✓ | この記事の信頼性
監修:補助金インサイト編集部(中小企業診断士・行政書士監修)
最終更新:2025年01月01日
情報源:厚生労働省 人材開発支援助成金 パンフレット・公募要領 |
「従業員のスキルアップを図りたいが、研修費用がネックになっている」「DX化や新事業展開のために人材を育てたいが、何から始めればいいかわからない」。そんな切実なお悩みをお持ちの中小企業の経営者様、人事担当者様は多いのではないでしょうか。
実は、国が実施する「人材開発支援助成金」を活用すれば、従業員の職業訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部を強力にサポートしてもらえる可能性があります。
この記事では、2025年度の最新情報に基づき、人材開発支援助成金の概要から、具体的なコース内容、申請方法、そして採択されるためのポイントまで徹底的に解説します。この制度を最大限に活用し、企業の持続的な成長と競争力強化を実現していきましょう。
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基本情報サマリー |
| 制度名 | 人材開発支援助成金 |
| 主管官庁 | 厚生労働省(窓口:都道府県労働局) |
| 最大補助率 | 経費の75%(人への投資促進コース等) |
| 賃金助成 | 最大960円/時間 |
| 主な対象 | 雇用保険適用事業主(中小企業含む) |
人材開発支援助成金とは?30秒で理解
人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練等を、計画に沿って実施した場合に受給できる制度です。
この制度の背景には、労働者のキャリア形成を効果的に促進し、企業の生産性向上と持続的な成長を支援するという国の目的があります。近年では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)に対応するためのリスキリング(学び直し)を強力に後押ししており、助成内容も大幅に拡充されているのです。
一言でいうと、「計画的な従業員教育にかかるコストを、国が一部負担してくれる制度」といえるでしょう。
どんな人向けか
単に「研修を受けさせる」だけでなく、事前に計画を立てて国(労働局)に認められることで、以下の2つの支援を受けることができます。
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✓ | 経費助成: 入学料、受講料、教科書代などの経費の一部 |
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✓ | 賃金助成: 訓練期間中に支払われる賃金の一部 |
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ポイント:この記事でわかること
・人材開発支援助成金の全体像と主要コースの違い
・人への投資促進コースやリスキリング支援のメリット
・具体的な助成金額と補助率の計算方法
・計画届から支給申請までの確実なステップ
・審査に通過するためのコツとよくある不備 |
対象となる事業主・労働者
原則として、申請する事業主に雇用されている被保険者(従業員)が対象です。個人事業主本人や、雇用保険の被保険者となっていない会社役員は、原則として対象外となりますのでご注意ください。
また、雇用保険の適用事業主である中小企業・大企業などが対象となり、労働者のキャリア形成を促進するための職業訓練等を実施する事業主であることが前提となります。
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対象になる条件
・雇用保険の適用事業所であること
・申請期間内に労働保険料を滞納していないこと
・過去に助成金の不正受給をしていないこと
・(訓練前に)事業内職業能力開発計画を作成し、従業員に周知していること
・職業能力開発推進者を選任していること
・対象従業員が雇用保険の被保険者であること |
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対象外になるケース
・労働保険料の納付が確認できない場合
・支給申請日の前日から起算して過去1年以内に、労働関係法令違反(サービス残業の常態化等)がある場合
・風俗営業等の関係事業主
・暴力団等の反社会的勢力と関わりがある場合 |
主要な4つの支援コース
人材開発支援助成金には目的に応じて複数のコースが用意されています。ここでは、特に中小企業が活用しやすい4つのコースを解説します。
1. 人材育成支援コース
職務に関連した知識・技能を習得させるための一般的な訓練を支援するベーシックなコースです。OJT(実務)とOff-JT(座学等)を組み合わせた訓練や、有期契約労働者の正社員化を目指す訓練にも活用できます。
2. 人への投資促進コース
デジタル分野や高度な人材育成に対する支援が手厚いコースです。DX推進人材の育成、海外大学院への留学、労働者の自発的訓練への費用負担、サブスクリプション型研修サービスの導入などが対象となります。
3. 事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げやデジタル化・グリーン化など、新しい事業展開に伴い必要となる知識・技能を習得させる訓練を支援します。「会社が変わるために、従業員にも新しいことを学んでほしい」というフェーズに最適ではないでしょうか。
4. 教育訓練休暇等付与コース
会社主導ではなく、従業員が「自発的に」訓練を受けるための環境整備を支援するコースです。有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に従業員が取得した場合に助成されます。
補助金額と計算方法
助成金額は、企業規模(中小企業か否か)と実施するコースによって異なります。ここでは中小企業が利用する場合の補助率と助成額を整理します。
| 人材育成支援コース |
経費助成率:45%
賃金助成額:380円/時間 |
|---|
| 人への投資促進コース |
経費助成率:60% (最大75%)
賃金助成額:760円 (最大960円)/時間 |
|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース |
経費助成率:60% (最大75%)
賃金助成額:760円 (最大960円)/時間 |
|---|
※()内の数値は、賃上げ要件などを満たした場合の上乗せ措置が適用された場合の最大値です。
※大企業の場合は助成率や助成額が異なりますのでご注意ください。 |
計算シミュレーション3パターン
「人への投資促進コース」または「事業展開等リスキリング支援コース」(中小企業・通常要件)を利用した場合の具体的なシミュレーションを3パターンご紹介します。
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パターンA:DX研修(3名で実施)
従業員3名が40時間のDX研修(1人30万円、計90万円)を受講した場合 - 経費助成:90万円 × 60% = 540,000円
- 賃金助成:760円 × 40時間 × 3名 = 91,200円
- 受給総額:631,200円
実質負担額は約27万円となります。 |
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パターンB:専門資格の短期集中講座(1名で実施)
従業員1名が20時間の専門講座(受講料20万円)を受講した場合 - 経費助成:20万円 × 60% = 120,000円
- 賃金助成:760円 × 20時間 × 1名 = 15,200円
- 受給総額:135,200円
実質負担額は約6.5万円で済みます。 |
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パターンC:eラーニング・サブスクリプション(5名で実施)
従業員5名が定額制研修サービス(1人10万円、計50万円)を就業時間内に50時間利用 - 経費助成:50万円 × 60% = 300,000円
- 賃金助成:760円 × 50時間 × 5名 = 190,000円
- 受給総額:490,000円
経費と賃金の助成を合わせると、ほぼ費用の元が取れる計算になる場合もあります。 |
申請から受給までの3ステップ
人材開発支援助成金の申請フローで最も重要なのは「順番」と「期限」です。訓練開始後の計画申請は一切認められませんので、必ず余裕を持って準備を進めてください。
1 | 訓練計画の作成・提出
期限:訓練開始日の1か月前まで
管轄の都道府県労働局へ「訓練実施計画届」等を提出します。同時に「事業内職業能力開発計画」の作成と従業員への周知、「職業能力開発推進者」の選任届出が必要です。 |
2 | 訓練の実施
受理された計画通りに訓練を実施します。期間中は受講者の出欠管理や進捗記録を正確に残してください。また、支払いは銀行振込で行い、領収書や振込明細書を必ず保管します。 |
3 | 支給申請
期限:訓練終了日の翌日から2か月以内
訓練終了後、支給申請書と実績書類(領収書、修了証、賃金台帳、出勤簿など)を労働局へ提出します。 |
採択されるためのポイント・審査観点
形式上は要件を満たしていても、細かい不備で不採択や支給遅延になるケースがあります。以下のポイントを押さえましょう。
計画の具体性と妥当性
「なんとなく良さそうな研修だから」では不十分です。「自社の事業目標が○○で、それを達成するためには△△のスキルが必要。だからこの訓練を行う」という論理構成が必要です。事業計画と人材育成計画のリンクが強いほど、スムーズに認定されやすくなります。
💡
証拠能力を高めるコツ
経費の証拠:「誰が、いつ、どこに、何の目的で、いくら支払ったか」がわかる書類が必要です。
勤怠管理:賃金助成を受ける場合、訓練時間中の賃金が支払われていることを証明するために、出勤簿やタイムカードが必須です。手書き等の場合は修正履歴も含め、正確性が求められます。 |
注意点・よくあるミス
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よくある不支給原因TOP3
・期限切れ:計画届・支給申請の提出が1日でも遅れた場合、いかなる理由があっても受理されません。
・計画の乖離:提出した計画と実際に実施した訓練内容・時間数が著しく異なる場合、対象外となることがあります。変更がある場合は事前の変更届が必要です。
・書類不足:訓練期間中の日報や進捗記録などの実態証明書類が不足しており、訓練を実施したことが客観的に証明できない場合。 |
よくある質問(FAQ)
Q | 個人事業主でもこの助成金を利用できますか? |
はい、利用可能です。ただし、事業主本人ではなく「従業員」に対して訓練を行う必要があります。雇用保険の適用事業所であり、対象となる労働者を雇用していれば申請資格があります。 |
Q | 新入社員研修も助成金の対象になりますか? |
はい、対象になります。例えば「人材育成支援コース」や「人への投資促進コース」を活用して、新入社員に対して行うOff-JT(職場外研修)等の費用や賃金の一部が助成されるケースがあります。 |
Q | 申請手続きは自分たちでできますか?社労士が必要ですか? |
ご自身で申請することも十分に可能です。しかし、計画策定や書類作成に一定の手間がかかります。通常業務が多忙な場合や、確実に手続きを進めたい場合は、助成金申請に詳しい社会保険労務士等の専門家へ依頼することも有効な選択肢ではないでしょうか。 |
Q | 助成金はいつ振り込まれますか? |
支給申請書を提出した後、労働局での審査が行われます。審査には通常数か月かかり、決定後に指定口座へ振り込まれます。そのため、訓練経費はいったん全額自己資金で立て替える必要があるため、キャッシュフローにはご注意ください。 |
Q | 訓練時間が短いものでも対象になりますか? |
コースによって異なりますが、例えば「人への投資促進コース」では訓練時間数が10時間以上のものが対象となるなど、最低時間数の要件があります。極端に短いセミナー等は対象外になることがあるかもしれませんので、事前に要件を確認してください。 |
申請すべきかの判断基準
| 向いている企業 |
・DX化など明確な事業目的があり、そのために人材育成が必要な企業
・毎年定期的に新入社員研修や階層別研修を実施している企業
・社員に新しい技術を学ばせるためのまとまった経費が発生する予定がある企業 |
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| 向いていない企業 |
・「とりあえず何か助成金が欲しい」だけで研修目的が曖昧な企業
・突発的な研修が多く、1か月前の事前計画提出が難しい企業
・雇用保険未加入や残業代未払いなど労務管理に課題がある企業 |
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まとめ:今日からやるべき具体的アクション
人材開発支援助成金は、企業にとってコストではなく「未来への投資」である人材育成を国が後押ししてくれる素晴らしい制度です。上手に活用すれば、費用負担を大幅に抑えながら従業員のスキルアップを実現できます。
検討を始めるためのファーストステップとして、以下の3つをおすすめします。
1 | Action 1. 資料の確認 厚生労働省の公式サイトで、最新年度のパンフレット(詳細版)をダウンロードして確認してください。 |
2 | Action 2. 社内ニーズの棚卸し 「誰に」「どのようなスキル」を身につけさせたいか整理し、該当しそうなコースを見つけましょう。 |
3 | Action 3. 専門窓口へ相談 管轄の都道府県労働局の助成金センターへ電話し、自社の計画が対象になりそうか概要を相談してみるのが最も確実です。 |
免責事項:本記事は執筆時点の情報に基づいています。補助金の内容は変更される可能性があるため、申請前に必ず公式の公募要領をご確認ください。
最終更新:2025年01月01日 | 次回更新予定:公募要領改定時 |