宅のZEH、ZEH+化を支援。 住宅取得者等 ZEH: 55万円/戸、ZEH+: 90万円/戸
集合住宅の省CO2化促進事業 新築集合住宅のZEH-M化や既存集合住宅の断熱リフォームを支援。 住宅取得者等 新築: 40万円/戸〜、既存: 上限15万円/戸
断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 既存住宅の窓を高性能な断熱窓へ改修する費用を支援。 住宅の所有者等 工事内容に応じ定額(補助率1/2相当等)
建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業 業務用施設の新築・既存ZEB化、省CO2改修等を支援。 地方公共団体、民間事業者等 事業内容・ZEBランクに応じ補助率変動

4. その他(国民運動・技術開発など)

ライフスタイルの転換を促す国民運動の推進や、先進技術の社会実装を目指す事業です。

事業名 概要 対象者
「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業 官民連携で「デコ活」を推進し、脱炭素型ライフスタイルへの転換を促すプロジェクト等を実施。 地方公共団体、民間企業・団体等
ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業 軽量で柔軟な次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の社会実装モデル創出を支援。 地方公共団体、民間事業者・団体

申請にあたっての共通の注意点

  • 公募期間の確認: 各事業には公募期間が定められています。公式サイトで最新情報を必ず確認してください。人気の補助金は早期に予算上限に達することもあります。
  • 交付決定前の着手は原則不可: 補助金は、原則として交付決定通知を受けた後に契約・発注した経費が対象です。フライング着手は補助対象外となるため注意が必要です。
  • 書類の準備: 申請には事業計画書や経費の内訳、見積書など多くの書類が必要です。不備なく提出できるよう、余裕を持った準備を心がけましょう。
  • 執行団体の確認: 多くの事業は、環境省から委託を受けた一般社団法人などが執行団体(申請窓口)となっています。申請先や問い合わせ先を間違えないようにしましょう。

まとめ

環境省は、令和6年度補正予算と令和7年度予算を通じて、脱炭素社会の実現に向けた幅広い支援策を展開しています。再生可能エネルギーの導入から省エネ改修、次世代技術の実装まで、自社の状況や計画に合わせて活用できる補助金がきっと見つかるはずです。

本記事で紹介した事業は一部です。詳細な要件や最新の公募情報については、必ず環境省や各事業の執行団体のウェブサイトをご確認ください。これらの補助金を戦略的に活用し、持続可能な社会の実現と自社の競争力強化を両立させましょう。