人文科学・社会科学分野で、常識にとらわれない独創的な研究に挑戦したい若手研究者の皆さんへ。今回は、公益財団法人サントリー文化財団が実施する「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」を徹底解説します。信州大学の松本卓也助教による「温泉の進化人類学」というユニークな採択事例も交えながら、その魅力に迫ります。

サントリー文化財団「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」とは?

この助成金は、人文科学・社会科学の分野で、独創的で社会的に大きな意義を持つ研究を志す、将来性豊かな若手研究者を支援することを目的としています。既存の学問の枠にとらわれず、自由な発想で挑戦する研究を後押しする、非常に魅力的なプログラムです。

助成金概要

助成金名 若手研究者のためのチャレンジ研究助成
実施団体 公益財団法人サントリー文化財団
助成金額 1件につき上限100万円
対象分野 人文科学、社会科学に関する研究
対象者 45歳以下の博士号取得者または同等以上の実績を持つ研究者
公式サイト 公式サイトへ

この助成金の3つの注目ポイント

ポイント1:徹底した「独創性」の重視

本助成金は、何よりも研究の独創性と社会的な意義を重視します。既存の枠組みを超えるような、チャレンジングな研究テーマが高く評価される傾向にあります。

ポイント2:45歳以下の若手研究者を強力にサポート

応募資格が45歳以下に設定されており、キャリアの初期段階にある研究者が、自身のアイデアを形にするための大きなチャンスとなります。国籍や所属機関を問わない点も魅力です。

ポイント3:人文科学・社会科学分野に特化

自然科学系の助成金が多い中、人文科学・社会科学分野に特化している点は貴重です。文化、歴史、社会、人間に関する深い洞察を求める研究に最適な支援と言えるでしょう。

申請から採択までの流れ

  1. 1
    公式サイトで募集要項を確認
    まずは公式サイトで最新の募集要項、応募資格、スケジュールを詳細に確認します。
  2. 2
    応募書類の作成
    指定された応募用紙をダウンロードし、研究計画や業績などを具体的に記述します。
  3. 3
    Webシステムから応募
    財団のウェブサイトにある応募フォームから、作成した書類を提出します。
  4. 4
    選考・結果通知
    専門家による厳正な書類選考が行われ、採択者が決定・通知されます。

※スケジュールは年度によって変動します。2024年度の募集は5月31日で終了しています。来年度の応募に向けて、早めに準備を始めましょう。

【採択事例】温泉が人類の社会性を育んだ?信州大学・松本助教の挑戦

2021年度、信州大学理学部の松本卓也助教が本助成金に採択されました。その研究テーマは「温泉の進化人類学:温泉利用が霊長類の社会性に与える影響の解明」という、非常にユニークなものです。

本研究は、人類の世界的拡散を可能にした寒冷地適応と社会性が、温泉を含む生態系によって育まれた可能性があるという大胆な仮説を立てています。その仮説を検証するため、世界で唯一、野生環境で温泉に入るサルとして知られる地獄谷野猿公苑のニホンザルを調査します。

「自分より順位が高くていつもは近寄りがたい相手とも、温泉の中では近くでゆっくり過ごすことができるかも?」

このような視点から、温泉という特殊な環境が霊長類の社会性にどのような影響を与えるのかを解明しようという、まさに「チャレンジ研究」にふさわしいテーマです。

(イラスト ©泥水真水「初期人類とニホンザルが温泉で会う」)

まとめ:独創的なアイデアで未来を切り拓こう

サントリー文化財団の「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」は、資金的な支援だけでなく、自身の独創的なアイデアが社会的に評価される貴重な機会です。松本助教の事例のように、常識にとらわれない自由な発想こそが、新たな知の地平を切り拓きます。ご自身の研究テーマに情熱を持つ若手研究者の方は、ぜひ次回の公募に挑戦してみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ先

公益財団法人サントリー文化財団「チャレンジ研究助成」係

E-mail: challenge.grant@suntory.co.jp