既存のビジネスモデルから脱却し、新たな市場へ挑戦しようと考えている中小企業の皆様にとって、非常に強力な追い風となる制度が動き出しました。中小企業庁が主導する新事業進出補助金は、単なる設備投資の支援に留まらず、企業のあり方を根本から変えるような前向きな挑戦を最大9,000万円という巨額の資金でバックアップしてくれます。第3回の公募が開始された今、その詳細な条件や採択されるための戦略をしっかりと理解しておくことが、事業成功への第一歩と言えるでしょう。
この補助金の要点
新市場への進出や高付加価値な事業への挑戦を支援する制度で、建物の建築費用まで対象に含まれる点が大きな特徴です。投資規模1,500万円以上という本格的なプロジェクトが求められ、大幅な賃上げを伴う場合には最大9,000万円まで補助額が引き上げられます。
新事業進出補助金の全体像と注目の第3回スケジュール
この補助金は、かつての事業再構築補助金の後継として位置づけられており、1,500億円規模という膨大な予算が投じられています。国が本気で中小企業の構造転換を求めている証拠と言っても過言ではありません。特に注目すべきは第3回のスケジュールです。公募自体は令和7年12月23日から始まっており、実際の申請受付は令和8年2月17日にスタートします。そして、最終的な締め切りは令和8年3月26日の18時厳守となっているため、今から準備を始めるのが理想的なタイミングです。
準備期間が数ヶ月あるように見えますが、実はそう余裕はありません。なぜなら、この補助金で求められる事業計画は、単に機械を買うといった単純なものではなく、市場分析や競合比較を徹底的に行った高度な内容が必要だからです。さらには、認定支援機関との連携も必須となっているため、早めに信頼できるパートナーを見つけておく必要があります。募集は今後も継続される予定ですが、第3回のチャンスを逃さないよう、今のうちから自社の進むべき方向性を固めておくのが賢明な判断ではないでしょうか。
補助上限額(大幅賃上げ特例適用時)
最大 9,000万円
補助金額と従業員数に応じた枠組み
補助される金額は、会社の規模、つまり従業員数によって細かく分かれています。例えば、従業員が20人以下の会社であれば通常枠で2,500万円、101人以上の規模になれば7,000万円までが上限となります。ここに、大幅な賃上げを約束する特例を適用することで、さらに500万円から2,000万円ほどの上乗せが可能になる仕組みです。補助率は一律で2分の1となっているため、国が投資額の半分を負担してくれるという、非常にありがたい制度であることは間違いありません。
注意点
補助金の下限額が750万円に設定されている点には注意が必要です。つまり、税抜きで1,500万円以上の投資計画を立てなければ、そもそも申請の土俵に乗ることができません。小規模な備品購入だけでは対象外となってしまうため、大規模な設備投資を伴うプロジェクトであることが前提となります。
対象となる経費と事業の条件を深掘りする
どのような経費が認められるのかという点も、経営者の皆様が最も気にされる部分でしょう。この補助金の最大の魅力は、建物費が対象に含まれることです。工場の建設や店舗の改装、あるいは既存設備の撤去費用まで幅広くカバーされています。最近の補助金はIT化や機械導入に偏る傾向がありましたが、新事業進出補助金は箱モノ、つまりハードウェアの整備にもしっかりと資金を回すことができるのです。もちろん、機械装置やシステム構築費、技術導入のためのライセンス費用、さらには専門家へのコンサルティング料なども対象となります。
一方で、非常に厳しいルールも存在します。それは、導入する設備や建物は専ら補助事業のために使用しなければならないという点です。例えば、新しい機械を導入しても、それをこれまでの既存事業の生産に流用することは認められません。あくまで新事業専用として活用することが求められます。このあたりの線引きは審査でも厳しくチェックされるポイントであり、計画を立てる段階で既存事業との差別化を明確にしておく必要があります。
ポイント
新事業進出指針として、製品等の新規性と市場の新規性の両方を満たす必要があります。これまでの顧客層とは異なるターゲットに対し、自社にとって初めての製品やサービスを提供することが、採択への必須条件となります。
申請から採択、受給までの5つのステップ
補助金の申請手続きは、昔に比べて非常にスマートになりましたが、その分デジタルへの対応が欠かせません。具体的にどのような手順で進めていくべきか、ステップを追って解説していきます。
GビズIDプライムアカウントの取得
全ての申請はオンラインで行われるため、この専用IDがなければ始まりません。発行までに数週間かかることもあるため、真っ先に済ませておくべき作業です。
事業計画の立案と認定支援機関の選定
何を、誰に、どう売るのか。そしてどれだけの利益が出るのかを数値で示します。認定支援機関から計画の妥当性について確認を受ける必要があります。
電子申請システムでの応募
作成した事業計画書や決算書、見積書などの必要書類を全てアップロードします。締め切り間際はサーバーが混み合うため、数日前の完了を目指しましょう。
面接審査への対応(対象者のみ)
申請金額や内容によっては、オンラインでの面接が実施される場合があります。計画書の詳細について、自らの言葉で熱意を持って説明することが求められます。
採択後の交付申請と実績報告
採択はゴールではなくスタートです。実際に投資を行い、その証憑を提出して初めて補助金が振り込まれます。事務手続きが非常に多いため、根気強く進めましょう。
採択率を劇的に上げるための3つの秘訣
第1回の採択率は約37%という結果が出ています。10社中4社弱しか受からないという現実を見れば、生半可な準備では太刀打ちできないことが分かります。では、勝ち残るためには何が必要なのでしょうか。まずは、ストーリーの整合性です。なぜ今、その事業に取り組む必要があるのか、そして自社の強みをどう活かせるのか。この流れに淀みがないことが、審査員を納得させる最大の武器になります。
次に重要なのが、加点項目の積極的な取得です。パートナーシップ構築宣言や、経営革新計画の承認といった、国が推奨する取り組みを行っている企業は、審査で有利になります。点数化される項目であるため、1点でも多く積み上げることが、当落線上での運命を分けることになります。手間はかかりますが、これらを活用しない手はありません。
そして最後は、数字の裏付けです。なんとなく儲かりそう、といった希望的観測ではなく、市場規模のデータや想定顧客からのヒアリング結果などを盛り込み、収益計画の妥当性を証明してください。また、賃上げ要件についても、単に給与を上げると宣言するだけでなく、その原資をどこから生み出すのかという論理的な説明が欠かせません。こうした細部へのこだわりが、信頼感のある事業計画書を作り上げるのです。
よくある質問にお答えします
Q. 既存の事業を少し改良するだけでも申請できますか?
A. 単なるマイナーチェンジでは難しいと言わざるを得ません。この補助金は新事業進出を掲げているため、製品の新規性と市場の新規性の両方が求められます。これまで扱ってこなかったカテゴリーの製品を、これまでとは異なる顧客層へアプローチするような、大胆な転換が必要です。
Q. 建物費だけでも申請できますか?
A. 理論上は可能ですが、建物を建てる目的はあくまで新事業のためである必要があります。建物の中に入る設備や、そこで行われる事業活動そのものとのセットで計画を立てるのが一般的です。建物単体だと、不動産投資とみなされるリスクもあるため注意しましょう。
Q. 賃上げ要件が達成できなかったらどうなりますか?
A. 万が一、計画期間終了時に賃上げ要件を満たせなかった場合、補助金の一部を返還しなければならないルールがあります。ただし、事業の状況が悪化してどうしても不可能だった場合などの救済措置も設けられる予定です。とはいえ、最初から無理のある計画を立てるのではなく、実現可能な範囲での設定が求められます。
Q. 第1回や第2回で不採択だった場合、再挑戦は可能ですか?
A. もちろんです。不採択だった理由を分析し、計画をブラッシュアップして第3回に臨むことは全く問題ありません。むしろ、前回のフィードバックを活かして精度を高めることで、採択される可能性はぐっと高まります。
Q. 相談から申請までどれくらいの期間を見れば良いですか?
A. 一般的には1ヶ月半から2ヶ月程度は見ておくべきでしょう。事業計画の策定、認定支援機関との調整、見積書の取得など、やるべきことは多岐にわたります。第3回の締め切りが3月26日ですので、1月や2月には本格的な準備に入っておきたいところです。
まとめ
新事業進出補助金は、これからの時代を生き抜く中小企業にとって、まさに起死回生の一手となり得る強力な支援策です。最大9,000万円という補助額は、新たな工場の建設や革新的なサービスの開発を実現するのに十分な金額でしょう。ただし、その分ハードルは高く、戦略的な事業計画と確実な賃上げ、そして徹底した事前準備が欠かせません。第3回の締め切りである3月26日に向けて、今すぐ自社の未来を描き始めてください。このチャンスを掴めるかどうかが、数年後の企業の姿を左右することになるかもしれません。
※本記事の情報は執筆時点のものです。最新情報は公式サイトでご確認ください。