【2025年度・令和7年】雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金は、景気の変動や産業構造の変化といった経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために一時的な「休業」「教育訓練」「出向」といった雇用調整を実施した場合に、その費用の一部を国が助成する制度です。
新型コロナウイルス感染症の特例措置で広く知られるようになりましたが、本来は経済危機や災害時など、企業の経営努力だけでは雇用を守ることが困難な状況に陥った際に活用される、セーフティネットとしての役割を担っています。この記事では、令和7年度(2025年)の最新情報に基づき、制度の概要から申請方法までを専門家が分かりやすく解説します。
雇用調整助成金の基本情報
制度の目的 | 経済上の理由による事業活動縮小時における、従業員の雇用維持支援 |
対象となる措置 | ①休業 ②教育訓練 ③出向 |
対象事業者 | 経済上の理由で事業縮小を余儀なくされた雇用保険適用事業主 |
申請窓口 | 各都道府県の労働局、ハローワーク |
主な支給要件
雇用調整助成金を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
1. 雇用保険の適用事業主であること
大前提として、雇用保険に加入している事業主であることが必要です。
2. 事業活動の縮小(生産量要件)
売上高や生産量など、事業活動の状況を示す指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比較して10%以上減少していることが必要です。
3. 雇用量の維持(雇用量要件)
雇用保険被保険者数と派遣労働者数の最近3か月間の月平均値が、前年同期と比較して大きく増加していないことが求められます。具体的には、中小企業は10%を超えてかつ4人以上、大企業は5%を超えてかつ6人以上の増加がないことが条件です。
4. 雇用調整の実施
休業、教育訓練、出向のいずれかを、労使間の協定に基づいて計画的に実施する必要があります。
- 休業: 所定労働日の全日または一部(1時間以上)にわたって実施されるもの。
- 教育訓練: 職業に関する知識・技能の向上を目的とした訓練(OJTは対象外)。
- 出向: 雇用維持を目的とし、3か月以上1年以内に出向元に復帰するもの。
5. クーリング期間
過去に本助成金を受給した場合、前回の対象期間満了日から1年以上が経過している必要があります。
📝 ポイント
これらの要件は複雑に見えますが、基本的には「経営が厳しくなった企業が、安易な解雇をせず、雇用を守るための努力をしているか」が問われます。自社の状況が当てはまるか、まずは労働局に相談してみることをお勧めします。
受給額と助成率
受給額は、事業主が支払った休業手当や賃金負担額に、定められた助成率を乗じて計算されます。1人1日あたりの支給上限額が設定されています。
対象措置 | 中小企業 | 大企業 | 1人1日あたり上限額 |
---|---|---|---|
休業・出向 | 2/3 | 1/2 | 8,870円 (令和7年8月1日時点) |
教育訓練 | 2/3 (※条件により1/2に変動) | 1/2 (※条件により1/4に変動) | |
教育訓練加算 | 1,200円/人日 (※条件により1,800円に増額) | – |
⚠️【重要】教育訓練の活用で助成率が変動
令和6年4月から、単なる休業だけでなく、従業員のスキルアップに繋がる教育訓練を積極的に活用することが推奨されています。累計支給日数が30日を超えた後は、休業日数のうち教育訓練を実施した割合に応じて助成率や加算額が変動します。積極的に教育訓練を取り入れることで、より手厚い支援を受けられます。
申請手続きの流れ
- 労使協定の締結
まず、休業等の内容、対象者、期間などについて労働組合(ない場合は労働者代表)と書面で協定を結びます。 - 雇用調整の計画
労使協定に基づき、具体的な雇用調整の実施計画を作成します。 - 計画届の提出
雇用調整を開始する日の前日までに、「休業等実施計画(変更)届」を管轄の労働局またはハローワークに提出します。※初回の提出は2週間前までが推奨されています。 - 雇用調整の実施
提出した計画に沿って、休業や教育訓練などを実施します。 - 支給申請
支給対象期間(通常1か月)の末日の翌日から2か月以内に、「支給申請書」と実績がわかる書類(出勤簿、賃金台帳など)を提出します。 - 審査・支給決定
労働局で審査が行われ、支給が決定されると助成金が振り込まれます。
💡 オンライン申請が便利!
雇用調整助成金は「雇用関係助成金ポータル」からオンラインでの電子申請が可能です。窓口に行く手間が省け、24時間いつでも申請できるため、ぜひ活用しましょう。
特例措置について
大規模な災害等が発生した際には、要件緩和などの特例措置が講じられることがあります。
令和6年能登半島地震に係る特例措置
令和6年能登半島地震で被災した地域の事業主を対象に、生産量要件の緩和や助成率の引き上げ、クーリング期間の撤廃などの特例措置が実施されています。特に、令和7年1月からは豪雨被害も考慮した新たな特例が設けられています。該当する地域の事業主様は、必ず最新の情報を労働局にご確認ください。
まとめ
雇用調整助成金は、予期せぬ経営環境の変化から大切な従業員の雇用を守るための強力な支援策です。要件や手続きは複雑ですが、計画的に準備を進めることで、企業の負担を大幅に軽減できます。
- ✅ 目的: 経済的な理由で事業が縮小した際の雇用維持を支援。
- ✅ 要件: 売上10%減などの生産量要件を満たす雇用保険適用事業主が対象。
- ✅ 助成額: 休業手当等の2/3(中小企業)を助成。上限あり。
- ✅ ポイント: 教育訓練の活用で、より手厚い支援が受けられる。
- ✅ 手続き: 事前の「計画届」提出が必須。申請期限は2か月以内。
厳しい経営状況の中でも人材を守り、企業の未来を繋ぐため、雇用調整助成金の活用をぜひご検討ください。不明な点は、管轄の労働局や専門家である社会保険労務士に相談することをお勧めします。