日本産酒類の海外展開や国内の新市場開拓を目指す酒類事業者様へ朗報です。国税庁が実施する「令和7年度 酒類業振興支援事業費補助金(第3期)」は、ブランディング強化、新商品開発、インバウンド需要開拓など、意欲的な取り組みを強力に後押しする制度です。本記事では、この補助金の概要から対象経費、申請方法までをプロが分かりやすく解説します。

【令和7年度】酒類業振興支援事業費補助金とは?

本事業は、酒類事業者による日本産酒類のブランディング、海外展開、国内外の新市場開拓といった意欲的な取組を支援するものです。これにより、日本産酒類の輸出拡大と酒類業の経営改革・構造転換を図り、業界全体の健全な発達を促進することを目的としています。

補助金の概要が一目でわかる早見表

項目 内容
補助金名 令和7年度 酒類業振興支援事業費補助金(第3期)
実施機関 国税庁
公募期間 令和7年7月23日(水)~ 令和7年9月25日(木)17:00まで
補助上限額 海外展開支援枠: 最大1,500万円
新市場開拓支援枠: 最大500万円
補助率 海外展開支援枠: 1/2
新市場開拓支援枠: 小規模事業者 2/3、その他 1/2
申請方法 jGrantsによる電子申請のみ

注目すべき2つの申請区分

本補助金には、事業の目的に応じて2つの申請枠が設けられています。自社の戦略に合った枠を選んで申請しましょう。

1. 海外展開支援枠

日本産酒類の輸出拡大やインバウンド需要の開拓を目指す事業が対象です。

  • 海外ニーズを踏まえた現地調査やブランド戦略の構築
  • 海外の嗜好に合わせた新商品開発、新規ブランドの立ち上げ
  • 海外での新規販路開拓や新たな販売手法の試行
  • 酒蔵の観光化(酒蔵ツーリズム)推進によるインバウンド需要の取り込み

2. 新市場開拓支援枠

国内市場における新たなニーズ獲得や、製造・流通の高度化・効率化を目指す事業が対象です。

  • 既存商品と差別化された高付加価値商品の開発(例:食品とのペアリング特化商品)
  • 販売手法の多様化(例:顧客体験を重視した販売形態の確立)
  • ICT技術を活用した製造・流通の高度化・効率化(例:AIによる品質管理システム導入)

⚠️ 申請前の重要チェックポイント

申請にあたり、特に注意すべき点がいくつかあります。これらは審査評価や補助金返還に関わる重要な項目です。

  • 米国関税措置の影響: 米国の関税措置による影響を踏まえた取組は、審査において高く評価されます。該当する場合は、事業計画書に具体的に記載し、証明書類を添付しましょう。
  • 設備投資のみの事業: 経費が全て設備投資であり、設備の導入のみで完結する事業は評価が劣後する可能性があります。導入した設備を活用した新商品開発への着手など、具体的な取り組みを計画に盛り込むことが重要です。
  • 給与支給総額の目標: 新市場開拓支援枠では、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる事業計画が必要です。目標未達の場合、補助金の一部返還を求められる可能性があるため、達成可能な計画を策定してください。

補助対象となる事業者

本補助金の対象となるのは、以下の要件をすべて満たす、日本国内に所在する事業者です。

  • 酒税法の規定により、酒類の製造免許または酒類の販売業免許を受けている者(酒類業組合等を含む)。
  • または、上記の酒類事業者を1者以上含むグループであること(グループ申請可)。
  • 反社会的勢力でないこと、国税を滞納していないことなど、公募要領に記載された「不適当な者」に該当しないこと。

補助対象となる経費【詳細リスト】

補助対象となる経費は、事業の対象として明確に区分でき、証拠書類によって確認できるものに限られます。交付決定日以降に発注し、補助事業期間内に支払いが完了したものが対象です。

経費区分 内容例
① 設備等費 機械装置、器具備品、情報システム等の購入・制作・構築費
⑦ 広報費 パンフレット、動画等の作成費、広告媒体の活用費
⑧ 委託費・⑨ 外注費 自ら実行困難な業務の委託・外注費用
⑩ マーケティング調査費 ユーザーニーズ調査等の実施費用
⑫ 展示会等出展費 国内外の展示会、商談会、ECサイト等への出展費用
⑭ 原材料等費 試作品開発に必要な原材料・副資材の購入費
その他、謝金、旅費、借損料、通訳・翻訳費、会議費など全17区分

※人件費や不動産購入費、公募申請書類の作成費用などは対象外です。詳細は必ず公募要領をご確認ください。

申請から補助金受給までの流れ【6ステップ】

申請手続きは以下の流れで進みます。特に、GビズIDの取得には時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めましょう。

  1. 1公募申請(~9/25)
    jGrantsから必要書類を提出します。GビズIDプライムアカウントが必須です。
  2. 2採択・説明会
    審査後、採択・不採択が通知されます。採択者は説明会に参加します。
  3. 3交付申請・決定
    国税庁に交付申請書を提出し、交付決定通知書を受け取ります。事業開始は交付決定後です。
  4. 4補助事業の実施
    交付決定された計画に基づき、事業を実施します(~令和8年2月28日まで)。
  5. 5実績報告
    事業完了後30日以内に実績報告書を提出し、検査を受けます。
  6. 6補助金の請求・支払
    補助金額が確定した後、請求手続きを行い、補助金が支払われます。

まとめ

「酒類業振興支援事業費補助金」は、海外展開や新市場開拓を目指す酒類事業者にとって、事業を大きく飛躍させる絶好の機会です。補助上限額も大きく、幅広い経費が対象となるため、活用価値は非常に高いと言えるでしょう。
公募締切は令和7年9月25日(木)です。申請には事業計画の策定など準備が必要です。まずは公募要領を熟読し、自社の事業計画と照らし合わせながら、早めに準備を進めることをお勧めします。